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「たらし」の家と蔑まれる反面、確かな造園技術で地元では知られた曽我造園の三代目・雅雪。
全身に大火傷の跡、不自由な身体、祖父から受け継いだ若白髪の髪。
雅雪は、両親を亡くした少年・遼平の面倒を見続けながら、ひたすらに「その日」を待っている。
その日まで、あと数日というところから物語は始まる。
肉親から関心を持ってもらえず、自身も肉親への情を知らずに育った雅雪。
母親からの過剰な関心を寄せられ、バイオリンを弾く事だけを求められてきた郁也。
郁也の双子の姉でありながら、郁也に全ての関心を注ぐ母親に無視され、家政婦のように扱われてきた舞子。
雅雪の父母、祖父、そして郁也と舞子の母もまた、人としての情の欠けた大人達。
そんな人々が交錯し、愛が生まれ、愛ゆえの悲劇が起きる。
遠田潤子作品の、どうしようもない力に惹かれつつ、昏い人間関係の描写が辛くて…
しばらく離れていたけれど、本作には、最悪の傷と、最上の救いがある。
あまりにも深く傷つき、結びついた心。
すぐそばにいて伝わる心もあり、離れてやっと受け入れられる心もあるのだろう。
ラストのおだやかな暖かさ。
雅雪、舞子、遼平の誰もが、いつか傷つけ合わずに暖めあう距離を見つけられますように。
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結構、重い作品で読み進めるのに苦労をしたが読了後は心が晴れやかになった。前作の『鳴いて血を吐く』も重かったが同じくらいこの作品も重い。人間の怨念はすごく怖い。人ってこんなに冷酷になるんだとすら思ったりもした。雅雪の行動は偽善かもしれないがそれをする事により少しでも罪滅ぼしになればと思ったのだろう。そういう事を考えると余計につらい。雅雪・遼平、そして舞子も幸せになってほしい。これ以上、苦しむ事が無い事を願う。
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初めて読む作家さんでした。
最後まで分からない事だらけで、
はやく先を読みたいと思わせる作品でした。
この作家さんの他の話も読みたくなりました。
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【ネタバレ】とにもかくにも主人公の態度が腑に落ちないんですよね。そこまでせなあかんのか?と。うじうじした子供にもイライラさせられるし。結末直前まで陰々滅々してるくせに、取って付けたようなハッピーエンドがまた納得できませぬ。
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『アンチェルの蝶』に続く遠田潤子の作品。相変わらず昏く、救いようのない登場人物たちの話。全編に立ち込めるやりようのなさがあるぶん、最後の最後に救われた思いになった。大きな物語ではない。ささやかな物語に微かな光明がみえた。読了後、立派な蘇鉄の樹を見てみたくなった。
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ラストでは「よかったな雅雪!」と思わず声に出していた。
「アンチェルの蝶」で心を鷲掴みにされた、しかし近著の「泣いて血を吐く」では見事にスベったのも確かでその際次作に期待と感想を述べた。
そんなこともあってサスペンスの趣旨とは別のところで(とっちらけないかと…)手に汗握るスリリングさを味わえたがどうやら杞憂に終わったようで先ずは一安心。
なぜそこまでこだわるか?それは荒削りながら正統派ロマンノワールを継承しそこに女流のエッセンスを添えられる、遠田さんはそんな稀有な作家であるからだ。
寡作でよい、いいものをじっくりと描いて欲しいと思う
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どうして、こんなに過酷な設定をする?
13年半という、長い時間を過ごして
変わらずに気持ちを保つというのは
本当に可能なのかな?
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壊されすぎて自分の異常さに気がつけていなかった少年と壊れてしまった双子……。悲しいですね…
でもハッピーエンドだった!良かった!!舞子さんともうご飯一緒に食べれるね雅雪さん!!
遼平くんもがんばれ!!
