投稿元:
レビューを見る
最近、TVでもよく見かける浜矩子さん。その本をJR名古屋駅だったかな。待ち時間があったので手にしてパラパラとめくり、そして買ってみた。
この本の価値は、現在のグローバル資本主義の問題点の明確化がされている点だ。ただ、それに対する提案はまだ弱い。浜さん自身も明確に将来の道が提案しきれていない。だが、アベノミクスをはじめ、世界経済の現状理解をしたい方にはお勧めする。
浜矩子さんはアベノミクスを「浦島太郎の経済学」と酷評する。
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20130202-01-0901.html
浜さんはグローバル化した経済のもとでは、国家が財政をつぎ込み、大量の資金供給を行ったとしても、それは期待されていたような税収増には結びつかず、国家財政を悪化させる一方となることが明らかになったと指摘する。そして、このまま金融の肥大化が進めば、そのマグマが噴出したときの破壊度はリーマンショックの比ではないという。欧州のユーロ解体、ドルの暴落、日本の国債暴落、いずれもマグマが噴出するきっかけになりうる。これ以上、財政支出を拡大し、資金供給をふやすとすれば、その気に待っているのは悪性インフレ、つまりハイパーインフレであることは間違いない。
たとえば、いま、議論されているTPPでもFTAでもEPAでもいいが、それらはWTOが提唱してきた自由貿易の考え方と逆行する、21世紀のブロック経済であると断言する。それは歴史をみれば明らかである。
世界経済をここまでおかしくさせたのは何だろうか。それは経済のグローバル化と、その結果生み出された「グローバル資本主義」である。そもそも、資本主義は、国家を前提としてさまざまなルールづくりをしてきた。しかし、現在は「企業と国家の乖離」が進んで問題を生じている。つまり、国民国家という枠組みを残したまま、資本がグローバル化を追求していくと資本主義は崩壊する運命にある。資本主義を残したければ、国民国家という枠組みのあり方を見直さないといけないのだ。
国家の財政は国境を越えられない。国境を越えられないものが、国境を越えて発生する難題に対応していかなければいけない中で、その重みに耐えかねて国家が破綻へと向かっている。浜さんの問いかけは、「グローバル化を選択するのか? それとも国家を選択するのか?」ということにも繋がる。アダム・スミスやマルクス、ケインズといった先達たちが解き明かしたような資本主義の時代は崩壊した。
浜さんは、最近の統計から、ものづくりで成長してきた日本経済が、国内で生産し海外で売るよりも、海外の稼ぎを日本に還流させる方が活発になってきており、日本経済の転換期だとみる。日本の経常収支を支えるのは移転所得であり、投資や利息など、海外からの「仕送り」で食いつないでいる状況なのだ。こんな時代の中では、世界に出て行かざるおえないのは間違いないし、世界中を駆けずり回り奮闘することは理に適っている。しかし、問題は日本を離れることができない高齢者や子供たちだ。われわれが持ち合わせているのは、「国家があっての資本主義経済」の経験であって、グローバル時代に適応した経済政策の教科書はない。
これ���対する明確な回答はない。ただ、日本の強みを生かした「里山資本主義」がひとつの解にならないだろうかと提案する。地方にあるであろう「埋蔵文化財」を掘り起こし続け、新しいものを出していくという提案だ。地域資源を利用する里山資本主義。さて、どうだろうか。ボク自身は中央に心残りがあるわけではないので、大いに賛成。ただし、具体的な方策は今後の課題なのは間違いない。