紙の本
赤と黒下巻
2001/10/07 15:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんぱん - この投稿者のレビュー一覧を見る
マチルドとの間に子供が出来たジュリアンソレル。しかし、ジュリアンソレルはレナール夫人を射殺しようとした容疑で死刑判決になってしまう。生前は読まれることのなかったスタンダールの傑作が幕を閉じる。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上下2巻読むと疲労感が半端ない。ひたすら一人の高慢ちきな男の偏見と思い上がりを1000頁余り繰り広げてた感じ。野心家の青年と言うより、家庭に恵まれず屈折した感情で物事を推し測った、思い込みの激しい色ボケマザコン男の実話に基づいた御話。スタンダール自身も年上好きらしい
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つまり思い込みが激しい、難しい年代である少年は完全なる「悪魔」にはなりきれなかったのです。人間の汚い部分とそれと表裏一体の関係にある純粋な部分を描いています。所々にフランス革命時のことが語られています。
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ジュリアン・ソレルに憧れて憧れて、映画を友人と一緒に見ました。美少年でなくてがっかりした記憶が今も深く胸に…。
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平和な、現代の日本
そして、自由や平等を好きなように叫ぶことが出来る今だからこそ、
「素敵な話」
として、読むことが出来る。
後半につれ、ますますストーリーに惹きこまれていく。
ラストにも納得。
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フランスにおける王政復古という政治的リバウンド以降の時代を背景に、一人の若き野心に燃える百姓ジュリアンの成り上がりぶりと、その顛末を描いた作品。
貴族に取り入り、どんどん出世する様はある種、痛快。
政治的には自由主義や王党派、キリスト教的にはイエズス会派やジャンセニスト達との間を行き来しつつ、彼らに取り入り、聖職者という役割を巧みに演じつつ、のし上がっていくのだ。
自分の信念や好きなものを曲げても、出世したいと思わないな…
しかも自分を愛する二人の貴族令嬢まで誑かす様は悪人です!
彼女達にお熱になったり冷めたり、読んでるこっちまで体力を奪われますよ、疲れることこの上ない!
革命期のフランス史を勉強したくなる一冊。
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ナポレオンが失脚して王制が復活した後の1820年代を舞台に、ナポレオンに傾倒する青年ジュリヤン=ソレルが、その才気と美貌を武器に上流社会でのしあがっていく物語の下巻。
レーナル夫人と別れたジュリヤンが、大都会パリの社交界で出世して行く物語ですが、見所は、侯爵令嬢マチルドとの激しい恋の駆け引きにあります。経験豊富でプライドの高いマチルドに、恋愛経験の少ないジュリヤンは敢然と立ち向かい、どのようにして勝利を収めるかが見ものです。
(どうやら、プライドの高い女性には嫉妬させることが必要、というのが作者の結論のようです。)
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上巻では、ヴェリエールの町長夫人と色恋沙汰を起こし、
職を追われた主人公ジュリヤンは、
下巻ではパリに行き、ラ・モール侯爵の秘書になる。
そして今度は侯爵の娘マチルドと
恋の駆け引きを繰り広げる。
マチルドは美人で頭も良く、
ジュリヤンの昔の恋の相手レーナル夫人より
ずっとも世間を良く知っている都会育ちのお嬢様。
そんな経験豊富なはずの彼女もまた
巧妙なジュリヤンの罠によって
恋に落ち、ついに結婚までしてしまう。
ジュリヤンの恋の相手となる
二人の女性だが全くタイプが異なる。
私は、慎み深い良妻賢母のレーナル夫人より、
ただ恋愛に対して受身にならず、
愛されているだけでは気が済まない、
勝気なパリ娘のマチルドの方が好きなため、
下巻のストーリーの方が面白くて好き。
物語の主人公ジュリヤンもマチルドの事は
憎からず思っていたけれど、それでも本当に愛したのは
彼女ではなくレーナル夫人だったし、著者スタンダールも
