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「流行について考える」
“本当の美しさ”を発信し続けてきたイラストレーターで人形作家の中原淳一さん。今年生誕100年を迎えました。今日はかのかたの“幸せになる言葉”から「流行について」の話題をお届けします。時を経てなお読み継がれる、言葉の美しさが印象的です。
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流行というものは一体誰が創り出したものか、そうして何故必要なのだろうかということについて、何か疑問を持ったことがおありでしょうか。
もし私たちの生活に流行などというものがなかったら、現在のように物の不足している時代には、かえって暮しよいことだとも考えられますが、人間は同じものが永く続くことに飽きてくるもので、特に私たちの生活にはなくてはならない服装の中に、変化や新鮮さを求める感情が強いのです。
そんな場合に流行というものがなかったら、何をその新しさの標準にしたらよいか判らないことになりますが、何時の時代においても、その時代の世の中の状態に沿いながら、求められている新しさとか変化とかいうものが、自然に生まれてくるもので、つまりその時代の変化の対象とか標準とかが流行なのであります。「それいゆ」NO.5 昭和22年
~『中原淳一の世界 幸せになる言葉』(ひまわりや 監修)より抜粋
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「美しい心の人は一日では生まれない」
“本当の美しさ”を発信し続けてきたイラストレーターで人形作家の中原淳一さん。今年生誕100年を迎えました。今日はかのかたの“幸せになる言葉”からひとつ、お話をお届けします。
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いい人の心から出た行いと、いい行いをするのとは違うことです。
あまり心のよくない少女が、今日はいい子になりましょうといって、その日は勉強もしたし、小さい子たちに親切にしてあげた、お母さまのお手伝いもよくした等といっても、それはいい行いをその日だけしたというだけで、いい人のする行いを真似したことにはなっても、その心がその日からいれ替ったのではありません。
いい人というのはそういうことが自然に心からできる人のことをいうので、それにはこういう人になりたいということをいつも忘れないでいると、それがいつの間にかその人の肌のように身についてしまうものです。
けれども、一度できあがったものをくずしてしまうのは簡単です。
例えば、美しい花の咲く庭の門でも、はさみもいれないでそのままにしておいたら、すぐ形もくずれてしまい、また枯れてしまうかもしれません。
光った廊下も、拭くことを怠けたり、その上で乱暴に子供たちが遊んだりしたら、一日か二日でまないたのようになってしまうでしょう。
美しくありたいと思ったら、美しくなってからでもなおみがくことを忘れてはならないものです。毎日のあなたの生活は、美しい心の人になるように心がける毎日に致しましょう。誰でも美しい心の人にはなりたいものです。それは人が喜ぶからというだけではなくて、あなた自身の幸福なのですから。
あなたたち少女時代に、そういうことを忘れたり、怠けたり、また気がつかないでいたら、あなたが本当の幸福な大人にはなれないのだということを忘れないで下さい。「ひまわり」昭和25年2月号
~『中原淳一の世界 幸せになる言葉』(ひまわりや 監修)より抜粋