投稿元:
レビューを見る
※自分用メモ
【出会い】
書店店頭にて。
本邦アフリカ研究の第一人者の新刊であり、直近のアフリカの状況を捉えたもののようだったので即買い。
【概要】
帯の紹介文より
「アフリカを「援助」する時代は終わった。新興国をはじめ、世界中がすさマジ勢いで食糧、石油やレアアースといった鉱物資源を呑み込んでいく現代。これらの需要に対する供給源として、アフリカの重要性は突出している。いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか―。広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。」
【感想】
書名にはアフリカと冠せられているが、本書で論じられている話題はアフリカのみにとどまらず、その意味では控えめでもったいないタイトルと言えるかもしれない。
次のような人には、間違いなく本書は一読してみる価値があるものだと思う。
・新興国ビジネス、進出に関心のある人(アフリカに限らず)
・BOPビジネス、CSR活動に関心のある人
・アフリカに関心がある人
・国際開発、援助に関心がある人(実務者含め)
上記の概要に引用した紹介文のような認識は、そもそも日本においてどれほど一般的なものだろうか。
いまアフリカは経済環境の変化と、それに連動したグローバルなアクターとの関係の変化の、大きなうねりの中にある。
本書は多くの国からなるアフリカをあえてひとつの集合体として(サブサハラ・アフリカとして)、従来の地域研究的にアフリカ自体の視点から語るのではなく、アフリカの外からの視点でアフリカ像に接近しようとしている。
外からの視点とは、つまり急激にアフリカ投資をのばす中国の政府・企業であり、これまで援助を行ってきた先進諸国であり、またアフリカで活動するグローバル企業である。
このアプローチが本書ではきわめて有効に機能しているが、それは、現下のアフリカ経済が内発的要因というより、外からの投資行動によって大きく動いているからである。
この現象は、これまで長らく停滞してきたアフリカ経済を考えると劇的な変化であり、それによっていま、アフリカだけでなく外からアフリカに関わる開発援助の出し手や企業にとっても、ある意味パラダイムシフトが迫られていると言ってよい。
つまり、本書で扱われているのはひろくグローバル経済と福祉の理念に訪れている転機についてなのである。
アフリカ経済というスクリーンに写されたグローバルイシュー(資源、食糧、貧困、安全保障など)について、本書ではマクロ経済、開発・援助論、企業経営、国際政治・外交などの概念を用いつつ、広範かつ丁寧に解説している。
経済成長、開発援助、中国進出などの話題についてはともするとべき論になりがちだが、本書の視点はフラットであり、現状について事実に基づいた的確な洞察がなされている。
これまでアフリカ経済について論じてきた著者の出版物と比較しても、面目躍如たるものがある。
とても1000円もしない新書とは思えな��濃密な内容となっている。
極論すれば、マクロでみたアフリカの経済成長は資源の高騰という変数の変化で実現してしまっているのが本書での指摘だ。
従来ドナーや草の根での試行錯誤はいとも簡単に飛び越えて、である。
私(レビュアー)自身、アフリカを舞台にした開発事業に携わる身なので、本書の内容はいろいろな意味で「刺激的」である。
実際、訪問した国々では中国や外国企業の動きの活発さ、そしてそれと比較した現地のボトムラインとのギャップは、大いに肌で感じるところである。
また、先進国援助の意義やあり方については、直に考えさせられている。
現場で開発に携わる身として、対象とする経済・社会を変える要因と構造について、無知なまま突進していくドンキホーテであるべきではないだろう。(これは、草の根レベルであってもそうではないか。)
その構造自体は、一援助国や一企業のコントロールが及ぶところではないかもしれない。
ただ、そうであっても所与のシステムの中でアフリカとそれに関わる主体が相互利益を生むため、なしうることについては多くのヒントが本書にはちりばめられていた。
この良書が、新たな対アフリカ指針の構築やアクションに踏み出すための議論の契機となることを、一読者として祈る。
グローバル経済の潮流と、それを取り巻く課題とそれを止揚する場として最前線にあるアフリカ。
だからこそ、そこでの活動はこの上なくエキサイティングなのである。
