紙の本
富士正晴氏の作品が面白い
2022/12/06 09:20
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小銃」小島信夫、「驟雨」吉行淳之介、「黒い裾」幸田文、「群猿図」花田清輝、「闇の中の黒い馬」埴谷雄高、以上は既読なので、「結婚」庄野潤三、「萩のもんかきや」中野重治、「二世の縁」円地文子、「帝国陸軍に於ける学習」富士正晴、「夏の葬列」山川方夫、「出発は遂に訪れず」島尾敏雄、「無妙記」深沢七郎、「蘭陵王」三島由紀夫を読む。富士正晴氏の作品は他のものも読んだことがなかったが、金とコネのあるやつが戦地行を免れ、役立たずと思われるコネのない人間が戦地に送られるという軍隊の矛盾を皮肉に満ちた視点で描く、その富士氏が遅く戦地から帰国した時、妻は家を去っていたという。やはり戦争を体験した人の小説には現代の小説家は勝てないかもしれないと、この作品群で感じた
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昭和27年から45年までに発表された短編小説を収録している。戦争体験を昇華したような小島信夫『小銃』、富士正晴『帝国軍隊に於ける学習・序』、島尾敏雄『出発は遂に訪れず』が素晴らしい。自死直前の三島由紀夫『蘭陵王』の明るさ、透明さに驚かされた。タイトルは知っているが未読の著名な作品をいっぺんに読めて嬉しかった。
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近代が画期的な性の解放によって表現が多彩になったなどとは決して誰もが口に出すことはないだろうし、そう真剣に考えている者もいないだろう。そこにあるのは冷徹な暴力のみなのだと誰もがわかっているし、誰もが圧倒的な暴力の中で暮らしているからこそ噴出してくる類の表現なのだ。
だからこそ唐突に、迷うかのように、三島由紀夫は本篇収録の『蘭陵王』で、問いかけている。それも落雷の如く突然に。
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昭和期の文学短編集。もともと小島信夫の「小銃」が読みたかったので、その他の作品は拾い読みした。
○小島信夫「小銃」
陸軍で貸与された小銃を、出征前に情けを通じた年上の女と重ねあわせる若者の話。小銃に対する思いがエロチックかつ幻想的で、武装解除の時にその小銃がその他大勢になってしまう寂しさも良かった。
○帝国軍隊における学習・序(富士正明)
陸軍においても鉄拳制裁による逃亡や自殺が問題になって禁じられ、制裁を受けなくなった召集兵の練度は低いというのが興味深かった。
○無妙記(深沢七郎)
骨。
○蘭陵王(三島由紀夫)
富士山のふもとで演習しているときに、横笛を吹く大学生の話
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大変珍しくも、岩波で三島由紀夫を読める不思議。庄野潤三「結婚」、そこはかとない官能小説感にニヤニヤする。「死霊」で有名な埴谷雄高の小品……相変わらずよくわからない。
島尾敏雄「出発は遂に訪れず」で描かれる主人公の内面に生じる生と死のコントラストが鮮やかで目を見張る。特攻の出撃命令を待つ夜の心境にドキドキする。
「生涯の設計の骨組みが具合よくすべて支え合い、どの部分も繊細過ぎるので全体が微妙な釣合いを保っていたが、今夜ちょうど最後の仕上げのときに来たと思えた。今夜出発すれば私の生涯は終りを全うすることができる。彼女の涙や入江奥の部落の女たちのおどりの中の或るしぐさがおかしな細密画の一こまになって全体の構成を助けていた。すべてが大きな布切れをかぶせたような悲しみの中でにこにこ笑って遠くの果てに遠去かって行くが、壮烈な死に讃歌をささげていた。でも今夜も昨夜の繰返しに終って私たちの出発が無視されたら、すべてはむしろ悪化して腐りはじめるだろう」
美しさと闇とが絶妙なバランスで同居している。わずかでも触れれば崩れてしまいそう。生きながら死者となるものの心境か。
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・短編集の中から夏の葬列を目当てに読む。作者は山方方夫まさおさん
・1962年8月に発表。
時間を超えて戦争の記憶が甦り、負い目から解放されると思いきや、いっそう深い苦痕におちいるさま。
・同じ疎開児童のヒロコサンの死の原因となってしまった自分。
・彼
・説明
・子供のころに疎開していた町を訪れ、葬列にでくわす。
・こわい。あの結末。あの偶然。
・これは実話?リアル