紙の本
おかしくなった世界でいきる少年少女のリアルな姿を描写した小説
2017/05/13 13:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作品は非常に難しい作品だと思います。
この物語は、主人公ジェシーの視点から描かれるため、
一見すると彼女が主人公の物語のように感じます。
しかし、僕はこの物語の主人公は思春期の少年少女たちだと思っています。
大人たちがむちゃくちゃにしてしまったつけを少年少女が払わなければならないとなった時に、彼ら彼女らがどういった行動を起こすのか、ということが本作品のテーマだと思います。
思春期を終えた大人には、彼らの行動に理解を示すのは難しいかもしれませんが、
だからこそ、こういった小説読むことで彼らへの理解が深まるのではないかと思います。
本作品では、研究者の父を持ち、他の少年少女より多くの情報を得られる立場にある16歳の少女ジェシーを主人公にすることで、
様々少年少女たちのリアルな姿を描写している点が魅力だと思います。
主人公が16歳の少女であるため、科学の力で問題を解決する過程の描写は少ないので、それを期待している人には不向きな作品かもしれません。
紙の本
自己犠牲とは
2017/05/11 21:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
2011年にイギリスで出版されその年のアーサ・C・クラーク賞を受賞した作品です。
この著者の作品を読むのは初めてでしたが、映画化された「Island」1999年を観ていて面白かったので手にとってみました。
主人公の16歳に少女ジェシーの視点からの物語です。
人は自分が自ら進んで死ぬことで他の何かを救えるとしたら、自らを犠牲にすることをどう考えるべきかを問う内容です。
生きることと犠牲について真剣に考えさせらることは間違いありません。
結末に触れずに感想を書けないので以下で結末に触れます。これから読もうと思われた方は飛ばしてください。
この結末は私は受け入れがたいです。
この主人公の少女はまだ死ぬほど誰かを愛したことがありません、だから真剣に生きようとしていません。
そして彼女のことを両親や友人が愛していること、寿命で死ぬまで生きて欲しいことを本当の意味で知りませんし、理解しようとしていません。
彼女の行動原理は心理学で言うところの承認願望でしかなく、自分が死ぬことで誰かの役に立ち、自分がみんなのために死んだことを忘れずにいて、残された人々が彼女の行動を讃えてくれだろうという自己欲求を満足させたいだけのエゴでしかないと思います。
こんなことに少なくても私は感動しません。
むしろ軽蔑に近い感情を抱きます。
人が生きることは苦しいし辛いし堪え難い事もありますが、それでもなお足掻くように這いずってでも生きようとしなければいけないのだと私は思うのです。
紙の本
共感できず・・・
2014/10/04 18:10
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
バイオテロにより、妊娠すると赤ん坊と一緒に母体も死に至らしめる病気(MDS(母体死亡症候群))が世界中に蔓延した未来。
子供が生まれなくなってしまったため、このままではいずれ人類は絶滅してしまう。
主人公の少女、ジェシーは「世界を変えたい」と思い、一時期、学生運動に加わるものの、様々な事件により活動から距離を置く。
そんな中、ジェシーの父親が勤める研究所がMDSのワクチンを開発するが、それは、大きな代償を伴うものだった。
それを知ったジェシーは・・・。
原題を直訳すると「ジェシー・ラム(主人公)の遺言」
このタイトルから想像できるかもしれないが、物語の冒頭は、ほぼラスト間近のシーンから始まる。
(当然、最初は、そういう展開とは分からないようになっているが・・・)
こういう流れの話は、キライではない。
が、主人公や、その周囲の登場人物に共感できなかった。
MDSのワクチンは、赤ん坊の方には効果があるが、母体には効果が及ばない。
つまり健康な赤ん坊を生まれさせるためには、母親を犠牲にしなければならない。
作品中でも、当然、これが長期的な解決策ではない、としている。
が、それでも「いいニュース」として、ジェシーの父親に語らせているのが理解できなかった。
「呪われた方法」の間違いでは?
せめて「いい方法ではないのは分かりきっている。が、このままでは人類が滅亡するから、四の五の言っている場合ではない」とでも、苦悩してくれれば、まだしも・・・。
結局、ジェシーは、自ら「犠牲」となる事に志願する。
ただ、その決断に至る過程が、自分には理解しにくかった。
ジェシー自身も、周囲からの圧力を受けた上での決意ではない、と言っているし、「犠牲」を募る制度にも、第三者が周囲からの圧力が無い事を慎重に見極める、という事になっている。
が、それで本当に「周囲からの圧力がない」と言えるだろうか?