投稿元:
レビューを見る
中国人がアフリカには100万人以上いる。
1999年には5万人程度だった。
アフリカよりアジア投資が多いのは当たり前。アフリカ全部でインドと同じ程度。韓国のGDPがサブサハラ。インドネシアのGDPは北アフリカ。
アフリカ人は大陸内に限らず世界に拡散している。
投稿元:
レビューを見る
アフリカといえば資源……ということで、まずはその資源を求めてアフリカに接近する中国の動向に触れた上で、アフリカの政治経済の現状と課題を示す本。「日本はアフリカにどう接するべきか」という観点から書かれた問題提起の本でもある。
投稿元:
レビューを見る
非常に面白い。2000年以降に大きな変化を遂げたアフリカの姿を通して、逆に日本が今置かれている状況がよく理解できる。
投稿元:
レビューを見る
アフリカを知ろうとしたら、いきなり中国のアフリカ攻勢からはじまる。
著者は、『この地球上に「遠い」といえるところなどもうない。どのような関係を望むかという尺度しかない』という。
僕はこの言葉に大きな違和感を持ったが、それはアフリカという本当に距離が遠い場所であることに加え、文化的背景に全然理解が出来ないことがあるのだと思う。その程度の認識で本書にあたってみると、目から鱗である。援助でも搾取でもない、あたらしい国の関係を、健全なナショナリズムを持ちつつ、他者の利益も考える、というのがこれからの立場。アフリカ側の言い分が日本語で読めたらどんなかな、と興味を持った。
投稿元:
レビューを見る
最近話題の,中国によるアフリカ進出を第一章で解説。経済成長盛んなアフリカの全貌をグローバルな視点で描ききっている。開発援助の様変わりや,格差の拡大,前近代的農業から脱却できず食糧自給が絶望的な現状についても詳しい。
今世紀に入ってのアフリカ成長の要因は,資源価格の高騰にある。その張本人たる中国がいち早くアフリカ経済に食い込んでいったのは必然だったんだろう。高学歴の人材を安く使えるという中国企業のメリットも大いにそれを後押し。この間日揮がテロ犠牲者を出して大きく報じられたが,中国人企業も当然,何年も前から武装集団に襲撃を受けている。
貧困,格差の蔓延が続くなか,アフリカ現地では外資によるBOPビジネスが好調のようだ。ただ行政が弱体なため,進出企業による住民への公的なケアが必要な場合が多く,いわば「拡大CSR」が求められている。公共サービスを代替することで,投資地域の安寧を確保する防衛策。アフリカでの持続的ビジネスにはこういった配慮が欠かせない。
投稿元:
レビューを見る
読みはじめて間もなく、いきなり中国批判的な感じで始まる。
もしや最後までこの感じなのかと思いきや、中盤辺りからはこれまでの歴史になるのでちょっと一安心。笑。
最後のフロンティアとも言われるくらいで、そしてアフリカ政策のことも少しは理解できたので読んでおいて損はないと思う。
投稿元:
レビューを見る
「そもそもアジアとアフリカとでは経済規模も人口規模も桁が違う」
アフリカの土地は農業に適さない。
アフリカ全体のGDP、インドのGDP、ほぼ同じ。
中国の人口>アフリカの人口
投稿元:
レビューを見る
資源高から資源輸出国として莫大な投資を集め発展するアフリカが抱える様々な問題点から、国家に置ける経済成長とは何か、が浮かび上がる。
「農業の低開発が結果として工業化を阻止する」というくだりは、以前読んだ『銃・病原菌・鉄』で描かれいた人の群れが国家に変わっていく過程を踏まえて考えると興味深い。
投稿元:
レビューを見る
アルジェリアで起きたテロで邦人が犠牲になったという痛ましいニュースは記憶に新しいけれど、多くの日本人にとってアフリカはまだまだ遠い大陸だろう。まして、その経済構造を知る人はビジネスマンでも少ないのではないか。
本書によると、アフリカの賃金水準は、東南アジア諸国よりも割高であり、これが発展を阻害しているのだという。これは、いわゆる「開発なき成長」のためで、資源産出による収入に依存する国々特有の傾向であるという。
詳しくは述べないが、地域毎に異なる経済構造を理解するうえで必要な視点がわかりやすく解説されており、特にアフリカに特別関心がなくても、一読に値すると感じた。
投稿元:
レビューを見る
<総評>
