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散文でつづる私の生活句集と銘打たれた、出久根達郎さんのエッセイ集。
日々の暮らしのそこかしこに、小さな季節は転がっている。
と紹介されているように、生活の中の文章が心地よいです。
何気ない普通の暮らしが書かれていていて、自分の遠縁の親戚の叔父さんの話を聞いているようです。ユーモアがあって、真っ当で、読んでいて安心します。
最近のものでは、迫りくる老いについて書かれていたり、大震災後の日々について書かれていたりもします。
短いエッセイには、したためられていない言葉や気持ちがたくさん詰まっていると感じました。
「立春出世」がいちばん好きです。
上野雑踏で、中学の同級生に偶然遭ったことの話。
卒業して50年になるその歳月や同窓会、友との会話、昔の思い出などが流れるように立ち現れてくる文章。たった4ページの間に心がぐらりと揺さぶられました。
さりげないけれど誰にでも書けるものではないと思います。
すごい作家さんです。
直木賞作品、いつかは読まねば!
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著者の回顧すべてを自分の想い出には重ねられない。それなのに読んでいて懐かしい。父母から語り継がれたこともあるし、子供時分にはそれなりの名残があった。空調なんぞなく、四季を感じて暮らした昭和の時代。あのころの心の温もりが伝わってくる。
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流れるような語り口で、穏やかな、出久根達郎さんの文章が無性に読みたくなり、本屋さんで探すが置いていなかった。ネット書店で検索すると、ずらりと並ぶ。立ち読みはできないが、一冊を選び、送ってもらった。
『隅っこの四季』
大震災前後の時期の、作者の心が置かれた日常が、書かれている。ご夫婦睦まじく生活されている風景は、なにやら懐かしさが感じられ、読むほどに落ち着いた心持になってゆく。
短い一節に豊かな風景が読み込まれていく、随筆集でした。
おりしも、日本縦断こころ旅では、71歳の方の5歳の頃の思い出が書かれたお手紙に、『私の二度と戻れぬ宝石のような風景です』と書かれていた。通じるところがあると感じた。