紙の本
冷静な国際関係論に一票!
2016/05/24 13:22
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投稿者:papajunny - この投稿者のレビュー一覧を見る
安保法制、沖縄基地問題、はたまた憲法改正と、国際平和、安全保障に関する議論が華々しく行われています。こうしたテーマは時に(いつも)感情的な批判の応酬に終始しがちですが、この本はそうした喧騒から一旦外れ、冷静に国際秩序の歴史を整理して見せてくれます。
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平和とは何か?―――現実の平和
2021/01/28 22:00
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投稿者:司馬青史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平和とは何か?
平和とは何とも美しく、甘美であり、そして大多数の人々が願い、望むモノだ。
それでいて、これほど実現が難しく、壊れやすいモノもまたない。
その上、唱える者が目指す平和が必ずしも同じモノと限らない。むしろ、異なる場合の方が多い。
平和。
誰しもが一度は口にし、願った事があるモノだ。
しかし、平和とは何か? 何を持って平和とするのか? 平和とは如何なる状態なのか?
この本は平和について書かれた本ではない。
また、美しい夢想を描いた本でもない。
この本は、国際秩序について書かれた本である。
この本に書かれているのはロマンでもなければ、熱い情熱でもない。
まして、美化された歴史でもない。
この本には残酷な現実、諸国家のエゴイズム、そして人類の挫折と愚かさが書かれている。国際秩序と言う、諸国家と人類の試行錯誤の歴史が書かれている。
しかし、だからこそ、現実の平和を問い、考えるに適した本でもある。
平和が易く語られ、キレイ事で語られる昨今。
この本が描く国際秩序の歴史は、昨今の安易な平和論を打ち砕いてくれる。
人類と諸国家が莫大な生命と時間をかけ、試行錯誤し続ける国際秩序の現実ほど現実の平和を教え、自覚させてくれるモノはない。
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高坂正尭v.s.坂本義和
2015/10/21 08:09
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリーテラーの読みやすさを持った、優れた国際関係論の著作である。
最初に出てくる高坂正尭氏と坂本義和氏の論争は既に歴史となったのだろうか。リアリストとアイデアリストの論争とステレオタイプに語られたものだったが、どうみても高坂正尭氏の語った日本の姿の方が現実に近く、坂本義和氏の論調は朝日新聞や今の社民党の路線で、まさに安保世代の外交中核とも言うべきものだったが答えはとっくに出ていた。
しかしこれをまともに国際関係の著作でお目にかかることができたのは初めてであった。著者は勝敗をうんうんしていないが、戦後に日本の外交真空地帯で咲くことができたものだった。
これ以外ではヨーロッパ中心の均衡から協調そして共同体という流れと勃興する太平洋での日米中の関係にフォーカスがあたる。まったくヨーロッパと異なる下地で、三国関係はいかなる秩序をうみだすかである。
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がっかり
2016/12/14 16:24
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投稿者:黒酢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
youtubeでモーリーロバートソンとの動画を見て、著者の話が面白かったので、ためしに本書を読んでみたが、全く面白くなかった。
この本は、著名な政治家や国際政治学者の国際秩序の理論や言説を引用し、それを筆者の言葉で説明するのだが、概念的なことを何度も同じように繰り返し書いてあることが多く、全く説得力がない。たとえば、それを裏付けるような歴史的事実の詳細を国際政治を背景に説明すれば、もっと面白くなりそうだが、○○戦争が起ったとか、平和が長かったぐらいの言及しかない。そもそも、本書は、各戦争の原因について何の言及もない。
また、本書は、時代の流れに沿って書いてない。急に昔に戻ったり、一気に進んだりを繰り返し、本当に読みにくかった。
新書にしては厚めの本であったが、内容が薄い。3分の1にはできると思う。
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均衡、協調、共同体という3つの国際秩序形成の原理の観点から、過去300年の国家間の秩序形成を整理し、論じている。新書にしておくにはもったいないぐらいのボリュームである。近視眼的に自分が所属する国、地域社会からしか世界を見ることをあまりしていないなぁ。他国の立場から同じ国際情勢を眺めることの必要性を改めて認識させられる1冊。
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ウィーン体制を学ぶことが国際秩序を理解するうえで最も重要だと考えられていた。
21世紀に入った現代の国際秩序は利益と価値の多様性がさらに増している。
均衡がバランスで、協調はコンサート。
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わかりやすい。均衡•協調•共同
国家間の外交関係を、18世紀のヨーロッパから現代まで。
新書だが、読み応え抜群。
歴史的に見てもおもろい
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「均衡(balance)」「協調(concert)」「共同体(community)」という3つの概念で国際秩序を論じる第一章はとても読みやすい。カントが分かったつもりになれます。
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ほとんど知らない分野ですし,体系的に分かりやすくまとまっているので,私にとっては目から鱗の1冊でした.
