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最後の長編になってしまうのかぁ。先鋭と豊穣を併せ持つ、こんな作品を書いておいて、これで終わりとは切なすぎる。筒井さんの新作を読む歓びをもっと味わいたいのだ。
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古語や枕詞を現代文に上手くミックスさせて、面白い味わいは出てると思う。昔の日本語は美しかったんだなあ。こういう機会に文章にしておかないと、どんどん失われていくと思うので、実験としてはまあ良かったんじゃないですか。ただ、ストーリーがねえ・・・。新聞連載時に途中まで読んでたので、結末が知りたくて借りたけど、物語としてはどーでもいい感じ。そもそも一段しかない新聞小説の1/5が古語の注釈だったし、息子の挿絵もわけわかんないCT画像みたいな感じでひどかった。親子でそこそこ儲けましたねw
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読み進むにつれて次第に純化され、宗教的になっていく流れは『パプリカ』『旅のラゴス』と同様。
ただ、『聖痕』のタイトル通り、宗教的な雰囲気は以前の作品よりもさらに濃く感じられる。
物語の始め、主人公の少年は、性という原動力から文字通り切り離された存在となってしまう。彼の興味はもう一方の欲求「食」へと向かってゆく。
中盤まで付きまとう禍々しさが、少年の成長とともに浄められ最後には昇華されている、そんな物語。
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実験的な意味での作風だったようではあるが、注釈つきの古語、漢語の多用され、非常に読みにくい。
幼児期に変質者の手で性器を切り取られた美貌の男性が、その聡明さと類まれな味覚で、自身を取り巻く人々をも幸せにしていくというお話。
なんとなく読んだけど、特に感想はない。途中早く読み終わらないかなと思った。最後まで何の感動も面白味も無し。
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2013/06/26-2013/07/10
これほど緊張感を持って読み終えた本も少ない。会話文を、かぎかっこ 無しで書き表すという実験的な記述法が大成功している。
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新聞連載されていた、筒井康隆の最新長編小説。
古語辞典を片手に書かれたという文章は膨大な注釈が併記されており、意味の分からない言葉はその注釈を読んで本文に戻る…という行ったり来たりがうっとおしかったが、筒井康隆が元来持つポップネスが弾けており、非常に読みやすい。
一度注釈を無視して一気に読み込めたらさぞ気持ち良い読書体験になるのでは、と思うので再読予定。
肝心の物語は一人の受難を負った美しい男とその家族が織りなす一代記でバブル〜東北大震災までの後半のくだりが大変興味深く読めた。
ただ枕詞や古語を駆使した実験性が高い文章で、物語に重きを置かれていないため、好き嫌いは分かれるかもしれない。
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筒井康隆の作品を久しぶりに読んだ。学生時代には、むさぼるように読んだ記憶がある。そのときは、軽快で大笑いした印象だったが、この本は漢字や枕詞が難しく、読み始めは進まなかった。読み慣れるにつれ、面白くなってきたが、「あそこ」を切り取られると欲がなくなるのだろうかと思いながらも最後のシーンは何か期待して読み進んだ。
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改行がない小説。会話にカギカッコがない本。枕詞を多用してなんかいい日本語が続く。
食事、に対しての警告もあるし、やっぱり筒井さんは実験的なんですかねー。久々に俗物図鑑読みたくなってきた。
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読み始めは根競べだったが、三分の一程まで来ると文章にも慣れ、俄然面白くなってきた。たまには、筒井康隆もいいものだ。
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男性器の喪失→男性的欲望の喪失→食への求道という設定が面白かった。ただ暴力的、性描写の生々しく魅力な表現と比べる食の描写のそれはややあっさりしていたかと思う。主人公貴夫の食へのこだわりをもっと見たかった。最後の震災の涙を流す件は貴夫の感情がストレートに出てるのが意外で良かった。
少し長く冗長な気がした。もっとコンパクトでもいいと思った。
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古語を並べて小説表現に用いるというアイディアを思いつきはしても実際に実現できる作家はそうはいないだろう。最初は戸惑いがあったが読み進めるうちに古語の出現が楽しくなる、連続で現れると思わず拍手をしたくなる、JAZZのアドリブの難易度の高いフレーズを待ち望むのと同じような楽しみ方ができる。選りすぐった古語を集めて作った小説の題材の一つが選りすぐられた素材を集めて作られる料理であるのもむベなるかなといったところか。近年の日本社会を背景にした美と欠損を抱えた主人公の半生に島田雅彦の作品と似た印象を持った。
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筒井康隆はいつだってチャレンジング。古語散りばめの文体、聖俗混合、昇華、新しいキャラクターの造形。
狂気への傾斜もすんでのとこで今回は抑制され、それがまた寸止め的効果。
美味礼讃。何かを失えば何かを得る。
株の高値売り抜けがうらやましい、と俗なことに反応してしまう自分の俗性を自覚する。
反応する箇所によって、己の欲望や心の傾向が分かってしまう恐ろしさ。
参りました。
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葉月貴夫は、産まれた時から人並外れた美貌を有していた。それ故に不幸に遭い、幼い頃変質者に生殖器を切り取られてしまう。
子を成すことはおろか、様々な欲望を抱くこともない貴夫は、己の美貌に群がる周囲の人々のリビドーを冷ややかに見つめつつ人生を送る。
興趣をそそる読書だった。……なんて、普段使わない表現をしてみる。
物語は俗っぽさを排した表現で語られ、貴夫の視点が主であるから、貴夫周辺の人々のありふれた欲望の発露は、それがどんなにあからさまでも淡々と感じられる。
官能も耽美も求めず、日本語の美しさを楽しめる。欲を美食にのみ求めた貴夫のように。……なんてのは、個人的私感で、官能を感じる人もいるかもしれないが。
陰茎を表す日本語がこんなに多彩で純粋に驚く。
それにしても、別に言葉を尽くして褒めちぎっているわけでもないのに食べ物の美味しそうなこと。
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葉月貴夫の神々しい美貌を想像しながら読む古い言葉遣いの文章は読み応えがあった。しかし、集中しないと難しい…ながら読みができない。
森 茉莉『甘い蜜の部屋』を何故か思い出した。登場人物と文章が美しい。むつかしい。
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ひっさしぶりに読んだ御大の本。初めて読んだのが農協さん月に行くでドン引きしたのはいい思い出。
幼少期に性器を切り取られた絶世の美少年がリビドーに端を発する感情を知識としてのみ持って生きていく話。
あの時代特有のお金持ちの厳しいお父さん、おっとりしてしっかりしたお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに慈しまれ。あとから生まれた弟に忌避されながらもアガペーと美食を求める話。
でも多分テーマは破滅だと思うんだよな、人として為すべきことの一つである生殖を奪われた彼が、いかに心を満たしながら静かに終末を待つにはどうするかっていうのが強いんじゃないか。
震災の話も妙に生々しく、主人公につきまとう男の「文学的醜悪さ」は実に御大らしいものなんだと思う。なんだろう、未だ血の滴る生肉に蠅が群がるような、生理的な嫌悪感を引き出す技巧は他を圧倒する。
古めかしい枕詞のオンパレードだけどページページに注釈をつけてくださったのはとてもありがたかった。
日本語って美しいなと思った本。
またこの古めかしい言葉が彼にはよく似合う。時代に取り残されるべくして取り残された、あるいははみ出していることが当たり前であることの象徴でもあるのかもしれない。