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「廃墟を作る」という言葉に心ひかれて購入。
物質的な建築だけに終わらず、時間をかけて「廃墟」にしていく過程を大切にする、そうして先人達が残した「廃墟」に想いを馳せる、そんな表題作でした。
ただ、私個人の気持ちとしては、建築物は実際に利用されてこそ、と思うので、住みもせずに作られた廃墟など偽物!とか思ってしまうけれど。
この短編集に限らず、この人の作品は「もしもネタ」が多い。
「もしも、そういう常識(読者にとっては非常識)がまかり通ってる世界だったら」というアレだ。
理屈をこねくりまわすのに飽きた時に、ちょうどいい本かも。
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長めの短編が4つ。七階が行政によって抹消される話、廃墟の建築士の話、図書館を飼育訓練する話、中に何もない蔵とそれを守る人の話。
うーん、残念。『コロヨシ』で突き抜けたと思ったけど、本書を読むとそれを訂正したくなる。私の感想は、今回も基本的に他の作品の場合と同じ。
着想もいい。キャラクター(ワンパターンな気もするけど)もいい。
それなのに、いつもあとひとつ何かが足りないと感じる。
本書の高橋源一郎の解説を読んだら欠落感の出処がわかった気がする。
三崎作品は、あるAを描くためにAではなくBを描くという遠回りをする。建物の七階がなくなるという現象を描きながら、それがホテルや病院の四階九階がないこととも違う重みがあること、家族や友人を喪失して気づくかけがえのなさ、それでもやって来る今日という日常、など、生きるってそういうことだよな〜と思わせてくれる。
ところが、短中編では、この起承転結が1サイクルしか回らないため、奥行きがでてこない。
「人生の重み」という言葉を、5文字ではなく本一冊の重みにするために必要な遠回り、とでも言おうか。
アイデア勝負のショートショートにするか、起承転結が何回転かする長編にするか、どっちかの方がいいと思う。
長編にすることでシャープやきらめきがなくなってしまう作家もいるけど、三崎亜紀は味にコクがでてくる感じ。
応援してるので頑張って下さ~い。
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大の大人が本気出して真顔で悪ふざけをしてるような作品。
どんな物語だろうと思わせておいて、その実、物語ってはいない。
世にも奇妙なアイディアでぐいぐい引っ張っていく短編群。
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三崎さんの本は2冊目です~。
「失われた町」がとってもインパクトの強い本で楽しませてもらったので、ちょっと期待して読みました。
三崎ワールドってとっても不思議。
私はSFものやファンタジーは苦手なんだけど、そういう要素がてんこ盛りなのに面白く読めちゃう。
この独特な雰囲気が好き。
私が一番好きなのは「七階闘争」
「失われた町」のような感じで入り込めた。
最後はちょっとセンチメンタルな気持ちにさせられた。
「廃墟建築士」は「七階闘争」の次だったので、どうしても比較しながら読んじゃって、こうイマイチ話に入っていけなかった。なんで「廃墟」なの?って考えすぎちゃったからか、理解できない部分もあったんだけど、最後はなんだかジーンときたな。
「図書館」はとっても面白く読んでてわかりやすかった。映画「Night At The Museum」みたいな感じかな。
でも、やっぱり本に敬意を払わないとね本が可哀想だよね。このストーリーの世界じゃなくてもね。
一番理解できなかったのは最後の「蔵守」
なんだかな~、芥川賞っぽい感じで読んでてさっぱり分からなかった。主人公をどうイメージしていいのか抽象的すぎて私には合わなかった。
でも、全体を通して、この独特な感じを堪能できたので面白かったです。
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想像力と優しさに満ち溢れた短編集です。
抽象的で現実離れしてるからこそ、現実や物事の本質を描けている気がしてくることが不思議です。
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4つの短編はいずれもありえない虚構。だけど不思議に現実感を崩していない。どれもエッと思うところから物語は始まる。疑問の解決は読者に委ねられており、自由に想像の触手を伸ばすことができる。見つからぬ問いの答えを見出すのも自分。自ら作った壁を乗り越えるのも自分。自立と自律を促された。4編の中では最も地味なタイトルである「図書館」が最も弾けていた。視覚的には最も映えそうなファンタジー。悪魔払いのような凛々しい主人公にも心惹かれた。
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表題作が読みたくて手に取ったのですが、「廃墟建築士」はイマイチだった…
ファンタジーのような設定なのに、とても日常に馴染んで現実的に書かれているのが不思議で面白い。
読んでいるうちにあり得そ~と思ってしまう!
