紙の本
世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち
2016/03/30 11:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:[s] - この投稿者のレビュー一覧を見る
金融の基礎知識は必要であるが、あの時に起こっていたことが理解できた。
映画原作で面白そうと思ったが、難しかった。
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2008年に起きたリーマン・ショックの引き金になったものは、サブプライム・ローンの連鎖的な焦げ付きだった。「サブプライム」=「優良(プライム層)よりも低い層」という名が示す通り、サブプライム・ローンは信用度が低い客にほぼ無審査で貸し付けられた住宅ローンである。本来であれば、低い評価しか与えられないはずのサブプライムローンだが、金融機関は他の債券と組み合わせ、モーゲージ債という別の債券へ仕立て上げて、世界中に売りさばいたのだ。
信用度が高いと評価された化粧済みサブプライム・ローンが大々的に売り買いされる中、その正体に気付いた男たちがいた。孤高の義眼の医師、モラルハザードを起こした金融機関を憎悪するヘッジファンド・マネージャー、そして知識のない債券市場に殴り込んだ若者2人組である。本書は、モーゲージ債の大暴落に賭けた彼らの姿を活写したノンフィクションである。
投資はしているものの、インデックスファンドへの積立と個人向け国債の購入くらいしか行なっていないため、金融知識、特に本書で描かれる債券市場についてはほとんど知識ゼロなのだが、それでも非常に楽しめた。やはり、一般庶民の年収の何十倍という額を1年で稼ぎながら、それでいて貧困層からさえ金を搾り取ることに何の良心の痛みも感じない金融機関の人間たちが、自分たちの作り出したモーゲージ債の危険性に気付いていなかったという間抜けぶり(本書の登場人物曰く「頭におがくずが詰まってる」)を晒しているからだろう。
しかし、一方で著者と同様に釈然としないものを感じてしまうのが、賭けに勝った主人公たちだけではなく、賭けに負けたはずの金融機関の人間たちもが大金を手にして舞台を去っていることだ。そこに痛烈な反省はあったのだろうか。
折りしも、NYダウは過去最高値を更新し、日本の株式市場もリーマン・ショック前の水準を回復しつつある。だが、リーマン・ショックの反省がなければ、貧困層を食い物にして、また同じことを繰り返すのではないだろうかという危惧を抱かざるをえない。
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ノンフィクションなので当然なのだが、非常にリアルというか生々しい。
知識ゼロで読んでも債権やCDSの仕組み、それに携わる人々の姿を見ることができ、非常に興味深い。また事態が進展して行く様が読みやすいテンポで描かれている。
本書に登場する人物のうちサブプライムローンの破綻を読み切った者はある程度報われている。
しかし、そうでなかった者たちが痛い目を見たのかというと決してそうではない。
勧善懲悪とはいかないのが現実なのかもしれない。
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解説の藤沢氏は、リスクを見誤って勤務先の投資銀行に大損をもたらした人物を「大馬鹿者」と描写しています。
その表現は、道徳的には完全に正しいのですが、その大馬鹿者は、大損を与えたにも関わらず数千万ドルの大金を手にしています。どんな愚かな振る舞いをしても、大金をせしめることのできるゲームに参加できる人間って、実は、もっとも賢いのではないのでしょうか(運がよかったというのもあるのでしょうが、運も実力のうち)。
一方、サブプライム問題を予見していた人の一部は、その明晰さにもかかわらず(又は故に)、金融危機の前、そして一部の人物についてはその後も、苦しい多いをすることになります。
いうなれば、本書の大部分において描かれているのは、いい加減な愚か者が人生を楽しみ、誠実に現実を見据えようとする人物が強いストレスに晒されることもある事実です。
大変意外なことに、藤沢氏は解説においてこの二つの役割に関し、(楽して大金をせしめた)大馬鹿者を否定し、「たっぷりと正当な金」を得たいと述べています。藤沢氏は、一般にはシニカルな表現で知られていますが、楽して大金をせしめる立場を否定するあたり、非常に知的にロマンチックな方なのではないかと感じました。
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藤沢数希さんが最高に面白いというので読みました。
サブプライムローンの危うさは当時、その商品を作って売っていた投資銀行やS&Pやムーディーズといった格付け会社の人達でさえ気づいていなかった。
そんな中、必ず暴落するときがくることを予想した3人の人物(3つのグループ)たちが、どのようにしてサブプライムローンの売りにあたる、CDSを買って大儲けしたかが大筋です。
簡単にいうとこのような話なのですが、
・投資銀行、格付け会社がいかに危うさを知らずに売っていたか。
・暴落を予想した3つのグループがどのようにその危うさに気づき、実際に儲けるまでにいかに苦労したか。
が詳細に書かれています。
大損失の原因となるCDSを売った国内金融機関(しかも最後発組)としてみずほ証券の名前が少しだけ出てきています。
おおよそ2005年~2008年にかけての話なのですが、読みながら当時自分はどのようなことを感じていたかを思い出そうとしました。
つまりこのサブプライムローンというものに対してどういう考えをもっていたのかということです。
