紙の本
大人の人も哲学してみませんか
2020/06/19 08:25
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全8冊になるシリーズの編者である松田哲夫さんは、哲学は哲学書や哲学講義の中にだけあるのではなく、日常の暮らしの中にも考えるためのヒントがあると、記しています。
その上で、自分の頭で考えるきっかけになるような文章を集めたそうです。
つまり、哲学というのは「自分で考えること」なのでしょう。
では、何を考えるのでしょう。
それこそ、人生のありとあらゆること。このシリーズの各巻のタイトルということになります。
その第1巻がこの本で、「中学生までに読んでおきたい」それの最初が、「愛のうらおもて」っていうのが、またなんともいいと思いませんか。
この巻で紹介されている書き手は、向田邦子、円地文子、森瑤子。坂口安吾。吉行淳之介。佐野洋子、倉橋由美子。幸田文。太宰治、桂文楽、森鴎外、小泉八雲など総勢19名の豪華さ。
しかもその文章がエッセイあり小説あり落語あり、最後には戦没学生が死を前にして恋人に宛てて書いた日記ですから、なんとも幅広い。
こんな贅沢な本を子供たちだけに読ませるのはもったいない。
きっと大人の人でもこれだけ多くの「恋愛話」を読んだ経験はないのではないでしょうか。
「愛」といっても、男と女の愛だけではありません。
向田邦子の「ゆでたまご」というエッセイは母の愛を描いて秀逸。「私にとって愛は、ぬくもりです。」なんていう決めセリフに、中学生たちでもドキッとするのではないかしら。
親から子への性教育を描いた幸田文もいい。
一番読み応えがあったのは森鴎外の「じいさんばあさん」だったのは、自分でも意外だったですが。
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【収録作品】
向田邦子 ……「ゆでたまご」
円地文子 ……「親ごころ」
杉浦日向子 ……「恋人の食卓」
森 瑤子 ……「手紙」
寺山修司 ……「愛され方」
吉行淳之介 …「嫉妬について」
中野好夫 ……「恋愛について」
佐野洋子 ……「愛する能力」
倉橋由美子……「血で染めたドレス」
幸田文 ……「啐啄」
中島らも ……「恋の股裂き」
太宰治 ……「満願」
桂 文楽 ……(演)「厩火事」
大庭みな子 ……「とらわれない男と女の関係」
森 鴎外 ……「じいさんばあさん」
岡本かの子 ……「鯉魚」
小泉八雲 ……「心中」
宅嶋徳光 ……「日記」
日本文学のシリーズが良かったので、こちらも読み始めた。
エッセイ、落語など幅広く面白い。佐野洋子は百万回生きた猫のイメージ
しかなくったので、新鮮だった。
中野好夫は悪について語っている文章のほうが生き生きしている
気がする(笑)
血で染めたドレス、啐啄、恋の股裂き、鯉魚が印象に残った。
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19編入ってたけど、らじは坂口安吾さんの『恋愛論』が一番良かった。
坂口さんには前に『堕落論』で目からウロコを落とさせてもらった経験があるから、今度じっくり著書を読んでみたいと思いました。
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グリムやアンデルセンの童話の原作は
子供の読み物としては過激すぎるとして、
その内容が大きく変えられた事を知った。
あぁ、確かに。
原作を読むと、
夢の様に美しいシーンはガラガラと音をたてて
崩れてゆき、
血なまぐさい骸の上で
幸せそうに微笑む王子様とお姫様。
その骸の上にふわり、とかけられた
美しい羽織物を外し
愛を育む男女が足蹴にしているもうひとつの側面をも
見せてやろうじゃないか。
と、文豪達が描いたうらとおもてがセットになった
完璧な愛についての作品集。
恐ろしい程、ワクワクしないテーマではあるが、
作家陣を見ると
寺山修二や坂口安吾、太宰治など
愛をどんな風に捉えていたのか?が、気になる御仁が
たくさんいる。
お伽噺の様に美しいばかりの世の中ではないが、
どろり、とした混沌には愛を育む為の栄養素がとっぷり含まれている事、彼らの作品を読んで伝わってはきたが、
