投稿元:
レビューを見る
「自分探し」のフランス航路。面白い一品だった。
本書には二人の主人公が登場する。「おフランス」マニアのアメリカ人青年デイヴィッドと、冴えないフランス人編集者だ。
デイヴィッドはアメリカ生まれなのだが、合理性一辺倒のアメリカ文化が大嫌いだ。そのかわり、耽美的で精錬されている19世紀のフランス文化が大好きだ。とりわけモネのような印象派がお気に入りだそうだ。そんなデイヴィッド青年が、古きよきフランスを求めて渡仏する。
もう一人の主人公であるフランス人四十男は、あまりぱっとしない人だ。いつか大きな仕事をしてやろうと、皮算用ばかりしている。だいぶ寒い人である。そして、デイヴィッドとは真逆で、ニューヨークでの成功を夢見ている。だがフランス的な教養を匂わせる人でもある。
本書の面白さは、デイヴィッドの困惑ぶりにある。当然ながら現代のフランスに、前々世紀のフランスはほとんど残っていない。アメリカ化の波はフランスにも押し寄せている。そこの現れた時代錯誤の塊デイヴィッド青年は、現代のフランス人にとってさえ、ひどく滑稽な存在だ。もちろん中にはデイヴィッドを慕う人もいる(四十男もその一人)。しかし、そういった人びとは、現代社会に適応していない人たちなのである。そんな変な人たちとの絡みは、実に面白いものだった。ちなみにその変さも、実は現代的なのである。つまり、精神的なものや、フェミニズムや同性愛といった、現代的な意味でのサブカルチャーである。ここでもデイヴィッドの求めるカルチャーには重ならないのがミソだ。
四十男の存在が際立つのが、ラストシーンだ。訳者は本書の構成を「対位法」的と指摘している。その効果が最大限に発揮される。「自分探し」の旅の締めとして、うまく決まっている。
投稿元:
レビューを見る
人生が交差する。いつかどこかで出会ったことで、時間を共有し、互いの人生に影響を与え合う。誰しも経験していることだが驚くほど無意識だ。この本を読んで、かくも人生とは不思議な出会いでいっぱいなのだと改めて感じた。
投稿元:
レビューを見る
現代のフランスのグローバル化を浮き彫りにした作品、というようなコメントをみたけど、2001年の小説なのでもやはそこに新鮮味はない。
フランスの伝統に憧れるアメリカの青年と、人生に明るい兆しがみえてきたフランスの中年男性が交差する人間模様。
その意味ではさまざまおもしろかった。
投稿元:
レビューを見る
人と人とのつながりとか流れとかそういう感じ。
2人の男(父子)の自己の希望とか理想とか憧れ、があるけれども、どうにもならない、もやもやしたあたりが描かれてる感。
フランス文学(違)はよくわからない