投稿元:
レビューを見る
○青い目の不思議さとサクランボの違和感
東京の高級住宅地で、写真家の君原が殺されていた。枝についたサクランボが残されており、造花しかないだけに異様さを感じた十津川は、サクランボの名産地である山形に向かう。すると、君原が撮影を手掛けたポスターが見つかり、サクランボ農家が捜査線上に浮かぶ。一方で、君原に関係する人間が次々と狙われてしまい、十津川も事件解決へ焦るが、サクランボ農家の息子が青い目をしていて、過去養子に出されていたことがあるという話を聞いて・・・
インターネットで「青い目 東北」と調べてみるだけでも、東北地方に青い目を持った人が100人に1人程度いるという話は、参考文献が1点のみ挙げられていたけれども、まんざら作り話ではないようである。
山形のサクランボは、今や巨大な金のなる木だ。その分、手間暇も相当かかるというのは知り合いのサクランボ農家から聞くところで知っているのだが、その価値と毎年の収益を考えただけで、農家の売買ということは実際に事件として起こりそうである。
しかし読み込んでみるとこの事件はそう単純ではなく、複雑に様々な人物の利害が絡み合った怨恨殺人にまで発展するのであるから、読んでいて少し退屈な部分も見受けられるが、どのように犯人の自供を引き出すか、十津川の腕が見ものである。