紙の本
歴史の影で奔走する人々
2015/09/30 08:54
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和四年から昭和二十年を舞台に、外交官の津村昌雄が出会った、外務省嘱託で特命全権大使相当の権限を持つという砂谷周一郎にまつわる物語を描いている。戦争に至るまでの外交史という視点で、ポイントポイントで起きる事件を、まるでホームズとワトソンのコンビのように解き明かし、日本の進むべき道を修正しようと奮闘する人物が砂谷と津村なのだ。
なぜ本書のタイトルが天皇の代理人なのかの真の理由は、本書の最後で明かされている。
「死神は誤射した」
箱根富士屋ホテルで変死した、幣原喜重郎外務大臣の腹心で駐支公使の佐分利貞男の後始末のお使いに出された外交官補の津村を待ち受けていたのは、嘱託でありながら特命全権大使相当の権限を持つ若い男、砂谷だった。
砂谷は、自殺として処理された公使の事件を掘り返し、密室殺人として解き直そうとしていた。そしてその真相には、関東軍の支那工作と、外務省の和平勢力とのせめぎ合いの履歴が隠されていたのだ。
「頑固な理由」
英国に三等書記官として着任した津村昌雄は、大使の吉田茂に呼び出され、砂谷周一郎と再会する。日本大使館に寄宿していた白洲次郎の紹介で、英国内務省参事官のウィリアム・ヴァーノン・リアモンドに面会した砂谷は、彼にピーテル・ファン・ズーレンを解放するように告げる。
何が何だか分からないまま、ズーレンなる人物を引き取りに向かうことになった津村は、そこでちょっとした荒事に遭遇し、今回の件が、辰巳栄一中佐が駐在武官としてやってきた理由と、クリヴィッキー機関に関係していることを知ることになるのだった。
「操り人形の計算」
ドイツに二等書記官として着任した津村昌雄は、大使の大島浩から機密費の支給を受け、スパイを子飼いにして情報収集にあたっていた。そんなある日、海軍総司令部にタイピストとして勤務する女性から、シンガポール要塞の防衛態勢に関する文書を入手したとの連絡が入る。
喜び勇んで日本の息のかかったカフェでその女性と密会した津村が戻って代金の手配をしようとした時、日本語で声をかけて来た男は砂谷だった。そして彼は津村に思いもよらぬ返事を先ほどの女性に返すように告げられる。
「終幕に向かう列車」
スイス公使館に一等書記官として着任した津村昌雄は、公使の加瀬俊一からの指示で、グランドホテル・ドルダーに人に会いに向かうことになる。そこにいたのは大方の予想通り、砂谷周一郎だった。
終戦のために奔走してボロボロになっていた砂谷は、チューリッヒからベルンまで、フリードリヒ・ハックという人物の護衛に参加して欲しいと依頼する。彼はアメリカ戦略情報部欧州総局長アレン・ダレスとのパイプを持つ人物であり、藤村義一中佐の意を受けて、終戦に向けた準備をしている人物だったのだ。
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戦争前後に日本のために活躍したスパイの話。よくある話のような気はするけど、平易な文章で読みやすく、軽い読み物としては良いかな。ただ、こういった話っていつも、日本を悪い方向から引き戻すために要所要所で活躍するけど、結局大きな流れには勝てず日本は最悪の道へと進んでいく…、というパターン。なんか非現実的でかつ戦後の今だから書けるような感じがしてあんまり好きになれない。
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赤城毅さんの、実体験に基づいた体の、酒場談義(と言ったら身もふたもありませんね・・・。)
「今明される太平洋戦争の謎の数々」、という感じの短編集です。
太平洋戦争に知識があれば、より楽しめると思います。
ですが、赤城さんの筆力で、知らなくても、もちろん楽しめます。
代理人は誰なのか、予想の少し上を行く回答が待っていました。
実在の人物か否かは置くとして、ホームズ・ワトソンみたいな掛け合いが楽しい一冊です。
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秘密裏に行われた戦争中の外交駆け引きについて、引退した外交官が語るというストーリー。
初読みの作家。
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・微妙〜。史実と史実の間にフィクションを挟み込む手法は山田風太郎を彷彿とさせるがそこまで巧妙ではない。折角の砂谷がスーパーマンではなく魅力に欠ける。風太郎というよりは風が吹いても桶屋が儲からなかった読後感。似たような言い回しが多い文章も気になった。
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●は引用、他は感想
ライトノベルのような読みやすさだが、結構な重さの内容を本文に消化、昇華させていることは、巻末に挙げられた参考文献で明白である。
狂言使い(ホームズ)と狂言回し(ワトソン)が、過去と現代でイレコ構造になっている。
