紙の本
1980年代から90年代にかけてアメリカでもっともすぐれたSF作家と言われたコニー・ウィリス氏の興味深い作品集です!
2020/06/01 09:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカの女性SF作家コニー・ウィリス氏の作品集です。同氏は、1980年代から90年代におけるもっともすぐれたSF作家と言われ、これまでにヒューゴー賞を11回、ネビュラ賞を7回、ローカス賞を11回受賞されている作家です。同書には、表題作のほかに、『女王様でも』 、『タイムアウト』 、『スパイス・ポグロム』 などが収録されており、最初は、なかなか読みづらいのですが、一旦、同書の小説の特徴や書きぶりが分ってくると非常に楽しく、興味深く読み進めることができます。同書は、そうした同氏の不思議な作品が収録され、同氏の独特の小説世界が堪能できる一冊となっています。
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狭量な他人に求めることの多い、強く独善的な自己主張を
揶揄、皮肉る、風刺、クスリとするような
そして苦笑いを伴う短編が四分の三を占めるが、
主張が強くてわかりあうことを怠る二編
分かり合うことに翻弄される一遍
わかって欲しいと切望して、他者も自らも分かってしまう
表題作の、淡々と静かに染みる「喪失感」のコントラストが
この一冊を通して読むときに強く突き刺さる。
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至福の時間でした。どこにゆくのという焦燥感も含めて楽しみました。オールクリア上巻は4月刊行とのこと。少し間を埋めることができました。
ハードカバー版におまけが付いての文庫化。有難く拝読しました。
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「女王様でも」……女性だからこそ書 ける内容だし、喜劇として成立する。 「タイムアウト」「スパイス・ポグロ ム」……両方とも着地点がきれい。視 覚的にも。特に後者は終始狭っ苦しい 所でごちゃごちゃとしていただけに、 オチの巧さが際立つ。表題……多くの ものが滅びゆく世界において、残され るものの寂しさを強く描く。「からさ わぎ」……とにかく笑えた。ありきた りな内容かもしれんが、なんかアメリ カならありそうなきもして。
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「スパイス・ポグロム」が大好き。映像化してほしい。全体的にラブコメディなので女性のほうが楽しめるかも。SF苦手な女性にすすめるならコレかな。
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表題作について。主人公が『それ』を恨む理由。それがあれば愛する者が死なずに済んだ。『それ』はあのとき現れていれば,私の人生を変えるほどの重大なチャンスを与えるはずだった。私の孤独を慰める存在になったはずだ。
ところが,今になって現れた能なしの『それ』はいま何の役にも立たないことにしか使われない,くだらない何百枚の写真を量産するしか能がない。
私が憎む『それ』がからむクライマックスをに至り,伏線が巧みさに回収されるのには唸る。喪失の感情の鮮明さを追体験することが出来る。
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『航路』が面白かったので短編集を購入。
とはいえ収録作は長めで、単純に数だけみると短編集というにはやや寂しい。
表題作を除いて、全体的にコミカルでドタバタ系の内容だった。『タイムアウト』の会話の応酬がいい。
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アメリカの社会病理をコミカルにシニカルに、時にはロマンティック、センチメンタルに抉り出します。
どの短篇も綺麗にまとまっていて完成度が高いです。
でもあまり響かないな〜。
SFに求めているもの、強烈なヴィジョン、胸踊る奇想天外なテクノロジーや魅力的な生物。
そんなものが足りないせいかもしれません。
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『スパイス・ポグロム』がとてもロマンチックだった。
コニーウィリスお得意のドタバタっぷりも良き。
ハッチンズ良かった~!!
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地球上から犬が絶滅した世界を描いた「最後のウィネベーゴ」や、世界初(?)の生理をモチーフにしたSF「女王様でも」などを収録した短編集。他にも結ばれるはずのなかった男女のラブストーリーにSFやスラップコメディ要素を加えた「タイムアウト」「スパイス・ポグロム」など収録作に隙が無い布陣となっている。
個人的には現代の過剰なまでの言葉狩りを皮肉った「からさわぎ」もかなり好みだ。果たして未来のフェミニストや愛護団体の手にかかれば、シェイクスピアの戯曲はどんな改変を余儀なくされてしまうのか?