「世界を救うには、この方法しかない!」
「それができるのは、あなただけだ!」
「世界を救う"救世主"募集!」
とか美化して、さんざん宣伝すれば、それが「圧力」になるのでは?という気がする。
もっと進んで、小さい頃から、「犠牲」になる事は、「素晴らしい事」だと刷り込んでおけば、疑問さえ感じないのでは?と思った。
さらに、共感できないポイントとして、ジェシーが「犠牲」となる決断をするあたりと、「犠牲」となる事を知ったジェシーの父親の態度がある。
ジェシーが「犠牲」となる事で、両親や親しい人たちが、どれだけ苦しむかを考えた様子は、あまりない。
自分は、それで満足かもしれないが・・・。
それ以上に、憤りさえ覚えたのが、ジェシーの父親の態度。
「犠牲」が必要な方法を「いいニュース」と言いながら、自分の娘が、その「犠牲」になる事を知った途端、やめさせようとする。
・・・「身勝手」としか言いようがない。
ただ、この父親の態度は、「集○的自○権」の話でも、そのまま当てはまりそう、と思った。
投稿元:
レビューを見る
全編が16歳の少女のモノローグで構成され、確かに作者が参考にしたという「アンネの日記」を連想させる。
SFでありながらSF的な装置はほとんど出てこない、極めて叙情的な作品だ。
読み進める中で、違和感を感じていた。
人類の未来のために16歳の少女が自らの命を犠牲にするというテーマが、前大戦時の「特攻」を想起させるからだ。
女性の妊娠と同時に発動してその女性の脳を破壊してしまうウィルス。
バイオテロにより、いまや全人類がこのウィルスに感染しており、あらたな子供は生まれてこない。
このままでは数十年後に人類は死に絶える。
その危機的状況を救うために考え出された「眠り姫」計画。
バイオテロ以前に冷凍保存された胚にワクチンを接種し、代理母の子宮に移植して育てる。
代理母の脳は破壊されるが、生命維持装置によって命をつなぎとめ、子供が十分に育った段階で帝王切開により取り出す。
同時に生命維持装置は取り外される。代理母は、まさしく子供を生むための使い捨ての装置だ。
計画の参加者は確実に死ぬ。
移植された胚が確実に成長して出産までこぎつける保証は無い。
それでも、人類の救済という崇高な目的のために少なからぬ数の少女が志願する。
本編の主人公もそうした少女たちの一人だ。
いまひとつ素直に感動できないのは、こうした「特攻」的精神の描かれかたと右傾化する今日の空気に危ういものを感じるからであろうか。
「眠り姫」計画に関与する科学者の一人であり、少女たちの自己犠牲を賛美していたにもかかわらず、最愛の娘が志願したと知るや何とか翻意させようと様々な説得を試み、あげくに娘を軟禁してしまう父親の方にこそ、人としての真実と健全さを感じさせる。
投稿元:
レビューを見る
イシグロの「わたしを離さないで」といい、最近のイギリスの小説家はSFのフリして一般小説を書くのが流行りなんですかね。そういう小説の例に漏れずあまりおもしろくない。一般小説ほどキャラが書き込まれておらず、SFほど異世界感を出せてない感じ。未曾有の奇病に全人類が感染して(笑うとこかな、ここは)人類が数十年のうちに滅亡するかもしれない世界の話だけど、登場人物はみな頭が悪くて自分勝手で感心する。登場人物すべてがある種の陰謀論を信じてるという点では画期的な小説かもしれない。以前だったらイギリス人はバカだから、で済ませていたのだが2011年以降日本人も同じくらいバカだということが身にしみてわかったので痛切といえば言える。あの時期熱に浮かされたように陰謀論を説いてた人が静かになったのは良いことといえば良いことだけど、基本的なバカは直ってないわけで大事故があれば元の木阿弥となることである。
投稿元:
レビューを見る
駄作。完璧に時間の無駄だった。
腰帯の「『たったひとつの冴えたやり方』の純粋さで、『わたしを離さないで』の衝撃を描き出した近未来フィクション」に騙されて買った自分の浅はかさを恨む。
登場人物は全員正常な思考ができていないため、読んでいてイライラする。加えて設定も「これがSF?」と笑いたくなっちゃうようなお粗末なもの。
辛い読書だった。
投稿元:
レビューを見る
政治かぶれした女の子のお話。
SF的設定もないし、どんでん返しもないし。
途中からは意地で読みました。。。
投稿元:
レビューを見る
あとがきから子供が親に反抗し個人となる、
勇敢、英雄的行為が周囲に与える影響とあるが、
過去の世代をを槍玉にあげ、歩み寄りや相互の理解をしようとしない
現在(未来)の世代の思い上がり、独善、
他者との関係や自分の信じたもの以外を信じられない独りよがり、
若者(未熟なもの)の夢見がちな陶酔を強く感じた。
原題の多少ネガティブなイメージとは異なる邦題がついている
ということは、作品全体を肯定的に捉える方も多いのかもしれないが
帯の「たったひとつの冴えたやりかた」と「わたしを離さないで」
どちらも好きな作品だし、後味も余韻もまったく違うので
使って欲しくなかったかな。
背表紙のあらすじを読むと、もっと違う描き方やストーリーの展開が
あったのでは?と思わずにはいられない。
投稿元:
レビューを見る
最後まで読みと通せなかったので評価もなし。
ただ言えることは「帯の惹句にだまされた」
思春期(反抗期)のハイティーンの独白を延々読ませれる苦痛。ムダに長い。
世界が見えてこないのが致命的。
投稿元:
レビューを見る
”「たったひとつの冴えたやりかた」の純粋さと
「わたしを離さないで」の衝撃“という帯のコピー。
そして「世界を変える日に」というタイトル。
期待があまりにも大き過ぎたのか、残念でしかない。
読んでいる間も、まさかこのまま終わりじゃないよね?
