紙の本
読みやすさはどこから来るか
2015/12/15 00:34
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
体の発熱はウイルスをやっつけるために必要なものであり、それが免疫システムです。痰だって、喉の異物を排除するためにやっている除去システム。
そんな邪魔ともいえる感情が人間には必要な場合があります。本では、特に怒りの感情は人類の様々な感情を進化させる中心的な働きを持っており、動物にとって大事なものは繁殖であり、怒りがあるからこそ、単純な物理的暴力的な殺りくをせずに、脅かして相手が怯えて退散すればそこで勝負が決まってしまうという考えから、物理的な喧嘩をしてしまうと双方に損失が大きいので、怒りがあります。異議申し立てとしての感情。
信頼する人々の集団の裏切り者は丸儲けできる可能性があります。しかし、裏切り者を察知してその裏切り者集団から排除する能力も進化してきたので、私たちや裏切り者のドラマを見ると誰でもその行為に憤りを感じます。裏切り者に対して怒りを表明するし、悪には土下座を要求してスッキリする。そんなこんなで裏切り者は集団から追い出されます。
嫉妬があるからこそ、サル社会では下位のサルは、下手にいます。、でも、常に上位をねらっている「嫉妬状態」であるからこそ、下位の全員から上位のサルが恨まれるのは怖いので、下位の個体に利益を配分することで下位の個体の嫉妬を和らげます。サルにもこんな感情があるんですね。
昔は100人くらいの集落で、一緒に生活するから他者を理解する時間的余裕が十分にありました。そして他者の行動が比較的単純でした。だから付き合う時間が減少した現在では他人との理解が進まないのは当然です。だから信頼できる人なければ裏切られる恐れがあるため、文明社会での信頼を形成するための大発明が「お金」です。
性格とか学習能力とかいろんな部分が遺伝で決まる割合は大きいです。両親が大きかったら背の高い子が生まれても気にしませんが、遺伝による頭のいい、悪いってのは、教育のフェアネスという政治的問題から一気に嫌悪感を覚える人が出てきます。
で、石川さんは、最後の方でこんな風に述べます。「才能の発揮には遺伝や環境も重要である。遺伝は球根であり、地面からは見えにくい。環境は水やりであり、水やりをやってみたら、大きく伸びる球根があるかもしれない。努力が報われないという場合には、環境と遺伝の食い違いが考えられる。」
ひょっとしたら、私もこの年でも、気づいていない眠っている「大きな球根」があるのかもしれませんね。
で、「生きづらさ」なんですが、これがあるから「今ここ」を生きるのではなくて、将来や過去への可能性や社会における自分の位置付けを考えるようになり、他人の気持ちを推し測ることができます。集団の形成そして文明社会を構築することにも成功しました。
そんなこんなで副作用を引き受けてまでも、私たちは今、ここにいるんですね。
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中学生向けのちくまプリマー新書なので、手軽に読めていい本です。ただちょっとだけ、むずかしかったかも。
進化心理学の考え方にはじめて触れた。興味深かったです。
生きづらさや、怒りや悲しみ、嫉妬などの感情が、人間の進化の過程ゆえに「感じるべくして感じる」というような見方は新鮮でした。
この考え方を敷衍していきたい。ほかの著作も読みます。
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「人間の心は狩猟時代からそんなに変わってない」ということを色んな視点から説明した1冊。人間に「嫉妬心」や「怒り」の感情がどうしてあるのかを初めて知りました。あと性格や各種能力の半分は遺伝らしい。
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狩猟採集時代がとてつもなく長かったから、今の社会にはからだがついていかないんですって。だから生きづらさは仕方がないって!なんと!