非現実的なことが書かれているけれど、人間的な根本は同じだということを突きつけられる感じ
うまく言えないのがもどかしい…
三崎作品を読むたびに、うまい感想を書けない自分の語彙力の無さを実感します…
2013/02/02-04
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「廃墟建築士」は何かの比喩かと思って買って読んだけど、そのまんまだった。
小さい映画とか深夜のアニメとかにしたらおもしろそう。
文体や登場人物はあまり好きな方ではないが、ストーリーは良かった。
お話の中に入っていく変な快感があった。
著者のほかの本も読みたくなった。
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「七階」にこだわりもなければ、
「廃墟建築士」「図書館の調教士」「蔵守」
なんていう職業の概念はそもそも実在しない。
よってこの短編集に出てくる登場人物への
感情移入は難しく感じるはずなのに、
読み進めていくうちにどこかで覚えのある
イラつきやもどかしさを感じてしまう。
あとがきでも書かれているが、
これらの作品においての一見奇妙に感じる
制度や職業は、実在する「なにか」に
言葉を置き換えるとしっくりくるのである。
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「建築で物語を描くとこうなった!」みたいな、作者の発想力と文章力には毎回度肝を抜かれます。なのに不思議とフィクションっていう感じがしないんですよね。それがすごさを余計物語っている気がします。
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廃墟を作る人たちの話。他。
三崎さん全部買ってたと思いきや
積んですらいなかった1冊。
中編になるのかな。
らしい世界だけれども
それを把握して楽しめる頃に終わってしまう。
人間じゃないものの人間らしさが
素敵なところです。
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【七階闘争】
自分の大切なものとは何なのか、世の中の悪とは何なのか、向けられる敵意は誰のものなのか。目には見えないけれど、確かに存在する「何か」。
世間は本当に気持ち悪い。
不思議な世界観の中で、現実を考えさせられる。これぞ三崎亜記節。大好きです。
【廃墟建築士】
言葉で「時間の流れ」を表す方法はいくらでもある。廃墟を使っての表現は始めてみた。廃墟の持つ怪しげで懐かしい雰囲気と、一人の男の人生が綺麗に絡み合い、ストーリーが進む。一種のノスタルジー。
【図書館】
日常生活の中では特に意識せず見落とし勝ちな脅威。生々しくなりそうな話も、三崎亜記の手にかかれば素晴らしいファンタジー。
日野原さんと高畑の会話にある「自分の居場所が定まらないことも、定まってしまうことも」「無い物ねだり」は自分に投影してしまう。
【蔵守】
後半にかけて怒濤の展開。
自分は何を守るのか、それは何の意味も無いかもしれないけれども守るしかない。男としては家庭かもしれないし、プライドかもしれないし。
環境が変われば、感想は大きく変わるようなお話。
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星新一さんのショートショートを思わせるような短編集。全て建築にまつわるお話。
ショートショートなら良いが、現実に有りもしない物語としては、長すぎて飽きる。
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うーん。建築、廃墟、図書館と好きなモチーフが揃い踏み。
日常と少しずれた妄想的な設定も好みのはずなのに
入り込めなかった。
設定・モチーフは面白いけれどストーリーにひねりがない。
人物描写が薄い気がする。主人公に共感できずに置いてけぼりに
されたまま話が進んでしまう。
どのストーリーも主人公の考えもそうだけれど、性別さえも
判然としない。あ、男(女)だったのねと途中で気づいたり。
高橋源一郎の解説もなるほどと思う反面、これって「解説」することから
逃げているよなあと思ったり。
色々消化不良。収録四編の中では「図書館」が好きだった。
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廃墟が好きで、たまに見に行く。
廃墟に突如行きたくなる。
廃墟は結構怖いところなので、なかなか行けない。だから、写真集を買って、眺めたりする。
完全な自然の姿なんて、目に触れられるところには存在していないと思っていて、
もし探検家が未開の地に行ってその風景を私が目にしたとしても、探検家の目というフィルターが入った時点でもう自然の風景ではないと思う。
廃墟の魅力は、もとは生きた町として存在していたものが、死にゆく姿をみることができるという点だと思う。
表題の小説を含め、廃墟に対する思い入れが、尺者と一致して気持ちよかった。
蛇足になるが、生きた町が死にゆく姿を見せるという点に関して言えば、世界遺産に認定された町は、その時点で、それ以上成長が制限されるので、これ以上ない廃墟だと思った。