このプライドが高く、負けず嫌いのマチルドに対しては
大変辛口な描き方をし、実に皮肉たっぷりに彼女を評すが、
「貴方達男二人はわかっているようでわかってないなぁ。」
と私などは思ってしまう。
若い男との恋愛に悩み、
夫や街の人の目をいちいち気にする
中途半端なレーナル夫人より
自分の取り巻きである「つまらない」青年貴族達よりも
自分の父親の秘書、悪く言えば「召使」であるにも関わらず、
「この人は現代のダントンになるかもしれない。」と
才気溢れるジュリヤンの方に魅力を感じるマチルドの方が、
しょうもないお転婆だけど、生き生きしていて、
恋愛の相手として魅力的だと思うのだけど。
それにしてもこの物語、その凄まじいまでの愛憎劇に
間違いなくフィクションだと思ってしまうけれど、
当時フランスで実際に起こった事件を下敷きにして、
登場する女性の性格は、著者スタンダールが
交際した女性の性格を参考にしたというのだから驚きである。
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レーナル夫人との関係を絶ったジュリヤンはついにパリへ。そこで侯爵令嬢の心をとらえ、権力の座への足がかりをようやくつかんだかに見えたが、過去の恋が邪魔をする。彼が本当に望んだものは何だったのか。振り返る過去の懐かしい日々がやさしい。
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83/100 No.95「長門有希の100冊」
結局、ジュリアンの野心は一歩手前で潰える。
最後の最後に自分の過去に足をすくわれる。
お天様の下を堂々と歩ける人生設計を立てましょう。
良い、教訓になりますなー
上下合わせて1週間かけてるし、本当は、そう簡単な話ではないけどね。
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知事の妻との恋を密告され、逃げ出すジュリヤン。次いで神学校へと入学する。今までとは打って変わった環境の中、戸惑ってしまう。今までの自身のスタンスが先生でなく同期にも叩かれる対象となる中、自らの野心のために、自分のスタンスをうまく変えていく。自尊心の強さと矛盾するようだが、ジュリヤンの「自らをうまく抑える事が出来る」という長所がうまく反映されたところだ。
そして、ふとしたきっかけから、パリの社交界へと進出し、勤め先の貴族の家の娘と恋仲に落ちる。しかし、彼が過ごしたパリの貴族たち、そこで恋に落ちた相手、カトリックの人間たちの性分、過去の知事の妻との恋愛など、過去と今と未来との様々なカオスの中で、彼は悲劇のシナリオを取ってしまう。
彼の感受性の強さ、自らを律する精神の葛藤が特に描かれているのがこの下巻だと言える。マチルドを落とすために思考し続ける一方で、ますます打算的な考えを巡らせる一方で、マチルドとのふとした触れ合いで心の中で起こる感情とひたすら戦い続ける。
最後の悲劇は何を伝えたかったのか?いや、彼にとってはこれが最良のシナリオだったのかもしれない。
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ジュリヤンは理想とする人物の一人。なんにせよ、このような情熱はうらやましい。この読後感。多くを重ね合わせると同時に、多くの異なるところに惹かれる。
・ジュリヤンは公証人か?どうやら読む限りそのようである。ただし、だ。それは当時においてである。
21世紀の日本における公証人とウィーン体制(復古王政下)の公証人の定義は重なる部分があるとはいえ、やはり異質だろう。
公証人は当事者その他の関係人の嘱託により左の事務を行う権原を有す。
①法律行為その他私権に関する事実につき公正証書を作成すること
②私署証書を認証すること
(以下略)(公証人法1条)
他方、まず本書P361より19世紀当時のフランスの公証人は訴訟上の行為をする権原はない(これは現代日本も同じだが)。また、同P133より公証人は個人に専属する(支配従属関係)。この特質から、彼等は公的に(例えば公証人役場で)認証はしない。また、証書を作っても公正さは第三者によって担保されない(その写しは保存されない)。これらの点で公証人概念に違いがある。
具体的に、ジュリヤンがラ・モール侯爵に対してしていることといえば、公正証書作成に留まらず、侯爵の業務に関する一切の裁判外の行為である。
つまり、当時の公証人は俗に言えば秘書、聞こえよく言えば、裁判上の行為をしない弁護士といったところ、いうなればソリスタか?
