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一時代を築いたカッパブックスの歴史が書かれた本。
天才出版社プロデューサー神吉晴夫、光文社の栄華、そして闘争による疲弊、、など、知らない時代の出版業界を知ることができ、かつ光文社の優れた編集者が色んな出版社に散っていった話など、まるで三國志みたいな歴史小説を読んでるようなワクワク感がしました。
出版社に興味がある人は必読。
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父親の本棚には、ずいぶんカッパ・ブックスが入っていたな。『にあんちゃん』も『三光』も子供ながらにひきづり出して読んでたし、ウチが初めて自動車を買った時は『初歩・自動車工学』も買ってたな。なんといっても『頭の体操』は自分の本のように読み込んで、学校にも持って行ったし実は多胡輝、マイヒーローの一人でした。と、いうようなカッパの子にとって神吉晴夫って出版人の名前は知ってても、彼がどんなプロデューサーであったか全く知らなかったのでありました。しかし、彼がどんな人なのかは、奥付の方で何回も目にしているはずの「『カッパ・ブックス』誕生のことば」で語られるカッパ精神で炸裂していたのです。それは知性の解放であり、アンチペダンチズムであり、庶民との併走でした。有名作家の原稿を押しいただくより、編集者の企画先行で無名の才能を世に出す「創作出版」を掲げる神吉こそがカッパであり、カッパであろうとした仲間たちとの出版という祭りの物語が本書です。あまり言及されていませんが高度経済成長の時代の庶民が「教養への渇望」と「権威への反発」という二つの欲求を持っていたからこそ、カッパは大暴れ出来たような気がします。後半は光文社労働争議とカッパの仲間になれなかった社員たちによってカッパが干上がっていく哀しみのレクイエム、いや怨念の歌になります。これも自分には今の社会が「へのカッパ精神」を求めていないからのようにも思えますが、でも光文社の外に飛び出ている「創作出版」DNAには期待します!
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かつて一世を風靡した「カッパ・ブックス」。空前のベストセラーたちはどうやってできあがっていったのか、また、どういう経緯をたどって衰えていったのか、その流れを一望できる一冊。
また、カッパ・ブックスを通じて、あの会社全体の歴史を把握できる。実際、知らないことが非常に多かった。
様々な「本作りのコツ」が盛り込まれているが、印象的なのは以下の言葉。
“本になるまでは、会話の段階があり、目次によって抽象化された文章になる段階があり、文章は具体化され、著者と論争があり、初めて本の原稿となり、読者に提供されてゆく。
著者、編集者、読者の欲求の距離がより近いほど売れていく。
体の中を風が通った、という鋭敏な感覚を持てるか否かが大事。…「常にきれいな絹を吐く蚕」であってほしい…”
“「タイトルと著者の距離は、遠ければ遠いほど面白えことがある」「ひとつのタイトルの中に、相反する言葉をもって来るんだよ」「人を見てると、企画が生まれてくるんだ」「直球の企画はいいね」「俺はタイトルでしかものを考えられねえんだ」「言葉はよくないけど幻想を売っている。夢を売るんだ」”
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新海均『カッパ・ブックスの時代』河出ブックス、読了。本書は高度経済成長期、数々のベストセラーを送り出したカッパシリーズの歩みとその内実を、シリーズ終焉に立ち会った元編集者が振り返る。新書のはしりは岩波。アンチ教養主義を掲げ大衆実学主義が受け、ミリオンセラーは17点(岩波は2点)。
シリーズ成功の鉤は創始者神吉晴夫を抜きには語れない。「創作出版」の手法がシリーズを発展させ、新しいジャンルを開拓した。出版人の努力と熱意には頭が下がるが、本書はその生臭い裏面史にもメスを入れる。衰亡史は読み応えがある。
シリーズは2005年に新刊の刊行を停止。「カッパは、いかなる権威にもヘコたれない。非道の圧迫にも屈しない」。その血を引き継いだ編集者は別の天地で新しい挑戦(「カッパのDNA」)というが、その魂は如何? 儲けと文化を考えさせれる好著
(以下は蛇足)
先に、ミネルヴァ書房の『岩波茂雄』伝を読んでいたので、ホントにクリアになったけれども、講談社というDNAというか……、出版業界は浮き沈みが激しいだけに、文化創造と儲け(“武士は食わねど高楊枝”)のバランス感覚は難しいと思う。
