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○引用
詩人は苦痛をも享楽する
七つ森のこっちのひとつが
水の中よりもつと明るく
そしてたいへん巨きいのに
わたくしはでこぼこ凍ったみちをふみ
このでこぼこの雪をふみ
向うの縮れた亜鉛の雲へ
陰気な郵便脚夫のやうに
(またアラツディン、洋燈とり)
急がなければならないのか
(ー「屈折率」)
じつにわたくしは水や風やそれらの核の一部分で
それをわたくしが感ずることは水や光や風ぜんたいがわたくしなのだ
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいいびらうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
そこで四人の男たちは、てんでにすきな方へ向いて、声を揃えて叫びました。
「こゝへ畑起こしてもいゝかあ。」
「いゝぞお。」森が一斉にこたえました。
みんなは又叫びました。
「こゝに家建ててもいゝかあ。」
「ようし。」森は一ぺんにこたへました。