狩猟採集時代と今が違うところは、やらなくちゃ死ぬ仕事がないところ。自分がしたい仕事は実は狩猟採集的かもしれない。だから、したい仕事をさがしても今の社会には合わない。
狩猟採集時代では、集団が小さくって統率が取れていたから、知り合いの話を鵜呑みにする傾向がある。
狩猟採集時代では、かならず居場所があった。反対に言うと、居場所がなかったら死んでる。だから自分を認めてもらえる居場所がないと不安に、なる。
なぜ、負の感情が起きるのか。要らなさそうだけど。怒りとか嫉妬とかはぜんぶ生殖に必要だったから!上下階級も。下の者が持つ嫉妬すら、上の者を脅す手段にもなり得るわけで。閉鎖された集団に似てて、それに入れないものはいじめられる。あれれ、いまと一緒やん
でも、狩猟採集時代と違って、それこそ死ぬ訳じゃないからその太古からの不安感に身を任せなくてよい、と筆者はいう。
あとは性差。狩猟採集時代のように男は獲物とるのが得意で女は身近なことが得意な人が多い。でも、いまはそうじゃなければ死ぬってことがないから、段々種類が増えてきた、という。
結局なにがなんだか…と思ったのだけど、最後にまとめがあった。
まとめとしては、自分はいろんな種が土に放り投げられている状態らしい。それに水をやれば、花が咲くこともある。でも、どれが大きく咲くか、球根が大きいかは、水をやって試すしかない。ちっさそうだったり、咲いても嬉しくなさそうだったらやめたらいい。狩猟採集時代じゃないから。
ですって。本能は絶対や!環境に慣れられないやつは淘汰されるんや!と思ってたけど、その本能というのもいいかげんで、ふりまわされなくてよろしい、と言ってもらったのかな??
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文明社会の環境変化は人類の進化をはるかに超えるスピードで進行している。したい仕事が見つからないのは、すべき仕事が決まっていないという状況に人間の心が慣れていないから。無理に選ばず、目の前にある仕事に取り組んでみると、それがやりたいことになるかもしれない。
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典型的な「なぜなぜ物語」本。次の指摘のみ勉強になった。
「進化」とは、「ある集団において、ある特徴が普遍的に備わった状態になること」
人類は1000年前と比べて進化しているか、という問いに答えるのはかなり難しいと思っていたが、この定義を採用すれば簡単に答えることができる。そして、「進化」と「進歩」を切り離して考えることが可能になる。
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これを読めば今すぐあなたの抱える生きづらさが解消できる!といった類いの啓発本ではない。
この本は進化心理学の入門書で、人生に対する即効性は無くても人の進化に対する興味を持つきっかけになるかもしれない。
中高生向けのレーベルですが、大人が読んでも分かりやすく読みやすい。
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現代人の生きづらさの原因は、人類誕生から数百万年間の狩猟時代に作り上げられた人間の特性と現代社会とのギャップにあると説く。狩猟時代はせいぜい100人程度のコミュニティで決まった役割を担いその日暮らしをしていた人類が、ここ1万年以内の間に拡大したコミュニティ、さらにはここ数百年の飛躍的な社会変化には、遺伝子レベルで対応が困難=生きづらい、と感じて当然、とのこと。
進化心理学
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論旨が不明瞭
遺伝に関する知識、人間はどのように進化してきたのか、それと社会の変化のミスマッチ、というあたりが現代の生きづらさの原因だという論旨らしい。
でも、ソrって、社会が大きくなり始めた1000年くらい前からずっと続いてきた状況じゃないの?
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わたしたち現代人の生きづらさは、私たちの心身が、一万年前の環境に適応したまま進化していないからである、という内容。
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前半は進化心理学の解説で少しわかりにくい部分があったものの後半部分では狩猟採集時代と現代の人類がそれほど進化していないことから感情について深く考察されていてとても面白かった。
買ってまた読みたいと思う。
進化心理学に興味が湧いた。
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てっきり生きづらさを解消する方法が書いてあるかと思ったら、表題のとおりの内容だった。
なぜ?を追求する形で展開されていて、所々「なるほど」と感じるところはあったが、だからどうするの?は各自で考えなきゃいけないのか。
最後の、「人間はサルの子供時代が長くなった版」という考え方には新鮮な感覚を受けた。
言われてみれば、確かに。でもだからといって、変化の多い社会で生きづらさを感じる人は、どうしたら行きやすくなるんでしょうね?