自分が中学生だとしたら、おもての方の愛話しかわからなかっただろうなぁ。
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表現の行き着くところは「愛」なんだなぁ。物事の本質について表現する時は、愛を避けては通れない。愛は存在していることへの肯定だ。
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もっと広い意味での愛かと思っていましたが、主に男女間の愛憎に関するものが多かったです。
向田邦子の『ゆでたまご』や、森鴎外の『じいさんばあさん』が印象に残っているかなぁ。とりわけ『ゆでたまご』は、胸にぐうっと迫る親の愛を感じて涙腺が緩んだ。
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中学生までに読んでおきたい哲学…ですが
ラインナップ(一部)が向田邦子、円地文子
吉行淳之介、中野好夫、太宰治、森鷗外、小泉八雲…
渋すぎる~。でも内容は男女の愛だけではなく
隣人愛もありどれもとても面白かったです。
内容的には色々なことを考えるきっかけとなる
作品ばかりでしたので中学生、高校生に
読んでほしい。。
高校生の頃はまったく読む気にならなかった
森鷗外が意外とさらっと読めたり…。
年を取ったなぁ。
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小学生の時に読んでいたら少し人生変わっただろうか、たぶん3分の1も理解できないだろうなと思った。
中島らもさん『恋の股裂き』がお目当て。この題名がもう、、、悩み相談に真面目なのかふざけているのかわからない表情を思い出し、何度も読み返す度にんまりするくらい、やっぱり面白い。
向田邦子さんの『ゆでたまご』は、まるでドラマを見ているようなエッセイ。
並んで座ろう、並んで食べよう。正面だと、食べ物は小道具で、話題を探しながら食べるけど、並ぶと、食べ物が主役になるし、その合間に本音の言葉のやりとりができるから。(『恋人の食卓』杉浦日向子)
恋愛というものは常に一時の幻影で、必ず亡び、さめるものだ、ということを知っている大人の心は不幸なものだ。(『恋愛論』坂口安吾)
『嫉妬について』(吉行淳之介)は、美しい文体で教科書を読んでいるようなエッセイ。
『心中』(小泉八雲)は、日本人独特の信仰と来世への期待を題材にした物語。欧米人に紹介するために書かれた文章らしい。
『日記』戦没学生の恋人に宛てた日記は、その心情が想像をはるかに超えた戦争の無情さ悲惨さを告げるようで言葉にできない。
恋愛をテーマにしたものが大半だが、それぞれ切り口が違っていて、説教じみたものもあればおとぎ話風なもの、言葉の定義を述べているものなど大人でもためになる話が盛りだくさん。
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作家それぞれの愛についての考えを知ることができます。私は特に佐野洋子さんの『愛する能力』が好みでした!思わず声に出して読んじゃったり、、、
みっともないことをなりふりかまわずみっともなく出来る能力が愛する能力だと思う。(一部抜粋)
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図書館で借りた。借りた理由が思い出せない。そうだ杉浦さんが書いた部分を読むのが理由だった。愛についてのアンソロジー。何だか教科書ぽいのがよい。自分ではたどり着けない作品に導いてくれる。思えば学校での授業とはありがたいものだ。ただ読むだけでなく,いろいろに解説してくださったり,考えるきっかけを与えてくれるのだから。適当に授業を受けていたので,本を読んで考える技術が身につかなかったなぁ。ただ音として読み,ただ情報として読むだけが多い。鑑賞する力,批評する力は世界を見る力だな。
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松田哲夫編『中学生までに読んでおきたい日本文学5(愛のうらおもて)』(あすなろ書房)
2012.9発行
2023.5.11読了
ゆでたまご