2006年、自分は証券関係のシステム構築に携わったこともあり、株や投資信託の仕組みを少しでも知りたいと思い、証券口座を開設していたようです。
また、新興国の経済がものすごい勢いで成長した時期で、BRICSの名前を聞かない日はないくらいの状況であったことを思い出しました。
何も知らずにBRICS関係の投信を買い、最初はかなり儲けていました。
その後、2007年に入っても調子にのって投信を買い足していたのですが、2007年の8月にBNPパリバの危機により、かなりの損失を出しています。(ここで異変に気付くべきだったのでしょう。サブプライムローンの危うさを指摘するWebの記事もこれ以前にかなり出回っていたようです。)
そして2008年の3月にベアー・スターンズの破たんを受けてまた少し損切しています。9月のリーマンショックではあまりの損失に損切さえできず、マイナスポジションのまま保持し続けて今に至ります。
2013年ようやく、日経平均も急激な回復を見せていますが、はっきりいってバブルです。企業業績はちっともよくなっていないのに、株価だけが上昇しています。
同じようなバブル崩壊が1年先か何か月か先に起きるのかわかりません。世紀の空売りでは、バブルは必ず崩壊すると言っています。
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2008年のリーマン・ショックの際に巨額の空売りを仕掛け、空前の利益を上げた『金融アウトロー』の話です。登場人物が個性的なのと、著者の筆致のすばらしさに一気に読み終えてしまいました。
この本は以前からずっと読みたいと思っていました。そして昨日、1ヶ月かけてやっと読み終えました。いやぁ、すさまじい内容でした。このノンフィクションで描かれている時代のころに僕は当時手がけていた自分の商売が破綻して、長い長い「蟄居生活」を送るハメになったのですが、まぁ、それはさておいて、株であれ商品であれ債券であれ為替であれ、市場と名のつくものに上げる下げる。いずれにせよ大きく動いたときには大きく損をした人と、その裏で巨額の利益を得た人間が必ずいるわけです。
ここに取り上げられている人間は2000年代に狂乱の宴を連想させるサブプライム・ローン及びCDSの活況が近いうちに破綻する、という考えに、基づいた三組の人間たちの戦いの記録です。
1組目は、「異端の株式アナリスト」、スティーブ・アイズマン。
2組目は個人投資家のジェイミー・マイとチャーリー・レドリーのコンビ。とその参謀を務めるベン・ポケット。
そして最後にアスペルガー症候群という病を抱える隻眼のバリュー投資家であるマイケル・バーリ。
この三者三様の戦いぶりがまさに『世界に対してケンカを売る』という行為そのもので、読んでいてゾクゾクさせられました。特に、スティーブ・アイズマンの分析能力の冴えと、マイケル・バーリの顧客から『金を返せ』とすごまれてもCDSは必ず破綻するという信念に基づいて、本来だったら自分の専門外であるはずの債券市場に乗り込んですさまじいばかりのリスクを取り続けた姿には感動すら覚えました。
そして『リーマンショック』に端を発する世界経済の破綻。彼らは巨額の利益を手中にしましたが、それでハッピーエンドでした。チャンチャン。とは行かないところがこの本をすばらしいものにしています。そして最後に作者が、かつての上司であるジョン・グッドフレンドと昼食を共にするシーンが書かれているのですが、この静かなシーンの中に、数十年にも及ぶ、狂乱の宴とその崩壊が、彼の下した決断によるものがその発端だったというくだりに、『ニンゲンの業』の深さを感じました。
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"The Big Short" by Michael Lewis
Steve Eisman
Michael Burry
Grant's Interest Rate Observer
Meredith Whitney
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世界の金融市場を揺るがせたサブプライムローン破綻の経緯を、CDSを買うことで空売りを仕掛けた投資家の視点を中心に描いた意欲作。まるで上質の社会派フィクションを読んでいるがごとく、物語はドラマチックに展開し最後まで飽きさせない。これは著者の力量はもとより、下手な注釈を多用せずに通した訳者によるところが大だと思う。
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世界同時不況をもたらした米国住宅バブル崩壊。その破たんに賭けた人々の物語。
みんなが熱狂する中、反対の事を言うのは勇気がいる。赤信号みんなで渡れば怖くないとはよく言ったものだ。
米国をショートした男たちの武勇伝はさておき。サブプライムローン問題が拡大する過程で、いかに馬鹿らしいことが起こったか。それは、今知っておくべきことかもしれない。
答えは知っているのだけど、物語として十分楽しめる。
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マイケル・ルイスはマネー・ボールでもご存じの方も多いだろうライターだけど、私が彼を初めて知ったのはデビュー作ライアーズ・ポーカーを読んで以来でそれはもう20年以上前のことだった。この作品ももちろん傑作だけど、ライアーズ・ポーカー以来のファンとしてはある意味後日談として読める部分もあって二重にお得な作品でした。
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読み応えのあるタフな本だが面白い!