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p194(マチルド)
かわいそうに、このひとはこんなに大胆なふるまいをしたんだもの、幸福にしてあげなければならないわ
p195
ジュリアンの心にはなんら愛情らしきものはなかったが、それはマチルドのジュリアンに対する態度のすべてが義務を果たすといった感じだったからである。この言葉がいかに奇妙に思われようとも、事実はそうなのである。
あたしは思い違いをしていたのかしら?あのひとに対して愛情をもっていないのだろうか、と彼女は呟いた。
p404
ジュリヤンは、自分はこんなにまでつくしてもらう価値がないと思っていた。実際は、英雄的な行為にうんざりしていたのである。単純で素直な、むしろおどおどした愛情だったら、心を打たれもしたであろう。
ところが、気位の高いマチルドの心には、反対に、いつも公衆とか、他人という観念が必要なのだった。
****
すごーくよかった。人物設定が完ぺき。作者がひとりひとりを大切にしてる感じがした。
私はマチルドがすごく好き。でも、レーナル夫人は素晴らしい。
また感想を付け足したい。カラマーゾフに続き、大切な本になりました。
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ジュリヤンとマチルドのやりとりが3行の手紙からはじまる動揺が激しすぎる。そっから今までの出世とか名誉を求める様子はなんだったんだってくらいにそっちに溺れて行くあたりがなんだか引きつけられた。
その後にとったジュリヤンの手紙戦略がドS過ぎる、駆け引きにそこまでするのかって位相手を追い込ませる辺りがフランスっぽいのかどうかはわからないけど博学をそういう方向に費やすのはいいことだとは思う。
最後はバッドエンドと言えるものだけど、上下巻含めてどちらかと言うと二人の恋人をどういう風に関係させるかを書いてた場面が一番の見せ場だったのでそんなに気にならなかった、そっちのインパクトの方が大きくて、最後は判決が出ても「ああ、やっぱり」程度の印象だった。首を持っていくのと自殺して約束を守らないのはちょっと気になるが、それがそれぞれが一番のやりたい事をしたと思えば納得も行くかな
あとがきも含めた感想ではあるけど、この話は実話になった事件を元にしている、その当時の時代背景と著者の感性をリアルタイムで書いていったのが伝わった
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長い割には面白くなく、主張もあまりなかったように思う。この作品が書かれた時の時代背景も考慮しなくてはならないのだろうが、今回はあまり考えない。
概略としては、製材小屋の息子として生まれたジュリアン・ソレルが持ち前の頭脳と強い野心で、その時代のブルジョア的、封建的社会に挑み、出世しようと足掻くというようなところだろうか。ナポレオンを信奉しており、そのような人はその時代では過激革命派と呼ばれるらしい。おそらく貴族優位の社会を転覆しようとしていたからだろう。
そして基本的な出世の方法が気に入らない。金持ちの女を口説き落とすという、所謂逆玉の輿である(そればかり狙っていたわけではないが)。ジュリアンはマチルドとレーナル夫人と云う2人の貴婦人を誘惑する。しかも一応2人ともジュリアンに惹かれるようになる。この二人に共通な点は、ジュリアンに出会うことで不幸になることである。確かに、2人ともお嬢様として純粋培養されて育てられてきたようだから、生活は退屈であったかもしれないが、平穏安泰な生活を送っていた。しかし、ジュリアンに惹かれるようになることで、レーナル夫人はすでに夫を持ちながら、ほかの男に気がひかれていることに対する良心や倫理の呵責に苦しむようになる。マチルドのほうは、たかが製材小屋の倅であるジュリアンの子供を身に宿すことにより、遅々と喧嘩になり、地位や品位を落としてしまう。
結局ジュリアンは、マチルドとの関係がうまくいきそうになり、成功をつかんだと思った矢先に、レーナル夫人の手紙によってそれが台無しにされてしまったことに腹を立て、レーナル夫人を銃で撃ってしまい、死刑判決を受け死んでしまう。
もっとも興味深く思った箇所は、「気位の高いマチルドの心には、反対に、いつも大衆とか、他人とかいう観念がひつようなのだった。」のところだ。これはジュリアンが裁判を待ち、留置所に拘留されている時期で、マチルドは所謂ヒロイズムに酔っているのだ。私は以前からヒロイズムと自己愛を関連付けて考えてきたが、そこには「他者の目」が欠けていたことに気付いた。マチルドは自分のジュリアンに対する自己犠牲的な行為を他者が見てどのように思ってくれるだろうかと考えて、喜んでいるのだ。
もうスタンダールは読まないだろうと思う。