投稿元:
レビューを見る
『世界は目に見えるものだけでできているのではない』という言葉は、ホントによかった。
是枝裕和は雑誌QickJapanのインタビューでは3.11の放射能のことにも触れていたけど、いろんな意味があって、書きたくなりました。
ざっくり言うと、以下の5つなんだけど。
①文学的解釈
人の想いとか、家族や親しい人との間にある気持ちとか、ちょっと想像したりすることとか、そんなことです。
②現代思想的解釈
世界は人が認識することで存在するというか、構成される、みたいなことです。
③脳認知学的解釈
自由意思とか意識とか、今はその存在が疑問視されているけど、人の「心」みたいなことです。
④社会学的解釈
制度や法律とかではなくて、ホントに政治や経済、社会を動かしているシステムというかパワーみたいなことです。
⑤物理学的解釈
量子論における未発見のモノや宇宙論での暗黒物質のことなどです。
今回はドラマ「ゴーイングマイホーム」を観て、最終回翌日に刊行されたシナリオも読んだ。そのシナリオに是枝裕和が「あとがき」を書いているんだけど、今回の「連ドラ」としての作品への想いを語っている。
久しぶりにすごくいいドラマだったので、今回はとりあえず「その1」として書きます。
ひと言で言ってしまうと、このドラマは「人の気持ち」に溢れていました。
夫婦の間、親と子の間、ふとしたことから知り合いになった人と人との間などにある、「ささやか」だったり「さりげない」だったり「ちょっと奥にしまわれていた」いろんな『人の想い』がたくさん描かれていました。絶妙でリアリティのあるセリフや立ち振る舞いで、「あぁ、そういうことなだぁ」って思うことばかりです。
基軸としては良多の父親に対する想いをメインに進んでいくんだけど、妻である沙江の夫への気遣いとか思いやりとか、とにかく多くの出演者たちの「人への暖かな気持ち」が出てきます。単に「愛している」という言葉では表現しきれないような、近しい人を大切に思う気持ちや慈しむ気持ちが様々なシーンで感じられます。
死んだからっていなくなってしまうわけではない。
良多は亡くなった父親の記憶のひとつとして「手触り」を感じます。老人の男性が亡くなった妻の思い出として入れ歯の型をもらいに来ます。存在が目に見えなくなったとしても、そこに、何らかのエネルギーみたいなものが残っています。
娘の萌江が第1回で「フロド」という単語を出すんだけど、いきなりハイ・ファンタジ-小説(異世界で展開する物語)であるロードオブザリングの話題なわけで、その後のクーナの話に続くことになります。また、ごんぎつねの話も出てきます。
E=MC2という物理学の公式があります。物質とエネルギーの等価性を表しているんだけど、物質が物質でなくなる際にエネルギーが放出されます。そのエネルギーはもちろん拡散してしまうかもしれないけど、この世界のどこかに、総量としては消えずに存在しているわけです。それが、ある瞬間にある一点に集積して物質化するかもしれません。それは物理学的には不可逆性の問題で、ありえないことかも��れないんだけど、でも、僕らの可視光線周波数帯の外側もしれないし、ほんの一瞬の出来事かもしれないし、また、僕らの観察できる大きさよりもっと極小の素粒子以下のサイズかもしれません。
だから、サンタクロースはいるかもしれない、いや、いたらいいなっと思って、クリスマスイブにアップします。
信じる人にしか見えない、というのは、言い換えれば、そういう暖かなモノゴトを信じることの大切さ、だと思います。