紙の本
豚は誰か
2021/05/03 16:26
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投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書に登場する豚がこのコロナ禍で誕生しつつあるように読んだ。知識は専門家に任せろと主張して囲い、解釈を恣意的に変え、他の価値を踏み躙り、人々の行動を制限し、人々を支配しようとする。
今、この現実の世界で、専門家にしてやられてしまったのが政治家であることが、情けない。本当に情けない。ウイルスが人間ジョーンズ、豚ナポレオンが政府系専門家、豚スノーボールが政治家といった当てはめか。
本書が結末で豚の王国の崩壊を描いていることを期待したが、叶わなかった。『1984』で描かれる全体主義国家も揺るぎなかった。揺らいだのは個人だった。
相当まずい時代が来ている。本書を読んで改めて感じた。
紙の本
痛快な革命批判
2015/09/27 23:18
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投稿者:Michiyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
たまたまテレビでオリンピック招致委員会コンサルタントのニック・バーリー氏が推薦している内容をみて興味を持って読んでみた。「1984年」に引き続いてのジョージ・オーウェル作品だった。
寓話仕立てになっていることもあり、長さも程々で気軽に読み進められる。
内容は、歴史を学んだものなら一目瞭然だがロシア革命とその後の流れを動物たちに置き換えて描いている。「資本家」=「人間」を追い出した動物たちが理想の農園を築こうとするが、多少頭のよい豚たちが運営を進めるやいなや当初の目的とはどんどんかけ離れた社会となっていく。言うまでもなく「豚」=「共産党員」である。
腐敗し堕落していく様は正に現実に起こった事そのものであるし、抑圧され一向に生活が上向かない他の動物たちは一般国民の悲しい姿である。
懸命に働き、しかし遂には努力が報われず退場してしまう馬には心を大きく揺り動かされた。
最後に豚たちが敵と憎んでいた人間たちと密約を結ぶ辺りは、豚たちの狡猾さとそれまでの動物たちの行動に対する皮肉を大いに感じた。
動物たちが主人公であるが、結局は人間社会への痛烈な批判が込められている。現状を打破しようと理想に燃えて革命を起こした所で、結局は権力を握ったものが以前の支配層と同等、もしくは更に酷いことをしてしまう。
歴史の皮肉、過去の失敗に学びつつ、人類は自らを顧みながら未来の社会を創り上げる必要があるのだろう。
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本編と共に収録されている開高健のエッセイが素晴らし過ぎて、もはや自分オリジナルの感想を書くことができない。曰く、
「左翼、中道、右翼を問わず、一切の政治的独裁、あるいは革命というものの辿る運命を描いている。(中略)ヒトラーの独裁政権にも通用するし、スターリンの独裁時代にも通用するし、毛沢東時代にも通用する、それぞれの諸人物が全部思い出せる。みごとな作品です。」
なるほど!
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私たちが目ざしていたのは、こんなことじゃなかったはず・・・
という悲劇を・・・
農場に暮らす豚や馬や羊や鶏や犬や猫などなどの動物たちが繰り広げる・・・
動物たちが主役なので、ちょっとした喜劇感もするけれども・・・
やっぱり切なくなる・・・
やっぱりやるせなくなる・・・
われわれ動物の暮らしがキツイのは・・・
苦しいのは・・・
惨めなのは・・・
不幸なのは・・・
全部人間どものせいだ・・・
人間どもがいるから、自分たちの暮らしはキツイんだ!
人間どもがいるから、自分たちは不幸なんだ!
人間どもを追い出せば、われわれの暮らしは豊かになる!
人間どもを追い出せば、われわれは幸せになれる!
人間どもを追い出せ!
人間どもをやっつけろ!
と、他の動物より頭の良い豚たちが主導し、動物たちは一致団結して立ち上がり、反乱を起こす・・・
動物たちの突然の猛攻に、人間たちは堪りかね逃げ出す・・・
人間どもを追い出したぞ!これでわれわれの暮らしは豊かになる!
動物農場バンザイ!
と動物たちの反乱、動物たちの革命は成功した・・・
かのように最初は見えた・・・
農場を自分たちのものとし、みんなでルールを決め、自由を手に入れた動物たち・・・
ところがどうも豚たちの様子がおかしい・・・
豚たちは、あーだこーだと、動物たちをこき使い働かせていく・・・
みんなは革命を主導した豚たちの言うことだから、と言うことを聞いて頑張って働く・・・
ん?
あれ?
なんだかキツイなぁ・・・
仕事、前とあんまり変わらなくない?
