投稿元:
レビューを見る
第1章 大いなる分岐
第2章 西洋の勃興
第3章 産業革命
第4章 工業化の標準モデル
第5章 偉大なる帝国
第6章 南北アメリカ
第7章 アフリカ
第8章 後発工業国と標準モデル
第9章 ビッグプッシュ型工業化
投稿元:
レビューを見る
豊かになるには、教育・資本・生産性の向上が必要で、それが各国の事例に照らしてどのようにおこった、あるいはおきなかったかを解説している。
発展した各国でおきたイノベーションの解説は非常に興味深かったが、一番印象に残ったのは"教育"の重要性についてである。生産性を高める、生産性が高い産業を生み出すには、国民のベースとしての教育(この本では識字率)の向上が不可欠なのである。
投稿元:
レビューを見る
主張は一貫していて読みやすい。ヨーロッパ史観が排しきれていないように思えるものの、なぜアフリカが低成長のままか、など知りたかった&知るべきことが書かれていて満足。コンパクトにまとまっていて大学生とかが読むといいんじゃないかな。
まとめた
http://bukupe.com/summary/8334
投稿元:
レビューを見る
賃金が高くて資本(石炭)が安いからこそ、人的資本を効率化する意味があり、イギリスにおける産業革命に繋がったという見解には納得。
過去はそうだった。未来はどうか。
この理屈だと生産革命は先進国にしか起こし得ない。
もう少し考えたい。
投稿元:
レビューを見る
本書は、産業革命以降の多くの国々が高度な成長を獲得する中で、アフリカや南北アメリカなど成長に失敗した国の何が問題であり、どう違っていたのかを総括的に考察するという壮大なアイデア満載の本である。
「GDP」「労働者の生存費に対する所得比」「ロンドンと北京の実質賃金比」などの多くのデータを駆使しつつ、成長の過程を類推する手法は、合理的とも言えるし、それなりの説得力もあるが、本書は読みにくいとも感じた。
この読みにくさは、著者の論理にあるのか、それとも翻訳のせいなのか。
それぞれの国の経済成長が、各国の置かれた経済条件のみならず、文化的・歴史的条件に規定される以上、数字的データのみを持って、論理的に断定することは困難なのではないのかという疑問も持ったが、「グローバル経済」というものが既にこのような世界的考察をしなければならない段階になっているという現実を突きつけられるようにも思えた。
それにしても、本書の考察で目を引いたのが「アフリカの部族社会」と「日本のビッグプッシュ型工業化の終焉」である。
アジアの停滞ではかつて「儒教」の影響が語られたことがよくあったが、本書では、アフリカにおいては「国家は人種差別の排除には成功したが、部族性の排除はそれほどうまくいかなかった」と考察し、「アフリカがその歴史から逃れることは容易ではない」と結論する。
最近のアルジェの事件や不安定化するアフリカを見ると、グローバル化のもとで一層悪化するアフリカの政治情勢は、今後乗り越えることができるのだろうかとの疑問を持った。
また本書では「先進国は世界の技術フロンティアが拡大するのと同じ速さでしか成長できない。つまり毎年1.2%の成長しかできないということである」と断定している。
この結論は最近の別の「経済書」でも散見する見解である。それぞれ別のアプローチからの結論が一緒ということは、日本は今後「低い成長」を前提とした社会構成を目指さなければならないのだろうか。そうならば、安倍政権は「見果てぬ夢」を追いかけていることになるのだが。
本書は、読みにくさはあるものの、読者に多くのことを考えさせてくれる良書であると思った。
投稿元:
レビューを見る
経済学的な観点から、豊かな国と貧しい国ができた歴史的な経緯を分析。労働力のコストや、資源へのアクセス…といった視点はなるほどと思わせるが、読み物としての面白さでこのテーマとなると、やはりジャレド・ダイアモンドがはるかに上。
投稿元:
レビューを見る
経済史版の『銃・病原菌・鉄』だというのをどこかで聞いて興味を持った。短くまとまっていて、タイトルにも忠実。
制度や文化、地理的要素が背景として重要ではあるが、それより「技術変化、グローバル化および経済政策こそが、経済発展の直接的な原因であった」というのが本書の立場。そして出発地点のわずかな差が、のちのち大きく響いてきたということも。
まずさいしょの分岐となるのが、産業革命への準備が整っていたかどうか。産業革命前夜、大航海時代にイギリス(とオランダ)は植民地との交易により経済を繁栄させ、商業・製造業の礎をつくった。都市化と農村工業化がすすみ、高賃金経済が教育の投資価値を向上させた。賃金が高いからこそ、割安なエネルギーと資本を使って賃金を節約するような技術が採用され、イギリスに産業革命が起こったのだと著者は説明する。
たとえばなぜアメリカ南部が奴隷に頼り、北部で工業化がすすんだのかも、これで説明できる。奴隷制を採用するかどうかに重要なのは、モラルではない。農業プランテーションが可能な南部では奴隷がワリに合い、北部ではワリに合わなかったからなのだ。