と何度も念を押しながら読んでいたのだけど、
それが覆されることはなかった。
確かに主人公ジェシーの選択という点だけでみれば
「たったひとつの冴えたやりかた」のコーティーを
思い浮かべるし、映画でしか観ていないけれど
「わたしを離さないで」の空気感とも近い気はする。
でも主人公が辿り着いた選択に説得力というか、
そこに辿り着くまでの過程が受け容れられない。
反対する両親をきちんと納得させられていないわけだし。
誰もが幸せになれる選択や結論というのはないとは思うのだが、
それでもコーティーは他に選びようがなかった。
この作品のジェシーにはまだまだあったと思えてしまう。
父親の今までの仕事と、ジェシーの決断後の矛盾は
人間なんだなって感じでそこはよかった。
投稿元:
レビューを見る
あらすじを読んで面白そうだなぁと思い、読み始めました。16歳らしい感性を持った主人公に対し、共感できたり、逆に批判的になったり、物語内部での個人同士の考え方のすれ違いは勿論のこと自分自身と主人公のすれ違いを感じることもできました。
その後、が気になるお話です。
惜しむらくは、訳ですかねぇ……。私の訳法と異なる点が多々あったので、非常に、気になる点が幾つかありました。修飾部の扱いが英語の並びと同じように、文外での追加だったので……。日本語の文として、書いていただきたかったところです。
投稿元:
レビューを見る
正直に言おう、表紙のイラストに自転車が映り込んでいたのも、この本を買った理由の一つだ。ストーリーに自転車は関係ないが、316ページに自転車に乗る主人公が気持ち良く描写されている。
物語の背景は近未来にある。
バイオテロのため妊娠すると妊婦は狂牛病にかかり、早々に死に至るため、新たな子供は生まれなくなっている。わずかな光明として、受精胚にワクチンを接種し、生命誕生の汀で抗ウイルスの人類を生み出していく方法が考えられた。しかし、母体の脳はウイルスに蝕まれるため、生命維持装置で胎内環境のみ生かされ、出産と同時に死に至る。主人公は16歳にして、死に至ることを覚悟の上で母胎になる決意を固めるが、家族は反対する。
舞台はSFの設定だが、物語は70年代以降に普遍的に見られる若者特有の反発心、自己犠牲心など、自我を獲得していく過程が書かれている。
劇的なラストがあるわけでも、派手などんでん返しがあるわけでも無い。若気の至りを振り返る機会もなく、主人公は帰らないのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
思春期特有の、視野の狭さと思い込みのおはなし。
自分で選んだ決断だから、見守ってあげたいとも思うけど、
両親の立場になってみればそうはいかないよなあ。
広い視野、情報の選択スキルは生きていく上で身に付いていくものだと
この年になってつくづく思う。
そりゃあ若いうちはわからないよな~。
投稿元:
レビューを見る
延々と遺書が続き読むのが苦痛であった
表紙 6点牧野 千穂
展開 2点2011年著作
文章 4点
内容 310点
合計 322点
投稿元:
レビューを見る
個人的に大好きな「終わる世界」が舞台の小説。
人間の生殖が成立しなくなることにより、人類滅亡が運命づけられる、というのはフィクションの中でよくある話だとしても、そこの理屈がちょっと変わっている。
また、ミソジニーとミサンドリーの対立があったり、グレタ・トゥーンベリとしか思えないような環境保護主義が登場したり、とても現代的な内容が扱われているのは興味深い。
この舞台装置の中で、主人公の心理を追っていくという筋立てであり、そこは良いです。ですが、あまりに舞台装置に対する世界の人々の対応がひょうひょうとし過ぎていて違和感がありました。乗り切れませんでした。