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やー、なんだろうこれ、面白かったな。確かに「人生そのもの」ではある。ドローゴの、言ってみればしょうもない人生ではあるんだけれど、誰でもそうなわけだよね。なんかいつの間にか置かれた状況でなすすべもなく、たまに大きなこともないではないけどほとんど待ち続けるばかりだったり。ちょっと期待したり失望したりしながら、何かを成し遂げるというほどのこともなくて。ある時期から時は急激に加速して過ぎていき、気がつけば次の世代へと巡っていく。
戦っているのは敵兵ではなくて、己であり、己の死。
最後かっこよかった。
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この本から色々受け取る人もいるかと思うが。何より文章が美しく、非常に私の好みであった。あまりに長期間の希望というものは、ただの無駄であるかもしれないが、それでも描写の中に没頭していたい。
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読了直後は思わず頭を抱えたよ。もうすぐ定年を迎えそうな会社勤めのお父さんにプレゼントすれば家族会議間違いなしの、恐ろしく現代的な不条理寓話。右も左もわからぬ新米将校ドローゴが配属された辺境の砦では、国境線上の砂漠から来るかもしれないタタール人の襲撃に備え続ける簡単なお仕事が待っていた。逃げ出す機会はいくらでもあったはずなのに、気が付けばいつしか身も衰え帰る宛も失っていく。何も起きない人生、それでも何かがやって来るのを待ち続けてしまった人生。どこか幻想的な風景描写の美しさは主題の残酷さを一層際立たせている。
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幻想的な舞台でやけにリアリティがある人間の感情を描写した1冊。
あらすじには幻想小説とあるが、『カフカの再来』と言われる著者だけに不条理小説と呼ぶべきか。
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★3.5 味わい深い小説だった。
山と砂漠に囲まれた、広漠とした辺境の砦に配属された若き将校 ドローゴ。遠い昔タタール人の襲撃を受けたという伝説の残る砦だったが、国境を巡る脅威は既になく、単調な日々がただ過ぎて行く。いつかまた何かが起こるという希望に取り憑かれ、ただ待ち続ける…
人生の悲哀を感じるけれど、それだけではない。幻想小説と紹介される小説で、確かに情景は幻想的だけれど、とても本質的で深い内容を持っている話だと思った。
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不条理とも異なる精神の長い旅を描いた小説。唯一の希望であり、絶望の象徴でもある砂漠に飲まれてゆく軍人にとって砂漠に見出した絶望が徐々に唯一の希望へと変化してゆく。
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辺境の砦に配属された新米将校ドローゴ中尉と、彼を威圧する孤高の砦。現れるかどうかもわからない敵を待ち…むしろ期待し続ける砦の将校や兵士たち。すぐにでも町へ引き返したいと望んだはずのドローゴは、次第に砦の「望み」にとりつかれていく…。
それにしてもなんて上手い文章なんだろうなと。無骨で過酷で惨めな物語なのに、不思議と柔らかい印象がある。
光の加減、風の揺らぎ、空気の温度、そういう直接は触れられないもので、上手いこと情景や心象が描写される。
絶え間なく過ぎ去っていく「時の遁走」がドローゴにもたらす運命の過酷さと、オルティス大尉との奇妙だが強固な友情の対比が、人生における希望とか幸福みたいなものを感じさせる。
それからアングスティーナ中尉のあまりにもドラマチックで耽美な最期もそそられる。
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何よりも自分の人生を考えさせられる一冊でした。
Webの書評で気になり、早速読んでみたのですが、ガツンときました。
北端の辺鄙な砦に配属が決まった一人の新兵。
最初はすぐに配置変えを望み、我慢しながら一時的な、
単調な兵役をおくっていた。
その砦の存在意義はただひとつ、
いつ来るかとも知れない、北の砂漠の向こうからの
タタール人からの襲撃にそなえるものであった。
もはや伝説となっているタタール人と、
戦場で戦う自分の姿を夢見ながら、
砦での生活に埋もれていく主人公。
規則正しい砦での業務に順応していく自分と、
いつくるかとも分からないタタール人を待つ自分と、
過ぎ行く青春の日々にあせる自分と、
まだ残された時間も引き返す時間もたっぷりあると思う自分と、
そんな思いが絡み合いながら、時は過ぎて行く。