一方、サハラ砂漠以南のアフリカが産業革命の準備ができていなかったのは、「先進的な農耕文明」ではなかったことに原因があると説明される。先進的な農耕文明は、財産の保証、読み書きや計算の能力、官僚などさまざまなものを準備する。世界のおもな地域でこれらを準備できたのは、西ヨーロッパ、中東ペルシア、インドの一部地域、中国、そして日本のみであり、それらの国々は産業革命が生じうる状況にあった。
つぎの分岐となるのが、「工業化の標準モデル」。(1)内国関税の撤廃と輸送の改善により大きな国内市場を創出すること (2)対外関税を設定し「幼稚産業」をイギリスとの競争から保護すること (3)通貨を安定させ、事業に資金を供給する銀行を創設すること (4)技術の開発と受け入れを加速させるために大衆教育を確立すること の4つだ。北西ヨーロッパの各国は、これらを共通の政策としてイギリスへキャッチアップしたし、日本やロシアなどの後発工業国もこの4条件をじょじょに整えた。
3つめの分岐は「ビッグプッシュ型工業化」。先進国へ追いつくためにはジャンプが必要だ。それは製鉄所、発電所、自動車工場、都市等を同時に建設するという荒技を意味する。ソビエト、日本、そして台湾・韓国・近年の中国はそれぞれ独自のやりかたで、これらの計画をたて、実現を成し遂げた。
著者の説明はジャレッド・ダイアモンド的な娯楽読み物とちがって、学問の香りがする謙虚なものだ。わかりやすくはあるが、突飛な思いつきではない。そこがいいという人もいるし、結局どうなんだという人もいると思うが、自分にはたいそう相性がよかった。
投稿元:
レビューを見る
「大いなる分岐」がなぜ起きたのか、それが現代までどのような経過をたどったのかを、経済学の最新の知見を元に著した、コンパクトだけれどもガチの経済学・歴史学の書。
「大いなる分岐」については、ケネス・ポメランツの「大いなる分岐」(未邦訳)から大きな研究の流れができ、「10万年の世界経済史」などが書かれている。
「大いなる分岐」の問題提起は、おおよそ、
・18世紀以後、一人あたり賃金が最低生計費を上回る状況が歴史上はじめて生まれ、拡大していったのはなぜなのか
・それによって起きたことはなんなのか
・それによって起きることはなんなのか
、である。
本書でも、その点を、様々な推察を重ねて要因を洗い出す。
ポイントは、資本蓄積とエネルギーコストと賃金水準。
大雑把に言えば、経済が拡大するためには資本投下による機械の発明と改良、工場の建設と運用などが必要。それはエネルギーコストが低く、賃金水準が高くないと起きない。
エネルギーコストが高いか、賃金水準が低ければ、機械化は高コストになり利益を生まず、低賃金の労働者を使ったほうがコスト削減となるからだ。
また、低賃金の労働者は十分な教育を受けられないし、その子弟にも受けさせられず、どうしても単純労働しかできないため、「貧困の罠」にとらわれてしまう。
まず最初に、イギリスで、産業革命以前にこの条件が整った。そして、製造した商品ー綿製品ーを販売する市場が、大航海時代のフロンティアの発見と、航路による輸送コストの削減で広大に広がったことにより、機械化への投資が継続して促進され、イギリスは最初の「産業革命」の国となった。
その後、1820年台にはアメリカやドイツが高賃金低エネルギーコストの条件でイギリスを抜き、工業国としてのヘゲモニーを握った。
第一次世界大戦はドイツの鉄鋼業がイギリスを抜き、それにより軍事産業が肥大化したことで生まれた緊張から生じたものだった。
以上、5章まで。
6章以降は、南北アメリカ、アフリカ、開発の標準モデル、ビックプッシュ型開発、というトピックで、各国の経済がどのようにして発展or低状態の維持をしてきたのかを、経済的な要因から論じていて興味深い。というか、それらは独立して読んでも十分意味がある。
ビックプッシュ型工業化の章では、第二次大戦後、日本などがアメリカなどの先進国に追いつくため、産業の基礎である鉄鋼業を発展させると同時に、鉄鋼を使う自動車産業を発展させるといった、本来順繰りに発展していく工業化のプロセスを同時並行的に進めたーこれをビックプッシュ型工業化というーために、非常に高い水準で毎年の経済成長を成し遂げ、アメリカに追いつくまでになった経過を振り返っている。
そして、そのような経済成長は、モデルとなる先進国があったから出来たことで、すでに追いついてしまった今は、これまでの経済成長をどのように行えばいいのか、世界中の先進国がその答えを見つけられないでいる。
中国が今後も数年間発展していくのは確実で、その後はインドがそれに続くだろうが、やはり自国の工業化が「完成」したら、それまでの急速な経済発展は難しいだろう、と、本書では考えているようだ。
