紙の本
聖書について知る
2023/04/28 12:42
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
池澤夏樹とその遠い親類に当たる神学者の秋吉輝雄の対談。秋吉氏はおそらくクリスチャンとしての正統派ではなく異端に属するような存在だったろう。論調はくだけていて肩肘張らず語っている。池澤夏樹自身も無神論者なのか、聖書という特別な書物についてユダヤ教からどう発生して受け入れたれたかを自由に語る。キリスト教にそれほどなじみない一般の読者でも興味深く読んでいけると思う。
紙の本
言葉と時間
2023/04/26 11:56
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投稿者:ダタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
基礎的な知識が殆んど無い
ところから読み始めたので、
調べ調べになりましたが
平易な文章のおかげで
肩肘張らず面白く読めました。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、
どんな言語を話し、書き記すかによって、
時間の捉え方には違いが生じる
ということが新鮮でした。
聖書を切り口に、
三つの宗教の成り立ちや関係について
大枠を捉えることが出来ると思います。
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主としてキリスト教の基礎的な知識がないと、話されている内容の理解は難しいかもしれない。どちらかというと、初心者向けではない。
ヘブライ語には過去形がなく、それゆえに「中近東を考えるときには、ギリシャ・ヨーロッパ流の縦の歴史を横にして考えるといい」(p.34)という考えは目からウロコであった。なるほど、そう考えれば、現代のイスラエルとパレスチナやアラブ諸国との紛争も別の見方ができる。
そういった意味では、本書はキリスト教やユダヤ教といった宗教学だけの対談集ではない。非常に(難しいけど)勉強になる一冊である。
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キリスト教の中の人、池澤夏樹氏と聖書文献学者による対談。
『ふしキリ』と違って、中の人なので、濃い話というか、歴史的背景について詳しい話をされていて、ユダヤ人とはということに認識を深めることが出来た。
聖書も改めて、成り立ちに際して、紆余曲折を経ていることを認識し、正典以外にも文献があることや、翻訳に際して誤訳が一般化してしまったことなどが、面白いと思った。
現在ならば、さしづめ国際的公用語として流通している英語訳で意訳したら、実は誤訳だったみたいな。だけど、それが新たな信仰内容を加えて広まっちゃって、今更、覆せないから、ま、いっか…みたいな話。
そんあこともありながら、そんなことも含みながら、異端徹底的に排除した時期もありながらも、懐深いキリスト教が成立して、世界に広まった。
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◇朗誦と表、スクロールとコデックス、線と表、二種類のテクスト。後者の果てがウィキペディア。断片。
◇ヘブライ語には母音がない。
◇ヘブライ・ユダヤ→ヘレニズム→キリスト・ギリシャ。
◇ヘブライ語には過去形がない。「神は言った」ではなく「言っている」。ユダヤはむしろイスラムに近い。
◇「汝の隣人を愛せ」ではなく「汝のような隣人を愛せ」。まずは身内を。
◇多くある聖書の聖典化。
◇原罪=生きるべく造られていたにもかかわらず、死を選んでしまった。
◇ユダヤ人は徹頭徹尾現実的な考え方。
◇ダビデ。
◇多くの異説を並列して、仮に全部受け取る。融通性。
◇ユダヤ人=知的システムに乗っているかどうか。
◇兄弟の盃を交わす。
などなど。勉強になった。特に第1部の聖書の成り立ちが。
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欧州の美術館や教会などで日常的に素晴らしい作品に触れる度に、それがキリスト教及びヘレニズム思想・文化の計り知れない影響下にあることを認識することになります。そしてしげしげと自分なりの勉強を始め、じわじわと面白くなっていくわけです。が、それでも現代アートの鑑賞や皆との興味深い談論において、想像以上に根本的にそれらがこの地で浸透しているのに遭遇する時、知識としてこちらも色々調べて理解しているにも関わらず「共有出来ていない」という焦れったさを強く感じることになります。
現代欧州の日常の議論は、常に本書で言うところのヘレニズムの立場で矛盾を整理していく形であり、「正しいか否か」で清算していくため往々にして一般論・概論になりがちで、妙に苛立ちを感じたりするのです(日本人という背景故なのかもしれませんが・・・)。なので、過去形がないという古代ヘブライの「多くの異説を並列して仮に全部受け取るという多元的な価値観・融通性」という立場は大変新鮮で、妙に納得できました。
その辺の自分でも説明できなかったもどかしい部分を問題提議からして頂ける嬉しい本です。興味深いタイトルによって区切ってある現代風「コデックス(冊子)」本ですが、お二人の流れるような会話が一本の線となる「スクロール(巻物)」を思わせ、意外にもどんどん進んで行きます。
