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コンパクトな本であるが、教科書として必要不可欠なな記述を網羅している。しかも、よくある河川工学の教科書があまり深く立ち入らない水理学等に係る数式が掲載されており、それでいてひとつひとつの概念をあまり深追いせずに数式の紹介程度にとどめているのが絶妙なバランスであるといえる。それぞれの数式を理解したい場合には水理学や土砂水理、土質力学等の教科書に立ち戻ることができるようになっている仕組みであるし、一方で数式の理解を飛ばしてもとりあえずその先の項目はまた改めて読むことができるというつくりなので、そういう意味でも「ちょうどよい」教科書である。
水理学的記述、さらには土砂生産といった技術的な内容がしっかり記述されている上、河川計画・管理の行政的実務についても概ね的確に記載がなされている。
治水・利水はもちろんのこと、環境面でも河川連続体仮説や順応的管理といった基礎的概念がおよそ記載されており、さらには河川構造物についても一通り紹介されている。ありそうでなかった、コンパクトなのに網羅的で、技術的なのに実務的で、バランスのとれた河川の教科書である。