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紙の本
駆け抜ける青春21世紀版
2016/08/07 18:05
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆるオンライントレードという仕組みにより、パソコンの前にいるだけで巨大な富を得てしまう人々が生み出された。エリックはその中でももっとも成功した男であるが、もちろんそれは幸運によるのでなく、彼が数字の中から現実を読み取る能力に優れているためだ。そして最新鋭のオフィスを構え、資産は莫大に増えて世間から注目される存在となる。しかし成り上がるのがまたたく間であったように、没落も一瞬のこと。生活実感をまったく持たないところで、人生の浮き沈みが演じられている。
その本人だけでなく、彼の周囲の人々も、結婚相手も愛人も敵対者も翻弄されることになるわけで、その絡みあいのドラマが描かれている。彼もそのブレーンも投機に関する異能の才を持っているが、それ以外は高めの自負心を除けばごく尋常な若者たちであり、精神的な脆さ、不安定さが彼らの地位を支え得るかは実にスリリングな興味と言える。チャートを通して世界の動きを的確に見極める能力に絶大な自身を持つ彼は、為替市場で「円」の下落を見越して買いに走ったが、なぜか円は上がり続け、彼は莫大な損失を蒙る。それは既に彼の動きこそが相場を動かす要因になっているという逆説を示しているのかもしれず、挽回不能な敗北の原因になるのかもしれないが、我々を取り巻く秩序が実は様々な予測不能な要因に依存していることを、むしろ示唆していそうだ。
クローネンバーグが映画化したとおり、彼の絶対の自信にも関わらず崩れていく世界は、ハイテク機器を装備したリムジンで床屋に行くという一日で、その容貌の一端を覗かせ始める。大統領の通過にともなって大渋滞するマンハッタンの街路を通過しながら、とりとめなく発散する彼の興味と、彼を襲って来る得体の知れない憎悪が次から次へと現れるのが、新しい世界秩序を端的に表している。果たして彼は金融ビジネスにおける賭けに負けたのか、それとも数値化できない世界の曖昧さを捉えきれなかったのか、表象だけを見ていては答は得られないのかもしれない。
次々と泡のように現れては消えていく時代の寵児たち、それぞれに主張があり、挫折もあるのだろうが、いずれ一瞬の光芒に過ぎない。たとえ世界の富の半分を所有したとしても、すぐに忘れ去られていく彼らの生き様のなんと蠱惑的なことか。金融とITの結合が進む世界で続々と生まれてくるであろう、モンスターでありながら平凡な青年でもある彼らは、まったく新しい生きるスタイルを持っているが、それは現代において我々みんなが辿る道筋でもある。
紙の本
デイヴィッド・クローネンバーグ監督映画化原作
2016/03/16 17:07
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2003年に発表された作品だが、その後のリーマンショックなどを予見したかのような描写には驚かされた。格差社会に対する不満の爆発など、時代の雰囲気が息づいていた。
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