本書は、アフリカの「リアリティ」を客観的なマクロデータにもとづいて浮かび上がらせている。開発経済の専門的リテラシー(高度な計量経済・統計分析を用いなくても)を用いずにここまでアフリカ(そして世界の)開発問題の全体像を、えぐりだした筆者の力量は素晴らしい。アフリカの開発が低調だった時期から一貫して現地に駐在してきた平野氏だからこそ書けた内容かもしれない。
マルサスの人口論や、(単にそう労働人口や労働単価だけでなく)人的資本の観点における東アジア・南アジア・アフリカの比較、(ただでさえアフリカの土地は肥沃度が低いのみ)気候変動によってアフリカが被る被害などについても、触れてあるとより多面的な議論になったかもしれない。一方で、これまでの国際開発のアプローチがほとんど効果を上げられなかったアフリカにおいて、資源高を背景にした中国のビジネス=援助ミックスの展開によって地殻変動を従来では考えられないスピードで起こしている、という本筋がブレずに簡潔にまとまっていると思う。
<各論>
◆第1章 中国のアフリカ攻勢
・将来の資源需要を見込んで、アフリカにビジネス=援助ミックスを早くから展開していった中国のブレーンの慧眼は見を見張るものがある。
・現地雇用が少ないのは、アフリカの「高賃金体質」という指摘は鋭い。
◆第2章 資源開発がアフリカを変える
・資源価格が高止まりするようになったことが、中国のアフリカ進出を進め、アフリカの開発に変化をもたらしたのであれば、それは先進国の成熟と(民主化を契機とする)中国の消費増大によって、原油および鉄・レアメタル等の資源の需要増大することが必要条件だったのかもしれない。
◆第3章 食料安全保障をおびやかす震源地
・ジンバブエからザンビアに移った白人農家達がもたらしたアフリカにおける緑の革命が、全体として肥沃度の低い他のアフリカ全体に広まるのかは疑問。
・アメリカのシェールガス産出によって、バイオエタノール用のメイズの需要が下がったことで、しばらくは穀物価格は下がるはずであり、自給率やや高まる余裕のある間にサブサハラ各国が資源で得た外貨をいかに自国の農業生産性向上に活かせるかがカギ。
◆第4章 試行錯誤をくりかえしてきた国際開発
・欧米ドナーにとって、ODAの目的は「国益の追求」であるから、ODA大国でなくなった今日本も国益を追求するのは当たり前だ、という意見は近年よく見られる。その意味で、英、仏、米の援助の起源や国際機関が自己の存在意義の証明のために理念を後から理論武装のために発明したとの記述は、は目から鱗。また、日本の経済協力も今考えれば、現在の中国的な発想を当時の官僚が持ち合わせていたことに驚いた。(単に戦後賠償として認識していなかった。)
・ドイツGTZと日本JICAは、ODAの中で技術協力(人づくり)に相対的にかなりの予算を割いて来た。それは、民間ベースの技術移転だけでなく、法制度・現場のノウハウのようなものもOJTベースで様々なプロジェクトで伝えられてきた。(キャパシティ・ディベロップメントという言葉は欧米で発明される前から日独は実��してきた)この定量的な効果を学術的に論じることは難しいが、その東アジアの開発への貢献は大きかったのではないか。
※第5章、第6章追記予定。
投稿元:
レビューを見る
基本アフリカと言うと、サハラ砂漠以南のアフリカ(=サブサハラアフリカ)を指し、本書もサブサハラアフリカを対象にした本です。流し読みで読みましたが、内容的には濃い内容でした。ただ、ちょっと文章がお堅いので、読みづらい所が難点です。著者はアフリカ問題はもちろん、発展途上国全般やODA問題、資源問題にも造詣が深く、他のアフリカ本とはまた違った観点からアフリカを知ることができる興味深い内容です。
特にODAに関する世界各国のスタンスやその経緯や、他の書籍では、中国の対アフリカ政策にネガティブな意見が多い中で、中国にポジティブなスタンスを取っている所が新鮮でした。そしてなぜポジティブなのかは実に説得力のある論調。私も中国ポジティブ論に共鳴しました。
投稿元:
レビューを見る
アフリカにおける最大の発展障害は国境だ。アフリカ大陸には55もの国が存在し、国境線が細かく錯綜していて、ひとつひとつの国家の規模はとても小さい。人口1000万人以下の国が27、GDP規模が100億ドル以下の国が29もあり、日本では栃木県宇都宮市ほどの規模だ。したがって、アフリカで成長する企業は、必然的に国境を超えていくこととなる。
