投稿元:
レビューを見る
ここまでドラマチックなストーリーがあるだろうか。
およそ信じがたいが、幼少期に誘拐されてジャングルに置き去りにされ、そこでサルに育てられて命をつなぎ、その後人間社会に戻って家族を持ち、幸せに暮らす女性の自伝だ。
といっても、昨今注目のゴーストライター事情から(!)自分自身の覚書のためにも付記しておくと、著者とはあるが文章そのものをご本人が書いたわけではなく、聞き取りと裏付け取材をした著者の娘ヴァネッサとライターの三人の共作であり、そのあたりは、あとがきや執筆協力者としてのリストでも明記されている。
ただその内容は、想像をはるかに超えるエキサイティングさで目が離せず、ほぼ一気読み。
ライターのリン・バレット=リー氏はもともとは小説家だったようで、その文章力もこのノンフィクションをより一層魅力的なものにしている。翻訳もとても読みやすい。
おそらく、人間界を離れた年齢が絶妙だったのだろう。発達の面から考えても、これ以上幼ければ、のちに人間らしい暮らしを取り戻すのは不可能であったろうし、これ以上年齢が上だったなら、サルとともに生きることはできなかったかもしれない。
加えて、ご本人が、もともと情熱にあふれた非常に頭の良い人物であったことも大きい。延々と続く過酷な環境の中、サル社会からの脱出、人間社会で生き抜く日々、どれをとっても生来の著者のタフさと知性がなければ果たせなかった事実と想像する。
読み終えて、現在に至るまでの取り戻しの日々がない!と慌てたが、どうやら続編に備えて、ネタは温められているらしい。
続編が本当に楽しみな一作である。
投稿元:
レビューを見る
今年8冊目。事実は小説よりも奇なり。幼少期、ジャングルで猿と共に生きた女性の、真実の物語。
誘拐→ジャングルに置き去り→猿たちとの生活→ハンターに売春宿に売り飛ばされ→雑用をさせられ虐待され→事故で死にかけ→逃げ出してストリートチルドレンに→犯罪者一家の家政婦となり奴隷同然の生活→爆発事件で間一髪助かり→犯罪者一家に命を狙われ→隣家の女性に助けられ修道院へ→修道院から逃げ出し→恩人の女性の計らいで、温かな家族に迎え入れられる…。
ザッと書いただけでも壮絶な人生。
この女性の、決して諦めない強さ、自分の人生を切り拓いていこうとする生き方に、感嘆と尊敬の念を抱く。
温かな言葉、温かな贈り物を初めて手に入れた場面では思わず涙が。本の記述を通して、彼女と共に生きてきた気がしていたのかもしれない。
温かな家族を得ていく続編がありそう。
写真付きな点も良い。マリーナさんもその娘さんもみんな素敵だ。
投稿元:
レビューを見る
サルと5才~10才の間育った女性の半世紀。コロンビア凄すぎ!!しかしこの人は強く逞しい!!
2014.3.6
投稿元:
レビューを見る
「ホントに本当の話なの!?」
と思わず聞きたくなっちゃう奇想天外な話。
やっぱり人との出逢いというのはすごく大事。
彼女がちゃんとした人と出逢えたのは、彼女が賢くて力強くエネルギーに満ち溢れていたからだと思う。
人との出逢いも、その人の魅力で引き寄せられるものだと思う。
自分のことを愛してくれる人がそばにいるということは、人を人として成長させる上で最も大切なことだ。
投稿元:
レビューを見る
サルと生きてたのが前半半分、後半もすごくて、信じられない程なので、うっかり『脱出記』を連想してしまう。
投稿元:
レビューを見る
小さいころ「シートン動物記」が好きだったのは、あたかも自分が動物になったかのような錯覚を覚えるほどリアルな動物世界だったから。
しかし、この本を読むと「シートン」ですら、やはり人間(=外部)からの観察記だったのだと気づく。なんといっても、主人公は幼児期にジャングルに置き去りにされ、その後数年サルの群れとともに生き、言葉を棄ててサルとして生きたのだから(実話!)。
これだけでも一冊の本になりそうだが、ここはあくまで本の前半。後半はサルであることを自らやめ、また戻った人間界での過酷なサバイバル記。
5歳前後で誘拐され、家族から引き離された彼女が「母」なるものを追い求める姿が切ない。人は、やっぱり慈しんでくれる存在が必要なのだと思う。
それにしても、ジャングルもコロンビアという国も、危険度では変わらない!むしろコロンビアの方が恐ろしい…。中学生くらいの子に勧めたい。一気に読める。
投稿元:
レビューを見る
彼らの感情はとても繊細で複雑だった。そのニュアンス一つひとつに、私は人間の感情と同じものを感じた。謙虚や高慢、降伏や防御、嫉妬や賞賛、怒りや喜びといった、あらゆる感情を持ち合わせていた。彼らとの関わり方を会得すると、寂しいのか、孤独なのか、愛情に飢えていて抱きしめて欲しいのか、それとも挑発しているのか、干渉したいのか、彼らの気持ちが手にとるようにわかった。
言葉の多様性にも、いつも驚かされた。甲高い警告の叫びや、苛立ちや喜びの表現、フルートのような響きをもつ日々の会話の優しい音色‥‥。
ごくたまに単独で行動することもあったが、サルたちは群れの秩序の中で生きる社会的な動物だった。私はただ、彼らの仲間の一員でいられることが嬉しかつた。私はここに属するのだ、と感じていた。(69p)
霊長類からどうやってヒトは人になったのか。という研究は数多くある。しかし、霊長類とヒトはその幸福の度合いにおいて、どれほどの「差」があるのか。という学問はない。