もちろん一度読んだだけでは頭に入らない箇所も随所あり、今後何度も手に取って自分の頭の中に少しずつ蓄積していく作業が必要だと思っています。
あとがきの一番最後に「それぞれの哲学的思考に役立てていただけると嬉しい」という一文がありますが、正に、このように新しい知識を与えて頂いた後、今度は自分の言葉で組み立てて疑問を提示してみよう、と思わせられる本でした。
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詩人・小説家の池澤夏樹と秋吉輝雄の聖書にまつわる対談本。
これもまた、タイトルと目次から気軽に手に取ってしまったが、そもそも聖書の知識がなければ楽しめないと感じた。
なので、あるときは調べながら、あるときは文字を追うだけとなってしまった。
旧約と新訳の聖書について、そして歴史や言語、聖書の解釈について・・・幅広く話が展開されている。
聖書について、道徳的で納得できる部分だけではなくて、むしろ矛盾や受け入れがたい内容、解釈の難しい内容についても論じられていて勉強になった。
しかし、自分にベースとなる知識が足りないのを実感。
それぞれの部(第1部〜第3部)の中に、20〜30の少項目があるので、分かりやすいところからまた再読してみたいと思う。
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【内容紹介】
「聖母マリアは処女ではなかった」「最後の晩餐でイエスが飲んだのはワインではない」など、パリ在住の池澤夏樹氏が従兄弟である聖書学の泰斗・秋吉輝雄氏と語り尽くした目からウロコの聖書・キリスト教の姿。
【内容(「BOOK」データベースより)】
秋吉輝雄教授(聖書学)との対話。「ぼくにとって宗教は知識だ。素人代表として、ぼくは碩学の門を叩いた」。その成り立ちから現代社会との関わりまで、いま、人類最大のベストセラーを読みほどく。
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【目次】
第1部 聖書とは何か?
・聖書はなぜ今日まで残ったのか?
・朗誦によって聖性が保たれた
・ヘブライ語には過去形がない
ほか
第2部 ユダヤ人とは何者か?
・ユダヤ人の定義とは?
・ユダヤ人教師としてのイエス
・世界宗教へと向かったキリスト教
ほか
第3部 聖書と現代社会
・「六日戦争」に遭遇して
・無時間の空間で対立するイスラエルとパレスチナ
・軍備放棄の思想に共感した「ビールー団」
ほか
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ここまで平易に語られた聖書とユダヤ人の歴史はないのではなかろうか。そして色々示唆に富む。とても面白かった。
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やはりその道のプロはいいですなあ。池澤さんのツッコミに響くような秋吉さんの返し。聖書が違うものに見えてきました。
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思わず「へぇ~」と言いたくなる本。
聖書って変に神秘的なイメージがあり、近寄りがたいと感じていたが、
ここまで世俗的(?)にして頂けると親近感がわくね。
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作家池澤夏樹氏と宗教研究者である秋吉輝雄氏による、『聖書』をテーマとした対談。かなり大雑把に言うと旧約はユダヤ教、新約はキリスト教の聖典で、旧約は39の文書、新約だと27の文書をまとめたものを聖書と呼ぶらしい。
宗教に全く予備知識がない自分にとっては、少々難しい内容も多かったが、安息日に喫煙するための裏ワザなど、気軽に読めるエピソードもあり面白かった。豚肉を食べるか食べないか、割礼をやるかやらないか、布教活動をするしないなど、それぞれの違いについても解説されている。
今まで聖書とは、単に個人の拠り所的なものだと思っていたが、それは歴史書であり、教科書であり、遵守すべき決まりである事。信仰する人々にとっては、生活の土台であり、ある意味国境でもあるのだと知ることができた。
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原罪とは。アダム、リリス、エヴァ。アダムの前に人はいたか。キリスト教と資本主義。個人名ユダと民族名ユダヤは無関係でキリスト教徒は、わざと混同し罪をユダヤ人にかぶせた…等々知の好奇心を刺激する。
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まずは聖書といっても旧約聖書と新約聖書があるが、主に旧約聖書についてのお話である。そして、それゆえキリスト教というよりもユダヤ教の話が多いようにも思うが、ユダヤ教の話として、とても面白い。そもそも旧約聖書自体が、その年代に比してあまりにも記録が残りすぎている、ちょっと異常なものだと言えるし、そこに残る思想が我々のような日本人から見て意外・想定外なものが多い。ヘブライ語には時制がないというのはその代表的なものだろう。
そのわかりにくいユダヤ教を、対談形式でわかりやすく伝えてくれるありがたい本だと思う。