いやいや、そんなことはない・・・
リーダーの豚たちが言うんだ、間違いはない・・・
昔の方がもっともっとキツかった・・・
昔に比べれば今はなんて自由で、なんて豊かで、なんて幸せなんだ・・・
みんなで協力してもっと頑張ろう!
・・・
いや・・・
やっぱりなんか・・・
前と変わらない・・・
いや、段々と・・・
前よりキツくなってない?
ねぇ?!
気づいたときには豚は肥え、他の動物たちは痩せ細っていた・・・
みんな幸せになるために頑張ってきたのに・・・
いったい何でこんなことに・・・
どこで間違えたんだろう・・・
人間どもはいなくなったのに・・・
・・・
初ジョージ・オーウェル・・・
どうやらソ連やスターリンへの批判が基になっているが・・・
単なる独裁者や共産主義への批判というよりは、様々な革命ってだいたいこういうパターンに陥るよね、という寓話になっている・・・
革命の前段階、革命後の道筋の基本形・・・
独裁者や組織がどのように敵を打ち倒し、どのように新たに権力を握り、どのように支配し、どのように腐敗していくか・・・
そしてまた、皆がどのように支配されていくか、がこれでもか、というほど良くわかる・・・
自分たちの幸福や理想を追い求めて革命を起こすのに・・・
革命は成就させたその瞬間から既に自分���ちの理想から遠ざかり始める、という悲劇・・・
アイツらがいなくなれば、と思っていたら・・・
結果アイツらの顔が変わっただけ、という悲劇・・・
しかも自分たちの敵と思っていたものに、気づけば自分たちが成り果てている、という悲劇・・・
この・・・
何千年と繰り返されている悲劇・・・
切ない、というか恐ろしい・・・
goodです・・・
そして訳の開高健も初だけどgood・・・
オーウェルについての解説が凄い・・・
というかこの人の文すげー・・・
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飼われる側の、飼う側への反抗。 団結・ビジョンの為の『分かり易いルール』。 そのルールも、やがて都合よく解釈され、飼う側との区別がつかなくなるという寓話。 誰よりも苦労したからこそ、その報酬として、特別な事をしても許されるとの思い込みが生まれる。
欧州と違い、自国が完全支配された経験の無い、全体主義国家日本では、確かに生まれにくい寓話である。
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皆の幸せのためという大義、豊かな暮らしをもたらしてくれるはずの風車、知らないうちに変わっている戒めの言葉、だんだんと姿を見せなくなるリーダー、どこにいるか分からないけれど確かに隠れている敵。
史実のアレとそっくりだと思ったり、かの国が思い浮かんだり…。でも、だんだんと、「この子供でも楽しめるような話にここまで惹きつけられるのは、動物たちと自分は同じなのでは?」と、うすら寒い思いに気づく。
何が正しいのか、あまりに複雑過ぎて分からないと思えることも、単純にしていけば、子どもでもはっきり分かるほど明白なのだ。小学校で教材に使うべきと思うけれど、それをされては困るんだろうなぁ。
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東京五輪招致の立役者となったニック・バーリーさんが「動物農場」と出合ったのは10代のころ。シンプルな文体で普遍的なテーマがつづられるこの物語から、「コミュニケーションが学べる」といいます。
GUEST 113/ニック・バーリー:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2014/02/post158425.html
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知ってるか? 豚は人間の臓器に一番近い動物なんだぜ。その豚が人間の農場を乗っ取った物語。さもありなん。ないけど。
ぱっと読んだ感じは反共文学。ただ、著者のジョージ・オーウェルは反共産主義ではないんだぜ?アナーキスト社会主義者の作品と思って読むと、また違う味わいのある作品。
権力を持つと人(?)はどうして変わってしまうのか。というのが主題である。動物を主役にしているからピュアすぎる演出も納得できるという点が良いところ。
あと、この本には翻訳の開高健の書評がついてるからまた良い。むしろそっちが本編。
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p143 名著
文学で政治を扱うと失敗する。成功したものは…
『神々は渇く』アナトール・フランス
『昔も今も』サムセット・モーム
『樅の木は残った』山本周五郎
くらいのものだ。
という開高健の意見。この本は読みたい。
p156 政治闘争=宗教闘争
大陸文化圏ではかつての宗教闘争が今の政治闘争の原型になっている。だから政治と宗教が関連しているように見える。
キリスト教徒が純粋な教徒なのは荒野を放浪していた時である。しかし、各地の王がキリスト教を国教に認めて権力を手に入れたときから、それまで迫害をしていたローマ帝国のように、キリスト教徒たちは異端追放を涼しい顔でやり始める。その時から宗教は本来の姿を政治的なものに抑圧されていく。