筆者にとっての愛を具体的な事象で語っている。愛という固い言葉を切り開いて、一つの平面上に広げたようなエッセイである。本書の導入としての役割を果たしている。
親ごころ
子にかける言葉の表現から、その裏側にある心理を分析しようとするもの。さすが小説家とあって精緻な観察が行われている。
恋人の食卓
恋人とのロングランを望むなら、うどんやラーメンなどシンプルな旧知の食材を使った料理を二人で食べた方がよろしいと言う。着飾った恋は長続きしないということだろう。概ね同意だが、TikTok上でかつて流行していた「蛙化現象」なるものは、インスタントで即物的な恋には、うどんやラーメンは不要という含意があったのかもしれないと空想した。
手紙
ラブレターのコツは、相手のことを「溜息のような文体で――美しい溜息のように」書くことだそうだ。作者の作品はいくつか読んだことがあるが、確かに美しい溜息のようだった。
愛され方
独占的な愛情関係に警鐘を鳴らす文章。その最たる例は不倫だと思うが、不倫ほど燃え上がる恋もない。作者がいうほど恋情はクールなものではないと私は思うが。
恋愛論
恋愛は、常に一時の幻影であり、永遠の恋など嘘の骨頂であるが、だからといって、するなとは言えない性質のものだという。恋愛によって人が満たされることはないが、だからといって、恋愛なしに人生は成り立たない。めいめいがおのれの真実を探し続けるしかないのだそうだ。
嫉妬について
嫉妬心をうまく利用すれば、向上欲の刺激剤として作用する。他方、嫉妬心が外部に向かわずに内攻し、自分で自分を虐めて快感を覚えるような地点に向かうこともある。諸刃の剣といえようか。
恋愛について
皮肉な文章ではあるが、他人の恋愛の話ほど面白いものはないのも事実だろう。
愛する能力
恋愛は人間の理性をぶち壊してしまう破壊力がある。逆にいえば、人間の理性を壊さない恋愛はそもそも恋愛ではない、ということ。
血で染めたドレス
恋愛に入れ込むすぎることを警告する文章だが、そうはいっても入れ込んでしまうのが恋愛の厄介なところだろう。
啐啄
風俗の宣伝トラックが街中を走り回ったり、へそを出した女が当たり前に闊歩したりする世の中では、性の問題をはばかりのある話として避けるのではなく、オープンに話し合った方がむしろ良いのかもしれない。この点、幸田露伴は開明性があったのだろう。
恋の股裂き
これは真理だと思う。恋愛に奥手な人ほど対象をどちらかに振りたがる。
満願
昭和13年に発表された作品。この頃の夫婦は、妊活以外の目的のためにセックスをしていたのだろうかとふと思った。
厩火事
生活と恋愛の一致こそが夫婦だと考えるならば、この結末をあまり悲観的にとらえる必要はないのではないか。夫��妻をしっかり愛していると考えてよさそうではないか。
とらわれない男と女の関係
これは完全に同意できる文章。
じいさんばあさん
森鷗外に恋愛のイメージを抱けない人は多いと思うが、意外と私生活で恋愛をしてきた人である。この文章の元ネタが史実なのかどうか分からないが、傑作のひとつに数えられるのではないだろうか。事実のみを淡々と描写しているだけなのに、老夫婦の心情がしみじみと感じられる。
鯉魚
ノーマークの作家だったが、可笑しみのある文章で以外に面白かった。
心中
文章がすばらしい。構成もいい。
日記
間もなく訪れる死に対して、人間はどのように振る舞るのかが分かる文章。
「自我の強い俺のような男には、信仰というものが持てない。だから、このような感動を行為の源泉として持ち続けて行かねば、生きて行けないことも、君にはわかるだろう。」
【収録作品】
ロボとピュー太/南伸坊
ゆでたまご/向田邦子
親ごころ/円地文子
恋人の食卓/杉浦日向子
手紙/森瑶子
愛され方/寺山修司
恋愛論/坂口安吾
嫉妬について/吉行淳之介
恋愛について/中野好夫
愛する能力/佐野洋子
血で染めたドレス/倉橋由美子
啐啄/幸田文
恋の股裂き/中島らも
満願/太宰治
厩火事/桂文楽 演 飯島友治 編
とらわれない男と女の関係/大庭みな子
じいさんばあさん/森鷗外
鯉魚/岡本かの子
心中/小泉八雲 著 上田和夫 訳
日記/宅嶋徳光
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