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本書はオーケストラについて幅広く解説した入門書だ。前半では「オーケストラとはそもそもどのようなものなのか」やオーケストラを構成する楽器について解説されている。そして後半では著者のオーケストラ論が展開されている。
本書が扱うテーマは幅広い。たとえば「オーケストラ」という言葉を聞くと,僕ならすぐに西洋風なものをイメージしてしまう。しかし,日本にも東南アジアにも「オーケストラ」は昔から存在してきたのだという。このような多種多様なオーケストラについての話はとても興味深い。また,オーケストラそのものではなく,オーケストラに関連したテーマにも章が割かれている。第六章「映画のなかのオーケストラ」はオーケストラにまつわる多くの映画を紹介している。そのうちの幾つかは実際に観てみたいと思った。
タイトルに「なんとか入門」と入っている本(特に新書など)では,対象となる「なんとか」がどういうものなのかをざっと紹介し,なんとかについての知識がざっくりと披露されることが多いだろう。そして,入門本を手に取る読者も,広く浅い知識を手っ取り早く知りたいというひとが多いのではないだろうか。
そういった視点でみると,本書は本当の初心者(僕もそうだ)にはあまり向いていないように思う。例えばオーケストラの構成楽器の名称をさらりと書かれても,そもそもその楽器がどういうものなのかが判らない。写真を載せてあればまだ判ったかもしれないが。そして初心者にとってはオーケストラ論を展開されてもぴんとこない。もっともこの点については,急に社会や文化を論じ始めている(ように見える)せいもあるだろう。
本書のタイトルはあくまで「再入門」である。きっと多少なりともオーケストラをかじったことがあるひとに向けた本なのだろう。そういったひとにとってはおススメできる本なのかもしれない。