コロンビアの環境が生んだ特異な経験によって、この少女は5才から10才の頃までジャングルのサルたちに育てられ、やがて売春宿に売られ、ストリートチルドレンとして生き、マフィアのメイドから逃げ出してやっと人並の生活を手に入れる。その間に車ごと崖から落ちたり、爆発死から寸前で生き残り、マフィアの追求から奇跡的に逃げおおせる。映画の題材には十二分になり得るけれども、私の興味はやはり前半のサルとの生活である。
思い出すのは、ネアンデルタール人と一緒に育ったクロマニヨン人のエイラを描いた小説である。あのネアンデルタール人は、見事な社会生活と信仰と薬処方の技術、狩の技術を持っていた。それと、マリーナが語るサルたちとの距離があまりにもないことに、驚きを禁じ得なかった。そして、母親への憧れから彼女がヒトの世界に戻った途端にヒトという動物は彼女をとんでもない境遇に陥れる。売春娘として育てる。ヒトがヒトを殺す世界生きる。その理由は大きく言えば、カネである。カネのために、ヒトは動物としての最低限度の思いやりさえ無くなるのである。
しかしながら、そんな彼女を助けるのもカネの力ではなく、ヒトなのだから、人間はむつかしい。
2014年5月1日読了
投稿元:
レビューを見る
あまりにも壮絶で、言葉が出てこない。
途中からあまりの救いのなさにこのあとどうなってしまうのか、と思うと読むことをやめられなかった。
ジャングルで数年を過ごす、という経験は稀有なのかもしれないけれど、そもそもこうして活字にできるような人生を歩めなかった、同じ境遇の人たちもたくさんいるように思う…。道徳心の芽生え、初めて人から贈り物を受け取る喜びなど、ものすごく濃密な、人生の悲喜こもごもが溢れていた。
投稿元:
レビューを見る
先に写真を見たので、何者かに誘拐され、ジャングルに置き去りにされた少女が、猿たちと暮らし、紆余曲折、波乱万丈の末、英国人男性と結婚し、現在に至るまでが書いてあるかと思ったら、この本では10代前半で魔窟のような環境を抜け出すまでしか書いていない。キーッ、早く次を!
あまりにとんでもない人生なので、フィクションだったら「リアリティない」と思いそうだけど、ジャングルでの生活の様子や、人間社会に戻ってなかなか適応できない様子が(実話だから当然かもしれないが)当事者だからこそ語りえる内容になっているので、面白くないわけがない。
いやいや、ほんとに、この世で一番邪悪な生きものは人間だとしみじみ。密猟者のトラックで、猿(彼女にとっては同胞)が衰弱して死んでいく様子が憐れでならなかった。
しかし、彼女は劣悪な環境で盗みはしたが、売春も麻薬もやらず(危ないところで乗り切って)生きられたのは本当に良かった。
わずかではあるが、いい人間も出てくる。こういう人がいるから、人間の世に価値が生まれるんだね。
誰にでもおすすめできるいい本。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりの海外もの、ルポルタージュ。ジャングルに捨てられた5歳の少女が猿とともに生きる1章、何でもありのコロンビアの悲劇的な環境で自立する2章。本当の話なのか?と思いつつ最後まで読んでしまった。5歳だったから猿に学べて、人間の記憶も残っていたのだろうとほぼ同年齢のはずの立男は思った。…これ本当の話なのだろうか?
投稿元:
レビューを見る
ほんとに実話!?ほんとに訳本!?めちゃめちゃ面白かったんだけど!!(人は本当に感動するとコメントがアホっぽくなる)
投稿元:
レビューを見る
幼い頃誘拐され、ジャングルに置き去りにされた少女が歩んだ道を、その少女を母に持つ娘が記す。どこまでが真実なのか疑いたくなる道のりなんだけど、少なくともストリートチルドレンとしてギリギリの中に置かれていたのは真実で、よく生き抜いてくれたなと思った。まだ途中で終わっているので続きが出るならぜひ読みたい。
投稿元:
レビューを見る
幼い頃に誘拐されてジャングルに捨てられ、サルと共に暮らした少女。後に人間に拾われ、人間社会の中で暮らし始めますが、森で育った彼女にとって、「人間の生活」とは理解することすら難しいものでした。行く先々で何度も名前を変えられた彼女が「自分の名前」を得るまでの、ノンフィクションのお話です。
投稿元:
レビューを見る
ジャングルに捨てられた子供。なにから始めるか。それは、食べること。
猿たちとの間でも意思疎通できるようになる。生きるということが秘める力、恐るべし!
投稿元:
レビューを見る
実話を元にしていながら、ライターさんが手を加えているので小説のような感覚で読める。ご本人の記憶が薄れてきているということなので、多少の脚色や想像はあるとしても、「事実は小説よりも奇なり」という言葉を思い浮かべざるを得ない。信じがたいことが次々起こる。特にジャングルでの生活は凄まじい。年端もいかない少女が、孤独と恐怖の中で正気を保ったまま生き残るのは奇蹟に近い。私なら人と話せないこと、虫にたかられることだけで気が狂いそう。
ジャングルを脱出した後も、大人に裏切られたり助けられたり、波瀾万丈。せっかく職を得たレストランをすぐ辞めてストリートチルドレンに戻ってしまったのは納得しがたかったけど、幼い頃から社会と断絶され、毎日学校に通ったり宿題をしたりといった生活習慣が身についていなければ仕方ないことなのかもしれない。
ようやく安定した生活を得られそうなところで話は終わる。そこから結婚し、子どもに恵まれる幸せにどうやってたどり着いたのか。続きが出るようなことを後書きで言っていたので期待したい。