そして、中国が先進国並みの経済成長を遂げることで、「15世紀の状況にもどる」というーつまり、産業革命の前後で起きた各国の豊かさの度合いがフラット化するということだ。
その後、どうすればいいか。世界は答えが出ていない。
経済成長はエネルギーの枯渇や二酸化炭素による環境の激変など、単なる成長では解決しない問題も引き起こしていて、これも解決は即急に求められているが、だれも明快な答えを持っていない。
世界は模索している、というところで本書は終わる。
正直難しい。薄い本だから最後まで読めたが、読みながら湧いてくる疑問に答えられる紙幅がなく、ここからさらに学ぶことが求められるのだろう。
賃金水準の上昇は法則的なものなのか、イギリスの例のように、地代を税として取り立て、その循環で労働者が潤い、高賃金になったという、偶然的なものが連鎖しているだけなのか、例えばそんなことがわからなかった。
アフリカの章は懇切丁寧で、「経済大陸アフリカ」に直接繋がる話でもあるので、まとめつつ、他の書籍もあたってみたいと思った。
投稿元:
レビューを見る
目的
どのような要因でそれぞれの国家が歩んできたか知りたかったから。
経済史について産業革命から現代にまで書いたもの。
イギリスで産業革命が起きた理由、ラテンアメリカ、アフリカで開発が進まなかった要員、日本のキャッチアップなど分かりやすく書いており面白かった。
投稿元:
レビューを見る
世界全体が裕福になることが可能なのか?
この世はゼロサムなのか?の疑問に答えてくれると期待していたが・・・
効率化のインセンティブの話のみ!
投稿元:
レビューを見る
採算が取れる見込みが無いと、高効率な機械を導入しようとは思わない。という当たり前の話。
イギリスで産業革命が起こったのは、「高すぎる人件費を減らしたい」「機械を動かすための燃料は割と安い」という2つの条件が揃っていたから。これによると、後進国が追いつくのは結構難しいってことになる。
そういう不利な条件下で、日本やアメリカなどの現代の先進国が成り上がりに成功した理由を考えてみる。
1. 国内の輸送インフラの整備
2. 関税を導入して国内産業を守る
3. 銀行をつくって資金を安定的に流す
4. 大衆教育
どうやらこれらの4つの課題が工業化を達成する条件っぽい。
今後は先進国が足踏みしている中、中国やらインドが追いついて来るので、世界経済は産業革命以前の平等な時代に戻るそうだ。
その後どうなるかは全然わかんねー、で終わる。
投稿元:
レビューを見る
Robert C. Allen,“ Very Short Introductions: Global Economic History” の翻訳。原題にある通りグローバルヒストリーの観点から書かれた経済史の入門書だが,最新の研究成果を取り入れた叙述なので,高校生・大学生向けおしてはやや難しいかも。
投稿元:
レビューを見る
ロバート・C・アレンによる経済史の本。
興味深いテーマ。
日本のことにも割とページが割かれていてそこだけでも面白い。
投稿元:
レビューを見る
グローバル経済史の入門書。経済の発展、産業の発達におけるインセンティブの重要性を再認識した。また、この本を読んで改めて思ったのは、近世以降、特に近代以降の日本史は、世界史の中に位置付けて学ぶべきだということ。
投稿元:
レビューを見る
経済的な側面から、発展した国とそうでない国とを比較して論じていく本書。
第1章では序論として、必要最低限レベルの生活の国では労働力が安く、機械の発明や導入へのインセンティブが働きにくいため、経済的な発展が進まないとしている。第2章から第4章までは歴史をたどり、イギリス産業革命と西洋の発展、ドイツやアメリカの工業化へと話が進む。第5章はインドの挫折、第6章では南北アメリカ大陸の格差を生んだ要因、第8章ではアフリカが貧しい理由について触れられ、ここでも第1章で挙げられた機械化へのインセンティブの欠如が挙げられている。第8章は後発工業国としてロシアと日本に言及し、第9章では戦後のソ連、日本、台湾・中国・韓国がなした奇跡的(異常とも言える)発展について、その要因を探っている。
終盤がやや急ぎ足というか、論が足りない印象もあるが、日本の発展が特殊過ぎることは改めてよく分かった。
アフリカを30ページ程度で終わらせているのはさすがに少ないな、というのと、オーストラリア、島嶼国、中東、東南・南・西・中央アジアについて全く触れられていないのが残念なところ。実質、目立つ地域である西欧とアフリカ、アジアの発展国である日本・中国・台湾・韓国までで議論は止まっている。人類の歴史から見れば、むしろ(せめて)中東と西・中央アジアには触れないと物足りない。
全体的にコンパクトにまとめっていて読める本ではあるが、人類史としてしっかり読むならばジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』や『文明崩壊』のほうが面白い。これらの本の周縁にある参照先の一冊としては有益かもしれないが。