共産主義革命が達成されたらその日から、それまで打倒の対象だった王権の横暴を、共産主義者は始めるということ。
アナーキストの主張はココにあるんだろう。しかし、頭がない組織が崩壊するのも自明の理だからアナーキズムも完ぺきではない。ココのジレンマを理解するかが大事。
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この本の絵本があったらぜひ読んでみたい。
作ってみるか。
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とにかく面白い。訳者の開高健は、『1984年』は失敗作だが本作は傑作であると何回も強調しているが、たしかにそう思う。「おとぎばなし」の副題にあるとおり、寓話的な構成で気軽に読めるのだが、内容はかなり深くて、たいへん読み応えがある。よくある見方として、冷戦当時のソヴィエト聯邦やナチス・ドイツになぞらえることができるが、個人的には世代的に北朝鮮を感じた。「われらの指導者、同志ナポレオン」なんて呼称はまさにそれである。しかし、まったく他国だけのことであると言い切れるであろうか。集団的自衛権の行使容認などをめぐって、最近は安倍政権をファシズムと罵る声も聞こえてくるようになったが、「過去を操作」しているあたりは、けっして他人事ではないのではないか。さすがに政権自身がそこまで露骨なことはしていないけれど、よく聞くネトウヨの言説で、まるで民主党政権時代がなにもかもドン底にあったように論じるものがある。わたしの実体験としては、けっしてそんなことはないだろう、だいいちいまだって数字上は景気がよくなったかもしれないが、実態としてはまだたいして変わっていないのではという感じなので、ネトウヨには真っ向から反対しているのだが、この手の意図的な情報操作はすくなくないように思う。いま話題の集団的自衛権だって、「七誡」の「改変」の延長線上にあるといえないこともないだろう。そういう意味では冷戦なきあとの現代社会に対しても、同様に影響力をもち、警鐘を鳴らし続ける作品なのだと思う。今回読んでおいて非常によかった。
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飲んだくれの農場主を追い出して理想の共和国を築いた動物たちだが、豚の独裁者に篭絡され、やがては恐怖政治に取り込まれていく。自らもスペイン内戦に参加し、ファシズムと共産主義にヨーロッパが席巻されるさまを身近に見聞した経験をもとに、全体主義を生み出す人間の病理を鋭く描き出した寓話小説の傑作。巻末に開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を併録する。
内容(「BOOK」データベースより)
久々に衝撃的な作品を読ませていただきました。
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人間に搾取されている動物達が、革命をおこし成功させる。だが、動物の中から人間と同じような振る舞いをするものがでてきて…
怖かった。私は支配される側に感情移入した。
いいように利用されるシステムが一つずつ作られていく。そして、それがずっと続くように着々と布石が打たれていく。
動物に例えてあるが、紛れもない人間社会の話。
勇敢でも勤勉でも、結局その死まで利用されていた。
最初に牧場から離れたモリーが自分の手に入れたいものを手にしていたように読めた。
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再読。
大人の寓話、いろんな読み方ができる。個人的には作者の意図とは違うかもしれないが、社会主義体制への批判の書として読んだ。
権力の腐敗がどのようにして起こるかを、それこそ中学生にもわかりやすく描いている。
本書の半分以上を占める、開高健のオーウェル論は「1984」を読んでないと理解が難しい。
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全体主義というディストピアを巡る寓話
これってアニメーションになってないのかな。
人間を追い払った後の農場で支配階級となる豚を、ちょーかわいくアニメ化したやつで見てみたい。
内容が教訓的すぎてあれかもだけど。
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かなり面白いディストピア小説。
共同の夢を持って革命を遂行した労働者の革命が、次第に首謀者の専制へ取って代わることを描いた風刺。朝三暮四の政策にも文盲の労働者は騙され続け、終いには専制化してしまう。民主主義がいかに簡単に腐るかを描いた作品でもある。「1984年」に引き続き、記憶や制度の脆弱性を突いている。幾度となく制度と歴史は書き換えられるが、それを実証する術をもたぬ人々は、雄弁家にうまく丸め込まれてしまう。そんな歴史や記憶の社会性というか脆さも表されている。
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社会風刺のモノガタリ。
どんな社会でも、組織でも、時代でもありそうな話。
動物を登場人物にすることで、より一層いろんな状況とかぶってくる。