彼の人生はどうなっていくのか、
その興味だけでもページを繰る手が止まりませんが、
それ以上に、自分の人生や生き方を
考えさせられずにはいられない一冊です。
終盤からラストもまたすごい。そうか、、、としか言えません。
本書を手に取った人は、
この年齢である、今の自分が読むべき一冊だった、と思うでしょう
おそらく、どの世代の人が読んでもそう感じるはず。
そういう、不思議な本だと思います。
本書は1940年に出版されたイタリアの小説。
ほとんど話題になってないようですが、
こんなマイナーな傑作に出会えるのも
また本好きの楽しみということで。
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淡々とした中に、何か心惹かれるものがあって、読了。訳者あとがき、は分かりやすい。人生って思ったほどドラマチックではなく、淡々と過ぎ去っていくもの、私も死ぬ時は、ドローゴのように、死を胸を張って迎えたい。
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どこかの書評で「40代の人こそ読んでみてほしい」と紹介されていたので、
読んでみました。
お話はとある国で、士官学校卒業した若い士官が、辺境の砦に配属されるところから始まります。
この砦は、タタール人の侵攻から国を守るためにあるという存在です。
主人公は、実は行き先も、どのくらいかかるのかもわからずに、砦へ向けて
馬を進めていくのですが、着任してみて「ここはヤバイ」とすぐに気づきます。
それで、上官に少し経ったら転属させてほしいとお願いをするのですが・・・
かなり淡々とストーリーは進んでいきます。
特に抑揚もなく、それなのに、けっこうドキドキというか、ドギマギというか、
じれったいというか、なんとも奥歯にものが挟まった感が続きます。
読んでみて感じたことは、人生、自分から動かない限り、何も変わらないな、ということ。
「 いつか○○が起きる 」とか「 誰かが○○してくれる 」と思っていても、なにも始まらない。
何かを起こしたければ、自分から創りだすしかないな、と。
そう考えると、年代で区切るのではなく、
変化に対して消極的な人に読んでほしいかも。
変わらないことの怖さ、変われないことの恐ろしさを感じる作品です。
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北方の辺境地に立つバスティアーニ砦に赴任するジョヴァンニ・ドゴーロ。砦に向かう途中であったオルティス大尉。4ヶ月で街の駐屯地に戻れると話す副司令間。砦の北に広がる「タタール人の砂漠」。砦での単調な日々。ジョヴァンニが率いる警備隊の兵士の射殺事件。砦に残るアングスティーナの凍死事件。20年の歳月が流れつにやってきたその時。隣国による侵攻の開始。病に倒れるジョヴァンニ。
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人生何か大事件が起きるなんて思っていても、平々凡々と過ごしてしまうもの。まして受動的に生きると尚更。身につまされます。それにしてもイタリアの国境にタタール人が来るって、どういう発想なんだろう?モンゴルやトルコ人じゃないのかな?
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なんて無意味な人生なんだろう、と思いながら読んでいるうちに、これがオルティス大尉たちを見ていたドローゴの気持ちなのだと気付く。こわいこわい。
人生は孤独で無意味だ。砦での勤務でなくてもおそらくそのことには変わりはなく、意味があったとしたらそれは自分に都合の良い思い込みなのだろう。
この本を読まないほうが幸せに過ごせたかもしれない。
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たしかにカフカの「掟の門前」に似ていた。でも単に人生を無駄にしてしまった男の話とは受け取れなかった。むしろ人生が世間から評価されずとも、死との孤独な戦いで挽回できると受けとった。ドローゴもアングスティーナと同じように、最期はひとりでかすかに笑みを浮かべて死んだのだから。
タイトルは沙漠だが文章はしっとりしている。そして味わい深い。特に、ラスト7ページの死との戦いのところは盛り上がる。
「運命に一矢を報いろ。誰もお前に賛辞を捧げはしないだろうし、誰もお前を英雄とか、あるいはそれに類した名で呼びはしないだろうが、しかし、だからこそ価値があるのだ。」
若い兵士ラッザーリが味方に殺されてしまったくだりが何を意味していたのかがまだよくわからない。
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心がやられる。
きつい。
内省、内観をしくじれば、
全身がアポトーシスに陥り、
自己崩壊してしまいそうだ。
怖い作品である。