ただ、オームドレットルとしてのベンヤミンのいう「文」の意義をふまえるならば、やはり、講談社的なるもの……と一慨には言い切れないし、岩波文化に問題がないのかと言われればNOとは言い切れないのは承知だけど……その最大手出版社は「文化」を作ったのかといえば、疑問は残るところ
しかし、カッパブックスの光文社は、週刊新潮のうえをいくゴシップ女性雑誌の先駆けの出版社でもあるわけで、しかし、その創世~揺籃期を、ルポライターとして駆け抜けたのが“えんぴつ無頼”竹中労先生でもあるわけで、まさに丸め込まれない以上の、果敢な内在的抵抗というのもあるわけで。
カッパブックスといえば、「話はんぶん」というのが常で、加えて、岩波式の旧制高等学校式の教養主義が良いわけではないけど(南原繁は以外にもその批判者)、かつてはある程度、出版社によって、「そういうものだ」というのが先験的に把握できたけど、カッパな編集者が飛び出した後は戦国時代ですねえ。
勿論、カッパシリーズと入れ替わるようにはじまった光文社新書にもいい作品は多いし、古典新訳文庫は、古典と向き合う新しい気風を薫発している。これはプラスだけど、ホント、朝日新書やら講談社現代新書で「カッパブックス」が出るようなご時世だけに、読み手は大変なのではあるわけでして。
カッパシリーズの生みの親・神吉晴夫は、労働争議などを経て、光文社を後にして、かんき出版をつくるのだけど、webにおける、その書物のジャンル分けで「人文科学」と「自己啓発」が同列に扱われているのだけど、これは、やっぱりちゃうでw
http://www.kankidirect.com/np/index.html
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歌は世に連れ 世は歌に連れて
の 言葉をそのまま
書は世に連れ 世は書に連れて
に 置き換えて 読める一冊でした
何気なく 漫然と読んだ一冊にも
穴が開くほど 読んでいた一冊にも
その背景にある物語
その部分が赤裸々に綴られているのが
実に興味深い
「カッパ・ブックス」を横糸にした
昭和史として読めるのも
また 楽しい
わたしたちが 今、読んでいる「本」が
何十年かあと、どういう位置づけられ方をするのだろう
と 思わせられた一冊でもありました。
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「銀座の夜のクラブで1人15万円使った」「社員旅行で流血騒ぎ」ほか最盛期の光文社社員の享楽ぶりがヤバイ。まぁその後経理局長が2億円横領でつかまるんですけどね。
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ベストセラーの量産といえば、光文社の
カッパブックスだった。
ベストセラーを生み出す、それだけに向かって
仕事していたカッパブックス。
売れたものが素晴らしい、ということが
よくわかりました。
かんき出版もゴマブックスも光文社から
生まれたという出版文化も学べます。
そして昨今のこの出版社の凋落が、
700億あった資産が220億円に
あっという間に減ってしまったということ。
なぜ誰も気づかなかった?という疑問が
起きなかったような会社の体制が全て。
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親書を読み始めた時には
すでに最盛期を過ぎていたのか、
ほとんど読んだことがないカッパ・ブックス。
ベストセラーの中に、
おもしろそうなタイトルが色々とあったので
探して読んでみよう。
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光文社の成り立ちから「カッパ・ブックス」の誕生、ベストセラーを連発した作品群と社の衰退までをまとめた本。まあまあ面白いのだが、どうもクエスチョンマーク後の1字空けがされておらず、その使い方のニュアンスが変だったり、あるいは漢数字とアラビア数字が1ページの中で混在している箇所があったりして、「入社三年目」「十七、八人」「二人で」ときて「1冊の予定が」「四二刷26万3000部」、となんだかぐちゃぐちゃしている。原稿段階でそうだとしても、統一すべきじゃないのか。
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小学生の頃、初めて買った児童向けではない本がカッパブックスでした。興味を駆り立てる題材、読みやすさもあって読書が不得手であった自分でもあっという間に読んでしまった記憶があります。社会知を子供に教えるような大人が周りにいなかった私にとってカッパブックスは社会とのつながりをあたえてくれる大切なものでした。インターネットがない時代でしたが、いろいろな社会の事柄に興味を持つきっかけを与えてくれたカッパブックス、その歴史が読めて楽しい一冊でした。