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ディアスポラ みんなのレビュー
- グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (訳)
- 税込価格:1,034円(9pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2005/09/22
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紙の本
これが理系妄想の噴出なのか
2007/03/21 01:33
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
よい知らせと悪い知らせが。まずこの話はとっても面白いです。しかし、とっても読みにくい。
人類はコンピュータ上の仮想現実世界に自分の人格を丸ごとコピーして、その中で生活する技術を達成し、そこで暮らす人々と、肉体を持ったままで生きることを選択した人々に分裂している。さらにDNAに適当な突然変異を加えてまったく新しい人格=孤児をも作り出している。その一人ヤチマが本作の主人公であり、前半部は彼の成長と並行して進む。
これらについての技術的な詳しい説明が冒頭から延々続くのは、正直のところ、読んでいて疲れるし、実はつまらない。以後その手の、中性子星の連星についての理論、ワームホールの幾何学的理論と量子力学的実現方法といった緻密な描写が10ページ単位で頻出するのだが、好きな人でなければ適当に読み飛ばすのが吉でしょう。数式を使わずに詩的なイメージを提示しているという点で、優れものではあるけれど。
そうして地球に降り掛かる災難と、人類の宇宙への旅立ち、そこでの異種生命との邂逅などの物語が連作的に綴られる。特に「ワンの絨毯」のエピソードが秀逸、素晴らしい。本書は元々はこの短編を長編に膨らませたものということだが、それだけのことはある。海に覆われた惑星の水底に静かに佇む絨毯状の生物、果たしてそれには知性があるのかという探訪なのだが、知性とは、それを生み出しうるものは何かという問いに、(本作の)人類に対する強烈な皮肉になっている。またその後のエピソードではどんどんスピード感を増して、人類はさらに次元と時空を飛翔、行き着く先には突き抜けた快感がある。全編を通してみると、仮想世界的な存在の人類と、物理的世界のインタラクションの物語とも言えそうだが、そこらへんの追求は薄いし、「ワンの絨毯」のトラウマをもっと強く拡張した方が面白かったのではないかという気もする。
科学的説明のくどさは、ペダンティズムでもないし、特に深い意味があるというより、作者の趣味で好きなだけ思っただけ書きまくったという印象で、自分を開放し切った末の混沌と考えれば、それもまた面白い味かもしれない。ここまで徹底していれば、ある種の極北であろうし、奇書と言ってさえいいかもしれない。
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