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鉄道 日本人にとって最も“伝統的”な年中行事「初詣」は意外にも新しい行事だった。その誕生の裏には変化する人々の生活様式と、鉄道の開業・発展、熾烈な集客競争があった
2019/02/01 13:19
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
初詣、行きますか?昔からある伝統行事…と思ってませんか?鉄道に詳しい人でなくても、初詣に対する「当たり前」や「思い込み」が崩れていく楽しさは歴史ミステリーのよう!お正月と言えば初詣。その初詣、実は伝統行事でも何でもなく、鉄道会社が始めた集客イベントであった事をつぶさに調べ上げた良書。
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知らなかった
2014/08/17 14:29
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投稿者:ブリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
初詣という習慣が、鉄道整備後のきわめて近代的な、かつ、鉄道会社の広告による作られたイベントだった(バレンタインのように)とは、全然知りませんでした。
関東だけでなく、関西や伊勢神宮、塩竈神社など、いろいろな地域の寺社が取り上げられていて、面白いです。
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恵方参りや初縁日と異なり、元日に寺社にお参りする「初詣」という習慣は、明治以降に鉄道ができてから、まだ珍しかった汽車に乗って郊外の寺社に出かけて散策を楽しむ行事として生まれたんだって。勉強になりました。
伊勢詣りの隆盛も、その裏に鉄道会社の競争あり。
明治30年代の官営の東海道線と関西鉄道(今のJR関西本線)との間での大阪-名古屋間のサービス競争の影響が起こり、関西鉄道が参宮鉄道(今のJR参宮線)との連携で伊勢詣りがPRされ参詣客が増え、さらに、昭和になり大阪電気軌道&参宮急行(今の近鉄)が参入し、国鉄とサービス競争を繰り広げたことで、さらに参詣客の増加に至った。そして、一生に一度の伊勢詣りが日帰り可能なレジャー化していったのだそうだ。
そして、個人的に一番興味をひかれたのは、阪神電鉄と西宮神社の十日戎をめぐる駆け引き。
明治5年の改暦により、西宮神社では新暦十日戎と旧暦十日戎が併存し、当初は新暦戎はさっぱりだったが、明治38年に開業した阪神電車が新暦戎に運賃割引サービスを展開し、新暦戎も賑わうようになっていった。
一方、西宮神社は(旧暦)9日夜に居籠り神事を行うため閉門するが、電車で来る都市部の参詣客は閉門後も神社に詰めかけることがありトラブルを生じていた。神社側は阪神電車に夜間閉門の周知徹底を求めたが、電車側は駅での掲示のみで最も効果のあった新聞広告での周知はしなかった。ようやく昭和9年になり新聞での広告を出したが、その時には神社側も閉門時間を1時間遅らせて12時にしたとのこと。
神事を守りたい神社と少しでも客を増やしたい電鉄側のせめぎあい、ここには全て書ききれませんが、興味深いです。
いやー、西宮戎に知られざる歴史ありですね。
身近な話だけに引き込まれて一気に読み切ってしまいました。
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日本の、いわゆる「伝統行事」は明治以降に確立されたものが多かったりします。ただ、「初詣」自体もそれに該当するとは思いもしなかったです。
こういうのも知ると、個人的な明治維新の評価も功罪半ばになってしまいます。
内容的には当時の新聞広告や記事を基に非常に面白い考察をされています。
「阪急信者」の私にとっては、西宮神社に関する記事に、もう少し阪急ネタを入れても良かったと思いますが、十分面白かったです。
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鉄道発展は、社寺参詣の流行り廃りと大いに関係していて、互いに影響しあってきたことを、当時の新聞や社寺の日記などの記録を調べて明らかにした本である。初詣が明治中後期からの風習だとか、初詣で人出の多いところは昔から同じだとか、なかなか興味深い。鉄道会社の集客サービスや、鉄道の要する時間とか、今とそんなに変わらないことなど、単に鉄道関係のみならず、鉄道を利用する普通の人々の行動や社会が垣間見える。鉄道を含む科学技術の発達と社会は相互に影響しあって変化し続けているが、そんな状況でも人は当時も今とそんなに変わらないね、という感想を抱いた。鉄道ファンでない人でも、明治から昭和にかけての日本社会に関心あるひとには十分に楽しめる本である。
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お友達が面白かったというので読んでみた。初詣は昔からある日本人の年中行事の一つのように思うけれど、実は新しい行事で、それが発生し定着していく過程には鉄道会社が大きく関わっていたという事が明らかにされています。面白かったー。続編に期待。
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成田山へのアクセスは、寺社参詣から空港アクセスへと舞台を移して、JR(成田エクスプレス)と京成(スカイアクセス/スカイライナー)で現在も競争が行なわれている。川崎大師へのアクセスもその延長線である東京・横浜間アクセスに舞台を移し、JR(湘南ライナー)と東急(東横特急)で競争が行なわれている。一方、日光へのアクセスはJRに対して東武が勝利したものの、全体のパイの縮小により共闘せざるを得なくなり、両者の特急がそれぞれの路線に相互乗り入れを行なう形(JR特急の東武日光線乗り入れ、東武特急の新宿駅乗り入れ)に変わった。興味深い。
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初詣が一般化したのは鉄道会社の施策から?
寺社参拝に鉄道が果たした役割とは?
