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紙の本

散文小品に凝縮された、心を揺さぶるあらゆる機微とその根源

2017/02/25 11:24

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ましろ - この投稿者のレビュー一覧を見る

時にユーモラスに、時に散漫に感じられるほど言葉の限りを尽くして、視線がとらえたものを心からの叙述として語る。心を揺さぶるあらゆる機微、その根源に至るまで思いを巡らせ、言葉を探す。散歩は散歩に止まらず、その域をこえ、感覚すべてを動員した夢想譚へ、生の中へと進みゆく。こんなにも感じ、こんなにも考える。そうしてこんなにも言葉が溢れる。作家としての自己を省みる目に宿る本質は散文小品に凝縮され、核心をつく。自分の生の在り処を、自分の存在する世界を、言葉で表現することの理由を、確かな手触りで感じられたような気がした。

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紙の本

書きたいものが書けなくなった作家の、それでも何か書かずにはいられない物書きの性

2015/08/14 17:22

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hacker - この投稿者のレビュー一覧を見る

ローベルト・ヴァルザー(1878-1956)は、スイスのドイツ語圏ベルン州出身の作家です。本書の訳者あとがきによると、作者は1909年に最後の長編小説『ヤーコプ・フォン・グンテン』を発表して以来、長い作品が書けなくなってしまい、それからはスケッチ風の散文小品を35年の間書き続けたそうです。本書はそれらの中から、テーマ別に抜粋した日本独自の編纂です。

また、英文のWikipediaには、1929年より精神を病むようになったとされ、自分の作品が評価されなくなったことへの失望と不安が、その要因ではないかとの記述があります。実際に、本書に収められている『最後の散文作品』の中にも次のような記述があります。

「この10年間わたしは何をしていたのか?この問いに答えるためには、まずため息をつき、それからすすり泣き、そしておもむろに新たなる一章を、あるいは、次の段落を書き起こさなければならない。
この10年間わたしはひたすら、およそ役に立ちそうもない、ちっぽけな散文小品を書き続けてきた。どれほどの根気が必要だったことか!もう百回も叫んだものだ、『もう書かないぞ、もう送らないぞ』、けれどもその度にその日のうちに、そうでなければその翌日には、わたしは次の商品を制作をしては発送していた、今ではほとんど理解しがたい振舞いである」


本書は、書きたいものが書けなくなった作家の、それでも何か書かなければいられない物書きの性の結実と言えそうです。したがって、内容も辛い作品が多いです。直接辛さを語っていなくても、登場人物を語っているだけで、その人間の生の辛さが分かるようになっていて、それは作者自身の生の裏返しなのでしょう。

そして、皮肉なことに、と言うべきか、当然の結果、と言うべきなのか、本書で最も印象的なものは、スイスの美しい自然と四季と、それに抱かれる作者自身を語った「路上にて」と分類された作品群です。これらの作品には「生きる歓び」があふれていて、作者が本当に書きたかったのは、こういう世界ではなかったのかという印象を持ちます。作者が実際に送った生と、書きたかった生との落差に複雑な思いを抱かざるをえません。そういう意味で、ちょっと不思議な読後感を与えてくれる一冊です。


四つの公用語があり、地理的にはヨーロッパの中心にあって、ヨーロッパではない国という特殊事情が災いしているのかもしれませんが、スイスの作家というと、デュレンマットが少し有名なぐらいで、日本ではあまり知られていないように思われます。他の作家も機会があれば紹介していきたいものです。

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