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遁走状態(CREST BOOKS)

遁走状態 みんなのレビュー

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みんなのレビュー25件

みんなの評価4.1

評価内訳

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

怖い!!

2016/12/28 18:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:森田トム - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルになっている『遁走状態』が本当に怖いです!まるでホラー映画を見ているような気分になれます。短編でこれだけ内容の濃い作品、他に見たことありません。超短編もあり、それぞれに得体の知れない恐怖を感じました…。ちょいちょいグロテスクなシーンが出てドキッとします。
『マダー・タング』という話はもしかしたら本当にこうなる事もあるのでは…と思える話で主人公の男性の悲しみは最早人ごとではないとさえ思いました。
とにかく色々な怖さがありますので、興味を持たれた方は読んでみて後悔のない一冊だと思います。

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紙の本

他者との強烈な違和感

2016/01/04 01:55

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作は、複数の前妻に追われる、思考と発話が一致しない、透明な箱から出られない、自分が誰なのか分からなくなる、等々不条理な状態から逃れられない人間を描いた短編集です。同じレーベルから発行されているセス・フリードの「大いなる不満」で不条理がポップに描かれているのとは対照的で、こちらの作品では不条理がかなりドライに描かれています。

魅力を説明するのが難しい作品ですが、日常の脆さの描き方が面白いです。ファンタジー要素がほとんどなく、自分と他者との小さいけど決定的なズレがもたらす強烈な違和感が癖になります。作者の「私の書く物語を通して、現実を別の形で理解してほしい(毎日新聞)」という言葉通り、読むと日常がどこかに遁走していくような気分になれます。

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紙の本

シュレディンガー……

2016/10/06 14:47

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る

「年下」:「これは設定時刻が過ぎても観測者の現れない『シュレディンガーの猫』状態の話かな」と思った。すると「追われて」に正にそれに例えた文が。
「供述書」の"リボルバーによってジーザスのような奇跡(僅かな食糧を多数に分配)を実現"には悪趣味と思いつつ笑った。才能あるよ贋ジーザス。作者の破門も納得か?
「九十に九十」は編集者の悪夢。

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2014/06/04 17:26

投稿元:ブクログ

前妻と前々妻に追われる元夫。見えない箱に眠りを奪われる女。勝手に喋る舌を止められない老教授。ニセの救世主。「私」は気づけばもう「私」でなく、日常は彼方に遁走する―。奇想天外なのにどこまでも醒め、滑稽でいながら切実な恐怖に満ちた、19の物語。幻想と覚醒が織りなす、驚異の短篇集。

2014/11/12 22:04

投稿元:ブクログ

『肝腎なのは、彼の両手両腕、顔と頭蓋、その全てが無毛化していたという事実だ。私と同じように、彼はすっかり毛を失っていた。かりに彼が弟か恋人だったとしても、私はうろたえはしなかっただろう。だが、この事実は、なぜか、私をうろたえさせた』ー『裁定者』

柴田元幸は、ブライアン・エヴンソンの作品にはポーを彷彿とさせるところがあるという。自分は、主人公の自分を取り巻く環境との激しい対峙からカフカを思う。

私が私であると認識する自己同一性は、その根拠を質せば究極的には非常に曖昧な認識であるにもかかわらず、誰もそれを疑ってかからない概念だと思う。例えば自分自身は、記憶という曖昧な根拠に基づいて、昨日の自分と今日の自分の連続性を確認するけれど、他人は外見の相似を持って昨日の人物と今日の人物との連続性を確認する。故に、目覚めた時に自分が巨大な毒虫に変身していると、自分は自分の連続性を疑いはしないが、他人である家族は疑ってかかり邪険に扱われる。そんなことが起こる筈はないと理屈を振りかざして考えてみれば、むしろ自分とは誰だったのか、昨日までの自分であると記憶している自分像は正しいのかと、自己同一性に対して大いに疑いが生じてもよさそうなものだが、カフカは何処までも自分の境遇を嘆くだけだ。自己と他の間には埋まらない溝があることをカフカは滑稽なほどの自己憐憫を通して教えてくれる。

ブライアン・エヴンソンの自分という存在に対する依るべのなさの描き方は、その意味でとてもカフカに似ているような気がする。自己と環境との間にある不親和性が、どの作品でも強調されているように感じる。けれど、両者の間に決定的な違いがあるとすると、自己同一性の否定、あるいは、少なくとも大いなる疑いが常に描かれ、自分の境遇への嘆きがほとんど疑問にすら昇華しない点だろう。エヴンソンの主人公たちには、環境は常に所与のものであるという前提を受け入れてしまう態度があるように思える。考えようによっては、それは自暴自棄な態度とも見える。そしてその態度は他人に対する暴力を容易に引き出すものでもある。自分自身が不確かであると認識している自己同一性を守るために、整合化できない外部環境を強制的に変えようとする。カフカの作品に社会に対する言いようのない強い畏怖の念を感じるとするなら、エヴンソンの作品からは社会に対する断固とした不信感を感じると言えば何か言い表せるような気にもなる。だが、エヴンソンの主人公たちの自己同一性に対する強い不信感は、自己を攻撃の対象とすべき社会から分離しない。それ故にエヴンソンの描く暴力のもたらす恐怖は単純な一過性のものではなく、ひたひたと何時までも何処までも追い掛けてくる印象を残す。

捻れた自己と環境の捉え方は、全て狂っているように見えつつもどこか現代社会諷刺的であり、ザ・デイ・アフターや、バイオハザードのような現代的な危機が描かれている作品もある。個人的にはそのような諷刺が効いた作品よりも、どこかカフカを彷彿とさせる自己への言及に向かった作品の方が好みではあるけれど、確かに柴田元幸の言う通り他では味わえない作品をブライアン・エヴンソンは描く���柴田さんの訳も良いけれど、ここはやそり、さっちゃんの出番じゃない?

