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とり上げられている植物はジャガイモ、トウモロコシ、トウガラシ、トマト、カカオ、タバコ、ゴムノキの七種。
コロンブスによって新大陸への航路が発見され、ヨーロッパに持ち込まれたこれらの植物。 タバコ以外は当初現在のような用途には使われていないものが多く、その後の改良によって、これらの植物は大きな役割を果たすようになります。
栄養価が高く、保存できることから冬季の食糧難を救い、また家畜の餌として優れた性質の植物の栽培や、当時貴重であった胡椒に代わるものなどの発見は、人々の生活を豊かにしていき、その後遠く日本にまでこれらの植物は伝わっていきます。
しかし、その恩恵の影には新大陸の先住民の受難がありました。彼らは住む場所を追われ、また奴隷として苦役させられ、虐殺やヨーロッパ人のもたらした伝染病によって、その人口が劇的に減少してしまいました。 またコロンブスたちが持ち帰ってしまった伝染病、梅毒はあっという間にヨーロッパで大流行し、日本にも早い時期から伝わってしまいました。
また食材以外では当初その有効な用途が見つからず、観賞用にと、もの珍しいだけのゴムノキでしたが、そこから生成されたゴムの弾力性、絶縁性から車や電子機器に欠かせない素材となり、現在私達の生活を大きく支えています。
日本にもこれらの食用植物が渡来してきましたが、ヨーロッパのような主食の座にそれらがつくと言うことはありませんでした。それらはあくまでも副食として加えられただけでした。とは言っても西洋的な調理法は広がっていきましたが。
その背景には、日本には常に新鮮な食材が手に入りやすく、肉食が明治まで公的には許されていなかったため、強い香辛料などが必要とされなかったことが考えられます。
今日の日本では、物流によってさまざまな食材、料理があふれ、食の西洋化と共にそれによる肥満などの弊害が問題となってきています。
また、家畜を早く成長させ出荷させるために、家畜に使われる薬剤等の問題についても書かれており、我々は食の安全について、見直していかないといけない時期に来ているのを感じずにはいられませんでした。
今では身近にある野菜や嗜好品、部品が実は新大陸からもたらされた植物がルーツであり、私達の生活を劇的に変えていったという内容は大変興味深く読むことができました。