これは読み終えて、自然と前向きになれました。
前向きっていうか……ちゃんと生きて行こう、みたいな……
罪を憎んで人を憎まず……
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自分が犯したわけでもない罪の償いを、人は十三年もの間し続ける事ってできるんだろうか。
雅雪の罪滅ぼしの仕方は、自分さえ耐えれば良い、みたいな、いき過ぎた自己犠牲の精神のようにも思う。
彼が彼なりに責任を感じているのはわかる、真摯なのもわかる。でもそれじゃあ「ごっこ」と言われても仕方ないんじゃないかな。
容疑者の関係者である雅雪が、被害者遺族の遼平の世話をする。
はたから見ればおかしな関係だし、ずっと雅雪の土下座を見て育った遼平は辛かっただろうなと思う。
自分の両親の命を奪った容疑者本人であったなら、心の底から憎めただろうに。中途半端な立場で、しかも「おじさん」と慕ってただけに憎みきれない。
逆に文枝は雅雪を憎む事でしか生きられなかった、哀れな人。十四年前の事件さえなければ、そんな憎しみの気持ちさえ知らずに良い母であり、良い祖母であったのだろうと思うとやりきれない。
ラスト5ページまで結末はわからず、やきもきさせられる。
それにしても最後に遼平にあんな頼み事するなんて、駄目だろ雅雪。自己中か。
まああの頼みがあったからこそ、うまくいったんじゃないかなと思うけど。結果よければすべて良し、ってね。
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郁也 舞子 遼平そして雅雪。前半は重苦しかったが、ラストは感動で涙。「なにもかもこれから」犬でよかった、阿呆でよかった。
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上半期ベスト1本命候補
今年度のベストに巡り合ってしまったかもしれない。
凄い小説である。
家族から情をかけてもらわず育った植木職人の、奴隷として過ごした13年間を追った話。
何故奴隷なのか、家族の情とは何か?なんというか、出てくるセリフや表現一つ一つが重くて、読んでいてツラい部分もも多く、しんどいところも多々あって、色んな人が可哀そうで不幸で人間不信になりそうになる。
許すってことは難しいと思う。罪を憎んで人を憎まずと言うが、そんなことで済まされない憎しみを抱くこともあると思う。許しを乞うことも、これまた難しいと思う、償おうを動けば動くほど、頭を垂れれば垂れるほど相手の気持ちを逆なですることも大いにある。
さだまさしの何とかって曲が一時期話題になったが、あれだって罪を犯した人から見たら大いに希望の持てる歌であって、現実はあんなにユルしてくれる人ばかりじゃないかもしれない。
罪を償うってことが、ましてそれが自分じゃなく自分のかけがえのない人が犯した罪を償おうとする行為ならば、そのやりようは本当に難しい。
結局人間なんて、自分のケツを自分にも他人に頼っても拭いきれないことをしでかしてしまうこともあるんだと、そして人間なんて真心を尽くし切っても、人一人の罪すら償い切れない程度の、下らん存在だとそんな風に絶望に駆られる
が
ラスト数ページで
絶望でせき止められてた涙腺ダムが崩壊する。人間やっぱ、捨てたもんじゃないよ。
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タイトルだけで選んで読み出した本だったんだけど、なるほど遠田さんだったんだ。
いい意味で遠田さんらしいストーリー。
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最初はあまりに暗くて、読むのが辛かったのですが、途中から結末がどうしても知りたくなり、久しぶりに一気読みしてしまいました。
雅雪は曽我造園の三代目。
祖父・父と続く「たらしの家」と呼ばれる女の切れない生活の中で暮らしている。
さらに、雅雪は父が殺した母を持ち、それがもとで殺人を犯してしまった、恋人がいた。
その恋人の罪を償う為に、その恋人が殺した両親の赤ん坊遼平の面倒を見ることになる。
遼平の祖母は、息子夫婦を殺された恨みを他にぶつけるところが無いので、雅雪にぶつけてくる。
一生懸命面倒を見て、懐いていた遼平も心無いいじめと、過去の事件を知らされることで、荒れて手に負えなくなる。
しかし、雅雪が本当の真実を勇気を出して、遼平に語っていく中で事態は大きく変化していく。
恋人とのなれそめで、あまりにも孤独に慣らされてすぎて、誰とも一緒に食事が出来ない雅雪の異常性がわかってくる。
そして、それは「情」が全く無い祖父に育てられた父にも言えることがわかる。
この物語の登場人物は皆、さまざまな寂しさを心に抱え込んでいる。
しかし、その中で異常だと、犬のようだなどと言われながらも愚直に自分の出来ることを必死に続けている雅雪の誠実さで周りの皆が救われていく。
最後の遼平の変化と、これからの希望を感じられるラストは嬉しかった。
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重いストーリーですが、読み応えありです。雅雪をはじめ登場人物が魅力的というか、キャラクターが際立っています。また、7月7日までの6日間のストーリーをとても上手く展開させています。オススメです。
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曽我造園の清次,俊夫,雅雪は三代に渡って地元で営業している.細木老には目をかけて貰っている.物語は三代目の雅雪が島本遼平との複雑な絡み合いの中で,最終的に彼の心を開かせる話だ.顧客の真辺一家との関係が事件の発端となる.郁也と舞子だ.遼平の祖母文枝の頑なな態度は当初理解に苦しんだが,次第に真相が明らかになっていく過程が楽しめた.雅雪の生き方を細木老や鍼灸院の原田が強い口調で非難するが,雅雪の頑固さが最終的に遼平の変化に繋がるという,ある意味でハッピーな終わり方だが,複雑な思いが残る感じだ.ただ,造園の技術的な部分は専門的ではあるが,楽しめた.