作風なのかもしれないけれど、登場人物の回想や移り変わりが唐突に入る話もあるので、慣れないと少し読み辛いかもしれない。
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「これ、面白くなるのか?」
と、各短編を読み始めたとき、必ず一度はこう思った気がします。日常描写が長かったり、説明が不足しているように感じたりして、なかなか物語の筋がつかみにくいからです。
そして毎回、短編のラストに近づく頃には、手の平を返してる自分がいました(笑)
「女王様でも」は世界観が掴めたときに、物語の魅力が分かってくる短編。でもおそらく、この短編に心から共感できるのは、女性なんだろうなあ。男である自分は「女の人ってそんなに大変なのか……」と、ただただ恐縮するばかりです。
最後に収録されている「からさわぎ」も、世界観の意味が掴めると、面白くなる作品。そして前者も後者も、シニカルな視点がまた巧く効いています。
そして、ビックリしたのは伏線回収の巧みさ。
一風変わったタイムトラベル実験の顛末を描く「タイムアウト」は、タイムパラドックス的なものもあって、相当話の筋は練り込まれています。さらに、あのキーワードがこう作用してくるのか、というところもあり感心しきり。
「スパイス・ポグロム」は異星人とのコミュニケーションをテーマにした言語SF的な話。異星人のコミュニケーションのルールを見事に生かした物語の作りに、これまた脱帽。
そして表題作の「最後のウィネベーゴ」もスゴかった……。多くの動物が絶滅の危機に瀕した世界。その世界観は終末もののSFのような、哀惜があるのですが、この世界だからこそ起こりえる事件であったり、人の行動のロジックは、特殊設定のミステリとしても、かなりの面白さ!
そして、ラストのサプライズもあり、切なさもあり……「これ、面白くなるのか?」と散々手の平を返してきたにもかかわらず、また疑いながら読んでしまった自分が恥ずかしくなるくらいの作品でした(笑)
各短編、エンジンのかかりに時間はかかるものの、速度に乗ればあっという間に、面白いゾーンへ連れて行ってくれると思います。
そしてSFの世界観でありながら、細かな伏線回収や展開の巧みさは、精巧なミステリのようでもあります。SF作家のこの著者が「このミス」などでも評価されている理由も、身に染みて分かった短編集でした。
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《目次》
・「女王様でも」
・「タイムアウト」
・「スパイス・ポグロム」
・「最後のウィネベーゴ」
・「からさわぎ」
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アメリカSF界の女王、コニー・ウィリスの作品集。「女王様でも」が読みたくて入手したけど、色んな色の作品が入っていてよかった。しかし中編は1話1話がちょっと長い。そして説明なしに色々始まるので少し読みにくい。
・女王様でも
月経SF。
・タイムアウト
ロマンス、タイムトラベルもの。細かい芸が効いててよかった。
・スパイス・ポグロム
宇宙人とドタバタかわいいスクリューボールコメディ。個人的には途中ちょっと中だるみしたけど、ラストにかけてのドタバタ感はよかった。
・最後のウィネベーゴ
シリアス。現在と過去が入り交じって初めは読みにくいけれど、だんだん繋がってくる。「そして、すべてがそこにあった。」
・からさわぎ
ポリティカル・コレクトネスのせいで学校でシェイクスピアを教えられなくなる、という風刺の効いた短編。ザワザワとテンポがよい。
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SF。ファンタジー。短編集。
全体的に非常にコミカルでユーモラス。
社会風刺も効いている。
表題作の評価が高いようだが、個人的には「スパイス・ポグロム」がベスト。異星人とのコミュニケーションを面白おかしく表現した、コミカルな言語SF。