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国際秩序のベースとなるのは勢力均衡。協調するには価値観の共有が重要。国際政治を考えるうえでかなりしっくりきた一冊。
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面白かった 世界史はほぼ近代史しかしらないがその近代史でもこれだけのことが起きていたのだなあ
一つの軸を持って歴史を読み解くというのは大いに学ぶところがある
これからの国際秩序における日本の立ち位置とは 軍事的にはどうやっても厳しいのだし、ならばせめて経済的に没落するわけにはいかんよなあ 国際秩序の一等構成国たりえない国、国際秩序構成国の衛星国の悲劇は多数ある 満ち足りた成熟国とか言ってる場合ではない
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18世紀から現代に至る「国際秩序」の歴史を「均衡(バランス)」の体系、「協調(コンサート)」の体系、「共同体(コミュニティ)」の体系という3つの秩序原理の組み合わせから位置付ける試み。
ヨーロッパ世界においてはじめて「勢力均衡」が成立したのは、18世紀のスペイン王位継承戦争後のことであるが、こうした「均衡」の体系は、たとえば19世紀後半のヨーロッパ国際秩序である「ビスマルク体制」において典型的に再現される。
またその「ビスマルク体制」は、ナポレオン戦争後に成立したウィーン体制、すなわちヨーロッパにおける共通の価値(これは啓蒙の世紀である18世紀にスミスやヒュームらによって唱えられた「商業的社交性」の精神等によって支えられている)を前提に実現された「均衡による協調」の時代が徐々に崩壊(協調が失われ、剥き出しのナショナリズムが跋扈)していく過程で登場した。
第一次世界大戦は、天才・ビスマルクによるアートとしての政治が失われ、均衡が崩れたことによって出現した。大戦後には「共同体の体系」が、しかし「均衡」「協調」という重要な要素を欠きながら登場する。とくに1931年の満州事変はヨーロッパ的な国際秩序原理とは異質な大国の行動が国際秩序を崩壊させたトリガーとしての画期性をもつと分析される。
1931年の満州事変から10年後の1941年、英米による協調の精神を盛り込んだ「大西洋憲章」は第2次大戦後の冷戦期の「均衡の体系」の基礎となった。その後、ブッシュ(父)による「新世界秩序」構想、クリントンの「民主主義の共同体」構想を経ていく。
現在は第2次大戦後の「大西洋」中心の時代から太平洋を中心とした時代への転換点であり、日米中の均衡と協調が、今後の「国際秩序」の鍵を握る。
やや難解な部分もなくはないが、国際関係を2国間関係という点と点の関係の集合から理解するのではなく、面として一貫してとらえようとする著者の試みはひとまずは成功しているのではなかろうか。剥き出しの「均衡」と共通の価値観を背後にもつ「協調」が相即不離の関係で成立することが、今後の国際秩序を構想する上で非常に重要だということが、歴史的な視点から説得的に論じられている。
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国際秩序の歴史が、18世紀ヨーロッパから現代に至るまで描かれている。ウィーン体制、ビスマルク外交、2つの世界大戦、冷戦そして現代のテロリズムと展開する。
著者によると国際秩序には3つの体系があるという。均衡、協調、そして共同体の体系だ。高坂、ヒューム、アダムスミス、カント、パスカル、カー、キッシンジャー、ケナン、丸山、ハンチントンなど引用が豊富で、ただの歴史書とは一線を画す内容だ。それはまさしく、国際秩序の変遷を的確にとらえている。
読み応えがあり、非常に勉強になった。
著者は説く。日本は国力をまず充実させ、パワーを持ち、均衡の体系を成り立たせ、その上で関係諸国との利益や価値の共有を図るべしと。
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勢力均衡,協調の精神,共同体の拡大。国際関係に対応するこれら三つの論理がどう変遷してきたかを歴史に沿って概観していく。
勢力均衡が確立したスペイン継承戦争に始まる均衡の黄金期18世紀。ナポレオン戦争を経て協調と均衡がバランスよく続いた19世紀ウィーン体制。それがビスマルクの登場で均衡の論理に振れ,各国で大きくなる民衆の声に流されて破綻を招いた20世紀前半。その間にはウィルソンに代表される空想的共同体主義が招いた混乱もあった。そしてイデオロギーが分裂しつつも大国間の戦争は避けられた20世紀後半の冷戦時代。
秩序を乱す力の真空にどう対応していくか。歴史に学んで時代に合った方策をとっていくしかないか。勢力均衡の否定とか,あまりに先走った議論はいけない。
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国際秩序の変遷を「均衡」「協調」「共同体」という3つの系譜から読み解いた一冊。勢力均衡の上に立たない協調がいかに脆いものか、近代ヨーロッパの歴史をたどりながら論じている。