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カチンの森で多数のポーランド将校らの遺体が発見された「カチンの森虐殺事件」。戦中戦後とおしてナチス・ドイツの仕業だと言われ続けてきたこの事件だが、あらゆる資料や証言に当たることことで、「真犯人はソ連ではないのか?」という真相を暴こうとする。
事件の発覚から、真相を突き詰めていく過程がスリリングで、ぐいぐい読めた。1962年に出版され63年に邦訳された『カティンの森の夜と霧』の改訂版なので、この訳の中ではまだ真相は明らかにされない。しかし本改訂版が出るまでの50年のあいだにソ連が崩壊し、ロシア政府がソ連秘密警察の犯行だったと認めたので、63年版の邦訳から50年の間に明らかになったことが解説として最後に付記されています。劇的だなぁ。
国家権力・国家間の利害が働くと、何万人もの虐殺事件の真相もひっくり返ってしまうという恐ろしさ…。でも逆に考えると、どんなに国家ぐるみで真相を隠そうとしても必ずほころびがあり、誰かがその気になれば真相はいつか暴かれるんだ、とも言えるのかも。
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戦争犯罪人に対するニュルンベルグの公開裁判はカチンの森の犯人が究明されることもなく、処罰されうzにその幕を下ろそうとした。そしてそれに対してソ連政府からもポーランド共産主義政権からも、何の抗議もなかった。
カチンの森で殺された将校や失踪した人々はポーランド社会の精鋭だった。大学教授、医師、科学者、芸術家など。
思想強化は全体として失敗に終わった。ポーランド人には祖国への強い義務感、名誉など独自の価値観があった。
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まだソ連がカチン事件はドイツの犯罪だと主張していた時期に、様々な調査によって得られた真実をこうして書籍化したのは、すごいことだと思う。
国がつくウソ、その許されざる行為に、真っ向から対峙していった勇気ある書籍。
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面白かった、と感想を書くと不謹慎かな。
カチンの森虐殺事件、
以前読んだザフスラフキー氏の「カチンの森」より、ミステリアスで緊迫感があり、著者はアメリカに住んではいたが、ソビエト連邦がまだ崩壊していない時に、西側にある情報のみで書かれた。
ドイツ、ソビエト、イギリス、アメリカ、ポーランド、各国の思惑が入り乱れ、ソビエト崩壊以前は、事実は有耶無耶にされていた。
ソビエトは、ニュルンベルク裁判でドイツ人を裁こうとして事実を捻じ曲げた調書を作成したり、証言者を脅し、嘘をつかせたり。
矛盾点が多く、指摘される点が多かったためソビエトは自滅した。
ニュルンベルクで裁かれなかったのは、良かったが、
ソビエトは裁かれていない。
ボリシェヴィズムの考えでは、ブルジョア階級である将校は絶滅させなければならない、階級を無くそうとして階級制度を補強してしまった、ボリシェヴィズムの矛盾点をまた露呈させてしまった。
ゆくゆくは、ボリシェヴィズムを追究したがためソビエト連邦を崩壊させてしまった一献ではあるが、間の抜けた話だ。
ボリシェヴィズムは、共産主義者でもレーニン率いる党幹部の思想、
それが元々間違っていたのだろう。
誇り高き愛国者で自らの身をもって国を護ろうとされた無辜のポーランド将校たち。
彼らがもし処刑されていなければ、戦後ポーランドは共産圏にはならなかったし、他の東欧諸国の運命も変わったし、朝鮮戦争で中国に捕らえられたアメリカ兵も無事に帰国できたが、この事件が起きたがため、中国、ソビエトの捕虜になったアメリカ人将校たちも洗脳されるか、殺されることもなかった。
アメリカ兵捕虜の死亡率は、第二次世界大戦では、1.8%。
朝鮮戦争では、約31%。
アメリカやイギリスは、第二次世界大戦中に自国の捕虜にを虐殺したドイツ人は徹底的に追及し処刑したが、1万5000人ものポーランド将校たちを虐殺したソビエトの罪は追及しなかった。
逆に事実を消そうとした。
さあて、ナチスがしたこととソビエトがしたことの差はなんだろう?
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どんなてをつくしたスリラーより、こんな怖い話があるだろうか。
1人殺しても、刑法で裁かれる世の中と信じて来たのに、国の法体制の中で整然と歴然と25000人の将校、知識階級を殺害した加害者たちは国の熱い保護の下で栄誉を受けた。
西側の証言のみで記されたこの凄い記録、1962年当時のモノだが、今では陽の目を見る事件として知られている。
カチンの森で9層にも12層にも重ねて「処理された」屍体に口がないから真実は何処までもソ連のみが握ったまま。。このままで終えていいのか、ナチス・ヒトラーが為したドイツの所業の行為は広く世に知られて今も解明が進められている・・が数こそ、殺されたユダヤ、ジプシーの数より少ないといえ、内容は隠されたままで許されるものでは決してない。
それが今もウクライナ侵攻を「正義の元」の嘘とプロパガンダで塗り固められた旗印の下で堂々と展開している・・しかも国際連合では常任理事国すら降りようとはしない。
子供に正義を教えられないのが地球か・・暫く、いや永久に心が凍ってしまいそうだ。
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5月に同じくみすず書房から本書の解説を書かれている根岸隆夫氏の『カチンの森』が出版されて、この時期(ロシアのウクライナ侵攻)だからか、と思った。
ナチスドイツに英仏が宥和政策をとったようにソ連の虐殺行為にも連合国側は目を瞑ったわけで、戦争中に起こる出来事に直面したら、敵でも味方でもまず誰も助けてはくれないと思ったほうがよいのだろうな。
どっちが良い者でどっちが悪者で、とかではなくとにかく戦争はしてはいけない。それだけ。