グローバリゼーションが進行すると政府と企業の力関係がかわっていく。政府はその定義からして国境を越えることができない。グローバリゼーションを進めているのは、そこから利益をえている企業であり、世界競争で勝ち残るグローバル企業の力はグローバリゼーションの進行と共に大きくなっていく。アフリカがグローバライズされたということは、アフリカの経済の主役が企業になったということだ。
東アジアでは「他国より豊かになる」ことを目標にかかげた競争思考の強い政権のもとで開発が進められ、それが最も経済発展に成功した。つまりナショナリズムこそが開発のエネルギーになったのである。p151
自国のために働くということは、利己主義ではない。健全なナショナリズムを持たない人間はどこでも尊重されない。ただ、自らのために働くことが途上国の利益にもなるという事業を設計することが、グローバルプレーヤーにも求められるのである。アフリカと日本との関係は、そういった知恵によって構成されなければならない。それは開発の基本でもある。 p280
途上国開発がいかに崇高な理念だとしても、開発の主体はあくまで途上国の国民であって、その国家でなければならない。 p151
南アフリカの製造業の平均賃金はチェコよりも高く、セネガルは中国やフィリピンよりも高い。ケニアはタイより高いし、ウガンダやガーナはインドネシアより高い。経済発展の水準が低いにもかかわらずこれだけ賃金が高いと、労働力をあてにした投資は入ってこない。アジアの投資誘因である易くて豊富な労働力、がアフリカには存在しないのである。 低開発とは、高コストであることも意味している。脆弱な生産力しか持たない国は、輸入に頼るため、概して物価が高くなる。国民の大多数を占める農民が都市経済から切り離されているので、都市の賃金水準と農民の所得水準の間に生まれる格差を縮小するメカニズムが働かないのである。
アフリカはその食料生産力から見て、その都市化率が過剰だといえる。あるいは都市化率からみて食料生産力が異常に低い。農業生産の停滞が穀物輸入の増大をもたらしている。サブサハラアフリカ諸国の穀物輸入を合計すると、その量は世界最大の輸入国日本を凌駕している。 これが意味していることは恐ろしい。アフリカの都市化がこのまま進行してしかも都市人口を飢えさせないためには、アフリカは穀物輸入を拡大しつづけなければならない。もしアフリカの購買力が不足すれば、世界はその分食糧援助を提供しなければならないのである。まさに底なしの援助だ。アフリカにおける人口増加と都市化の進行が必然的にもたらす食料依存は、世界の穀物生産にのしかかる。
通常は経済成長に伴って都市人口が増え、歳の購買力が上がっていけばそれだけ食料支出が拡大して農産物が買われ、それが農村部の所得になる。その所得が生産性向上によって減少した農村人口の間で分配されるから、農民の所得水準が上がっていく。欧米ではおおよそ、農民のほうが製造業の労働者より高所得だ。経済成長の成果が都市と農村を循環して農民に裨益する経路がこれだが、アフリカではこの経路が閉ざされている。したがって、アフリカでは経済成長しても、貧困人口が全く減らない。
世界で最もジニ係数が高いナミビアはウランやダイヤモンドの産出国で、既に0.7を超えている。南アフリカは2010年の最新のジニ係数を0.72と発表したが、これが本当なら世界新記録だ。暴動を誘発する可能性が高い危険値が0.4とされているから、0.7というのは通常の社会常識では考えられない数字である。 資源産業はそれほど多くの雇用を生まないので、経済成長の果実が社会に広く裨益しない。経済成長と共に完全雇用が実現して成長の果実があまねく配分されていく製造業依存の東アジアとはこの点が全く違っている。アジアでは経済が成長するにつれてジニ係数が下がっていくが、資源国の場合は上がっていく。
資源輸出で貿易黒字が拡大し、国内通貨の為替が割高になって輸出競争力を低下させる。資金や労働力などの国内生産要素が資源部門に偏って投入されることにより製造業が育たない。更に資源高がもたらすたなぼたの収入が財政規律を狂わせる。かつて天然ガスの輸出国であったオランダの経済が、天然ガスの価格が低落しはじめると、財政赤字が拡大して危機に陥った。これを「オランダ病」という。
投稿元:
レビューを見る
的外れな中国批判の説明を二度読みしてしまった。農業の低開発は工業化を阻止する、のくだりは三度読みしてしまった。
投稿元:
レビューを見る
資源、食料(肥料)、21世紀の抱える課題からアフリカ経済の発展に先進~新興国の期待が集まる。各国の思惑が絡んだ世界経済のからくりがとても興味深い。