御前会議の聖断で、昭和天皇は阿南陸相に”泣くな阿南。朕には(国体が守れる)確信がある”と言ったといわれる。この確信とは何だったのか。今まで読んできた本でも、阿南陸相への配慮、海外短波ラジオ傍受による自信などが挙げられている。個人的には、天皇には独自のエージェントによる情報源があったのではないかと思っていたのだが、まさしく本書の主人公がそれである。
●「そこで、数年前、亡くなった牧野から、砂谷氏の活躍を聞いたわたしは、まことに心苦しいことながら、この困難な国際社会に日本が復帰するにあたり、もう一度働いていただけるよう陛下にお願いたてまつり、ご同意を得た」
→臣吉田茂を彷彿させる話。作家兼歴史研究家の肩書は偽りが無いようである。
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戦前、戦中において、外交官と外務省嘱託で特命全権大使相当の権限を持つ謎の男が、秘密裏に外交工作みたいなことをする話。
歴史的な背景が詳細であるのと、ミステリーとしてのワクワク感もあって、とても面白く読めた。
装丁もかっこよくて目を引くのだが、タイトルがネタバレぽくて、それだけが気になる。
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“D機関”の結城中佐に通ずる砂谷大使。自国を有利にしようとする各国の情報戦が緊迫した描写で綴られ、読みごたえ十分です。
題名はラストを読み納得。
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昭和初期から終戦にかけて、世界を股にかけて活躍した謎の日本外交官がいた。外務省本採用ではなく嘱託という身分でありながら、強力な特権を持ち、誰からも命令されない。しかし、彼は歴史の表舞台に登場しようとはせず、陰で日本外交に奔走する。残念ながら彼の小さな成功は大局を変えるほどにはならず、日本は敗戦という結末を迎える。
そんな彼と行動を共にした青年外交官が平成の時代、バーで飲みながらその頃を思い出すというストーリー。
佐分利貞男公使の怪死事件や日独防共協定締結を巡る吉田茂と大島浩との対決など、真相がはっきりしない昭和史事件にスポットを当てていて、歴史オタクには読みごたえあり。
タイトルの「天皇の代理人」がなかなか登場しないのだが、まさかの真相。このオチならタイトルをもうちょっと考えるべきでは。
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昭和末期、銀座のバー「しぇりー博物館」に通っていた「僕」は、不思議な雰囲気を持つ老人、津村昌雄氏に出会う。かつて外交官として活躍した彼が語る戦前昭和の驚くべき歴史の舞台裏とは。
歴史ミステリー。さらっと読める。まあまあ面白かった。
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連作短編集。
柳広司の「D機関シリーズ」の結城中佐が外務省嘱託の砂谷に取って代わったような感じ。史実と上手く絡ませ、戦前、戦中の外交政策の裏側を見ているかのようで面白い。ただ、砂谷が一体何者か、という謎はタイトルで丸分かりなのが惜しいところ。
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都会の片隅。限られた人間しか知らないバー。
それ存在自体が秘密であるかのようなバーで、一人の老人が語るのは、第二次大戦時の外交秘中の秘。
聞き手である僕と、語り手である津村老人。
この二人が語り合う舞台が、お洒落すぎる。舞台配置が素敵すぎる。
歴史回顧の舞台としてバーって、似合いすぎです。
聞き手の僕が、キャッキャしていないのが、いいのでしょう。本心、躍り上がってしまうぐらいの高揚感なんでしょうけどね。
誰もどこにも知られていない、当事者しか知らない真実を、本人から知りえる幸運。
なんて素敵。
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知らない話が多かったせいもあるが歴史的事実をベースに、フィクションの部分もリアリティを感じながら読めた。続編、それも長編で読んでみたいと思った。
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日本・イギリス・ドイツ・スイスの4国で起こった戦前外交の秘史を追う、ふたりの外交官。
4つの事件は真実なのか、つくり話なのか―。
ヨーロッパを舞台に秘密外交官の暗躍を描く、日本昭和史の物語。
(アマゾンより引用)
面白かった(*´∀`*)
あんま期待してなかっただけに(笑)
オムニバス形式で最後ちょっと、何か、良かった(笑)
満足♪
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安易なタイトルだと思いました(汗)。
昭和の終戦間際の危険な空気感はいいですね。今の日本よりよっぽどグローバルだったなと。