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魔術的リアリズムを定義し、かなり窮屈なしばりをかけているように感じた。ガルシア=マルケスの『百年の孤独』を代表とする正統的な魔術的リアリズムと、『精霊たちの家』のイザベラ・アジェンデやパウロ・コエーリョ、ルイス・セプルベダらをはっきり区別し、後者を魔術的リアリズム的な作品とし、魔術的リアリズムの商業的ブームに乗ったベストセラーだと位置づけている。筆者の考える魔術的リアリズムに該当する作品はほぼ言及されており、翻訳書の有無も分かるので、魔術的リアリズムに興味のある向きは参考にされるといいだろう。
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初めてラテンアメリカ文学に出会ったのは、学生時代なのでかれこれ20年くらい前だろうか。
魔術的リアリズムとは何とも不思議な表現だ。魔術ねぇ。
この魔術的リアリズムって、ラテンアメリカ文学固有だと思っていたらそうでもないらしく、日本では安部公房辺りも該当するらしい。
ラテンアメリカ文学、読みたくなってきた。
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ラテンアメリカの小説=“魔術的リアリズム(マジック・リアリズム)”という印象は何となくあったけれど、実際「魔術的リアリズム」はどんな定義なのか、という疑問が氷塊する好著だと思う。
記述のスタイルは多少学術的な感じがするけれど、ガルシア=マルケス、ボルヘス、カルペンティエール、バルガス=リョサ(本書では“ジョサ”と表記)、ドノソといった作家の作品を読んだことがあったり、ラテンアメリカ文学そのものに興味があればなんのことはないはず。
魔術的リアリズムの始原から、ブーム、大衆化という時系列的な流れでたどるので、その順番に色々な小説を読みたくなってしまう。ブームの頃をオンタイムで味わっていないし、これまでそこまで身近にラテンアメリカ小説があったわけでわなかったので、その辺りの事情を把握するにはうってつけかもしれない。
さて、肝心な魔術的リアリズムの本質だけれども、著者が一言でまとめている箇所によれば
非日常的視点を基盤に一つの共同体を作り上げ、そこから現実世界を新たな目で捉え直す
としている。
もちろんこの部分だけ読んだってそこまでピンとくるわけではないから、アストゥリアス『グアテマラ伝説集』やカルペンティエール『この世の王国』からアジェンデ『精霊たちの家』までさまざまな小説を取り上げながら論じているわけだけれども。
結びでエルネスト・サバトが提起していた「フィクションの矛盾」についての言葉が引用されているが、それをここでもそのまま引用しておく。
良い小説の特徴は、読者を作品世界に引きずりこんで現実から切り離し、まわりを忘れるほど夢中にさせてしまうところにある。にもかかわらず、それが身の周りの現実をしっかりと暴き出していることに変わりはないのだ。
シンプルだけれど、まさしくそうだと首肯かざるをえない。
最後に、本書で挙げられている「魔術的リアリズムを理解するためのブックガイド」の本を列挙しておく。なお、本にはそれぞれの作品に解説が添えられている。
*ミゲル・アンヘル・アストゥリアス『グアテマラ伝説集』
*アドルフォ・ビオイ=カサーレス『モレルの発明』
*ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』
*アレホ・カルペンティエール『この世の王国』
*フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』
*カルロス・フエンテス『済みわたる大地』
*マリオ・バルガス=リョサ『都会と犬ども』
*ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
*ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』
*ガブリエル・ガルシア=マルケス『族長の秋』
*レイナルド・アレナス『夜になるまえに』
ちなみに個人的にはドノソ『夜のみだらな鳥』、マルケス『族長の秋』をものすごく読みたくなったのだけれど、前者は古本でしか手に入らない上、けっこうな値段がついている…。
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ガルシアマルケスの「百年の孤独」と「族長の秋」をメインとして、魔術的リアリズムと呼ばれるジャンル(特に、ラテンアメリカ作家のもの)の中身や歴史を解説している。
魔術的リアリズムの定義やその中身については、読んでてそこまで分からなかったので面白かったし、ボルヘスらとの違いやガルシアマルケスの「模倣者たち」との違いも知識として勉強になった。
序盤は知識の羅列ぽくて退屈かと思ったが、ガルシアマルケスの話あたりから本領が発揮され始める感がある。