2014/04/18 13:46

投稿元:ブクログ

短編集。アンソロジーや文芸誌を除けば初めての邦訳本らしい。どれもこれもありていに言えば主人公は病んでいる。ただ、暗さはなく、なんとか彼らが信じている通常の世界に帰ろうと足掻いている。遁走、というのは解離性遁走という医学用語にもみられるように、突然いなくなってしまあうような状態のことなのだろう。
「私」の視点で語られているのにその「私」を見失う。
圧倒的に好きだったのは「見えない箱」。パントマイム師との不気味なセックスの後遺症。これ、パントマイム師とセックスしなくても実際何かのきっかけで起こりそうな気がしないでもない。
あと「供述書」「助けになる」「遁走状態」が良かった。
「遁走状態」の遁走っぷりはやはり群を抜いている。
あとがきによると小説の暴力描写が問題になって教授職を解かれたというスキャンダルがあったらしいエブンソン氏。今作品集では目立った暴力描写は見られなかったけれど(でも「遁走状態」で周りが見えていないのに頭を金槌で殴り続ける描写はすごかった)、是非そういう作品も読んでみたい。

2014/04/04 00:47

投稿元:ブクログ

妙な味わいの短編集。長編にはなりえない、奇抜な設定ばかり。人が狂っていく過程を一人称で(あるいは一人称的に)描いてあり、時折背筋が冷たくなった。でも、「恐怖」というほどの感情は喚起されない。というのも本書では、狂気はスケッチされる程度で、しかも、語り手の興味はふいに、狂っていく人々から離れていって終わる。それがかえって、狂気というのはそこここに偏在するもので、ありふれたものであるという印象を抱かせる。

2014/04/21 11:39

投稿元:ブクログ

短編集19編
現実との距離感が問題で、妄想であったり微妙な齟齬であったり様々なパターンで切り取られた物語。でも本当だったらとしみじみ怖い。『テントのなかの姉妹』『九十に九十』『第三の要素』『アルフォンス・カイラーズ』『遁走状態』が良かった。

2014/07/02 14:57

投稿元:ブクログ

わたしにはこの本の面白さがよく分からない。むかし観た『クリーン・シェーブン』という映画を思い出した。

2014/05/17 23:03

投稿元:ブクログ

19篇収録。どれも一行目からぐいとつかまれて怖い、わけがわからないと思いながら読み進めるうちに、足下がぐらりと揺らぐような、眼球が内側に裏返るような気にさせられる。「マダー・タング」が印象的だった。

2014/12/02 10:29

投稿元:ブクログ

2014年10月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
通常の配架場所: 開架図書(2階)
請求記号: 933.7//E89

【選書理由・おすすめコメント】
具体的な描写で不思議な設定を描いた短編集。イラストや若者好みの描写も多く、文芸離れにも読みやすそう。
(現代政策、2年)

2015/12/20 11:09

投稿元:ブクログ

In the greenhouse、 ninety over ninety など、19の短編。
世界が、自分が認識したものとはいつの間にか違っている恐怖。
ただし途中、ゾンビモチーフと思われるものもある。
ソンビや吸血鬼は使い尽くされて完全に陳腐になったモチーフだと感じる。どんな言葉で語ろうとも陳腐でなかったことはない。いっそ陳腐でくだらないモチーフとして使えばいいのに、真面目にやるから、本当にばかばかしい。
ホラー映画ノベライズも仕事としてやってるらしいが、その悪影響がこういう陳腐さにでるのかなー、と思う。

2015/04/14 00:00

投稿元:ブクログ

http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?amode=11&bibid=TB10070800

2014/04/07 18:13

投稿元:ブクログ

おかしいのは私がおかしいからか世界がおかしいからか、私にはわからない。たぶんどっちも少しずつそうなのだろう。隣人たちと私とは、明らかにもはや完全に同じ世界に生きてはいない...とか。元妻たちが生きても死んでもおらず生きていてかつ死んでいる状態で...など。 ひとつのセンテンスで、幾度となくひねりが入ることがわけのわからなさにつながり、わるくない居心地の悪さに繋がるのかも、などと想いながら。あとがきのスティーヴ・エリクソンとの対比も興味深く。

2014/04/24 22:31

投稿元:ブクログ

19編の短編集。「世界がどんどん速く目の前を過ぎてゆき、靄のようなものに私は一瞬一瞬包まれていたのです」。自分が自分だと知覚しているのはなぜなのか。他者は本当に他者なのか。そんな当たり前のことを問い直すような不思議な短編が集められてる。読み手を選ぶ。酒飲んで読む本ではない。

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