寺社参拝のために列車を走らせ広告を打つあの手この手。こうして初詣は一般化しました。
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「社寺参詣」という”伝統的風習”と捉えられがちなものが、「鉄道」という”近代文明”によってどれだけ影響されてきたのかをまとめた一冊。明治~昭和初期の関東・関西を主な対象として話がまとめられている。
学術的な鉄道研究として、最近は新聞記事・広告や社寺史料を丹念に研究するのがトレンドらしく。この著書もそういう書籍の一冊。こういう学術畑からの一般書は、情報量にまみれてしまい全体像を掴みにくい本が多いのですが、この本はその豊富な情報量の割には話の流れがわかりやすく読みやすい。古い鉄道会社名が鉄道ファン以外には理解しにくい点を除けば、一般者も普通に手に取れる一冊だと思う。
詳細は読んでいただいた方が早いので省略しますが、
・東西の私鉄が、閑散期である冬の集客に寺社参詣を見込んでいたこと
・その集客惹句は必ずしも宗教的伝統に忠実とは言いがたく、使いやすい惹句は東西の鉄道会社間でもインスパイヤされたこと
・社寺の側も鉄道会社による参詣者増加効果に期待していたものの、伝統との兼ね合いで意見が食い違うこともあったこと
などが特に興味深かった。
個人的に気になったのは、「旧暦・新暦」の兼ね合いを例示するために出された宮城県塩竈神社参詣(元朝詣で)輸送に関する記述。宮城が元旦終夜運転には全国的に見て早めに手を出してるのも意外なら、この終夜運転が新暦元旦だけでなく、旧暦元旦にも行われたことも驚き。旧暦元旦の臨時便は昭和に入っても運行されていたとの由。
仙台七夕が旧暦を意識した日程になっているように、仙台では割と旧暦ががんばったっぽい、とは感じていましたが、正月までそうだったとは知らず。仙台の祭の変遷は個人的に調べてみてもいいか、と感じさせるものがありました。
「社寺と鉄道」の関係に注目されている一冊ですが、引用されている鉄道広告からは各鉄道会社の社風や様々な試みも読み取れ、実に楽しい一冊。歴史鉄必読の良著です。
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(130ページ)「初詣はもともと恵方だの初縁日だのといっや細かいことにこだわらずにお詣りするという、きわめてアバウトな行事として成立し、そのアバウトさに利用価値を見出した鉄道会社のPRによって社会に定着していったものなのである。それにもかかわらず、誕生からわずか100年あまりで、あたかも「初詣の正しい伝統」などといったものが古来からあるかのように説明する語り方が定着しているわけである。(中略)初詣の近代史を研究してきた筆者は、「『伝統』というものは、ずいぶんインスタントに定着するものなのだなぁ」という感想を抱いてしまう。」
「伝統」とか言い出したら眉唾モノだなと思った方が良いという思いを新たにした。
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初詣という習慣が、日本古来のものではなく鉄道会社の施策のひとつであったという事実に驚嘆。
また、中間層というそれまでの日本にはなかった社会層がそれを後押ししたという事もあるらしい。
『古来、日本の伝統で…』みたいな思考はしないように心掛けているが、自分の中にもその要素は深くあったという事か。
以下、メモ。
恵方詣・十日戎などの宗教性の変容。
鉄道側からの寺社への働きかけ・逆に寺社からの鉄道側への働きかけ。(京急と弘明寺の関係を思いだしたり)
競合する鉄道会社と初詣ブームの関連性。
さらに進むと鉄道会社が社寺を勧進した例も…あるわけだなあ…
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タイトルにあるように鉄道が変えた社寺参拝を論じた一冊。
初詣は鉄道の開通に大きく関わり、産み出された比較的新しい文化であることを知るには良き内容であった。
また、新たな技術が与える文化の変化を知る一例としても興味深い一冊であった。
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初詣が習慣化したのは明治時代中期。それも鉄道会社の戦略!
第1章 「初詣」の誕生
第2章 「何事も競争の世の中なり」
第3章 競争がもたらしたもの(1)
第4章 競争がもたらしたもの(2)
第5章 鉄道と神社の協調と駆け引き
終章
社寺一覧、鉄道会社一覧、参考文献・新聞史料・史料、有り。
江戸時代、江戸からの成田詣は3泊4日の旅だった。
それが明治時代の鉄道路線の誕生により、
日帰りで参拝出来るようになった。
江戸時代は、初縁日に基づく参拝や氏神様、
その年の恵方にあたる社寺への参拝が主であったが、
日曜週休制と年頭三が日の慣習の浸透により、
珍しい鉄道で遠方への旅が可能になり、信心から行楽へ。
集客の見込まれる社寺の近くに路線が敷設され、
それらの複数の鉄道や国鉄による乗客争奪戦により、
「初詣」の臨時列車や運賃割引、サービス向上や直通列車が
登場する。川崎大師、成田山、伊勢神宮などに初詣客が押し寄せ、
大晦日の深夜~元旦の二年参りの終夜運転までも登場。
一方で、旧暦と新暦、普通の参拝客と慣習の人々との狭間で
苦悩する十日戎問題。十日戎プロデュースな鉄道会社と
戸惑う神社との、協調と駆け引きは生々しいものがある。
現在は正月はどこかの神社仏閣にお詣りが当たり前の、
「初詣」が実は新しい行事だったというのに驚きました。
しかも新聞広告や新聞記事を駆使してのPR効果。
実は「除夜の鐘」もラジオが年越し番組の目玉として、
取り上げたことから全国に広まったそうな。
メディア効果も新しい行事を生み出すのに一役買っています。
情報たっぷりな内容は、読み易い文章で分かり易いのも、良い。
面白くて貪るように読んでしまいました。
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正月の社寺参詣の変遷を、鉄道網の発展から解き明かしている。著者の史料の読み込みがすごい。立派な研究書だと思う。
関東では成田山・川崎大師、関西では伊勢神宮といった郊外の社寺は、複数路線の競合による増便・運賃値下げにより、さらに人気を博したとのこと。競争による市場の創出・拡大がここまではっきりと現れた事例も珍しいのではないか。