金融経済の歴史の1ページとして、リーマンショックとは何だったのかという観点で、金融や経済に興味が無い人でも何が起こったのかその概要を説明(それも非常に分かりやすく)している末尾の解説部分だけでも是非とも読んでほしいと思った。
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面白かった。アイズマン、バーリをよくぞ見いだし、その特異なキャラクターや、自らが取ったリスクに伴うプレッシャーに耐える自分の相場観への信念の強さを描いたと感服。
これより15年ほど前に我が国で沸き起こり、我々が皆踊り、崩壊したバブルをこんなふうに描く作家はいなかったな。
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リーマンショック・コンフィデンシャルやライアーズ・ポーカー以降ちょこちょこ割合楽しく読んでいる経済ノンフィクション。さすがマイケル・ルイスという感じで超がつくほど綿密な取材とエキサイティングな描写。しかしながら、リーマンショックにおける勝ち組を主役にするという、扱うテーマが少し変化球なのと、深く専門的な話が深多いので素人には分からないところは多かった。ただ、リーマンショックの構図は割合シンプルに説明されていて分かりやすく、理解が少し深まった。リーマンショックについて語っている人のほとんどは、実際にはその怪物の正体は把握できてないだろう。
要約すると、サブプライムローンを寄せ集めればMBS(住宅ローン担保証券)ができて、それを寄せ集めればCDO(債務担保証券)ができる。ハイリスクのCDOの売れ残りはさらに寄せ集めてCDOのCDOができる。ここまでくればサブプライムローンは完全に隠蔽化され、実態不明の債券が出来上がる。CDO内の実態である個々のサブプライム間の相関は「低い」ので「全体として」焦げ付きリスクは低い。だから本当はヤバイ商品であってもトリプルA格付けがバンバン付けられてしまう。その「超優良」商品であるCDOを空売りするために生み出されたデフォルトヘッジのためのデリバティブであるCDSが実際の市場規模以上にどんどんと出回っていき、あとは奈落へ一直線。面白いような摩訶不思議な超錬金術。
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【『マネー・ボール』を超えた痛快ノンフィクション】世界中が、好況に酔っていた2000年代半ば、そのまやかしを見抜き、世界経済のシステム自体が破綻する方に賭けた男たちがいた。
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合資会社を上場することの一番の効用は、財務上のリスクを株主に転嫁できることだ。言うまでもなく、株主だけの問題にはならない。ウォール街の投資銀行が大失敗をしでかせば、そのリスクは合衆国政府の問題になる。「深みにはまるまでは、レッセフェールだ」と、元CEO は喉の奥で小さく笑った。
マイケル・ルイスはこの壮大な物語を締めくくりとして、嘗て糾弾した旧ソロモンブラザーズのジョン・グッドフレンド元CEOとのランチのシーンを選んだ。彼がライアーズ・ポーカーで徹底的に糾弾した後も、金融資本主義は自己増殖を続け、遂に世界経済を破滅の淵に追いやることになった。
この壮大な賭けの相手方は誰なのか、本書を通して流れる一つのテーマである。バーリやアイズナーがサブプライムローンで仕組まれたCDOが破綻する側に賭けた時、相手方の投資銀行はそのポジションを他の投資家に売却したかのように見えた。実際、それが証券会社のビジネスモデルであり、AIG-FPのような無謀な投資家がいたからこそ初期の賭けは成り立っていた。しかしここでも金融資本主義の自己増殖の原則が働き、いつの間にか自らポジションを抱え込んでいた。彼らは高度なリスク管理モデルを持っていたはずだった。しかしそれは極めてナイーブな前提の上に成り立つ砂上の楼閣に過ぎなかったことを、筆者はメリルリンチの例を通じて描き出している。
あれから6年、国際金融規制強化の流れは今なお続く。規制・監督側はことある毎に「too big to fail」と呪文のように唱える。バーリやアイズナーは壮大な賭けに勝った。しかしその賭け金は結局のところ、アメリカ政府が負担したのではないか。その限りにおいて、マイケル・ルイスの長い旅は終わらないのだろう。最新作「フラッシュ・ボーイズ」を読むのが楽しみ。