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40年を超える長期入院の人も初期段階では、実は退院をしている。ところが、退院が3回、4回と回を重ねるたびに家族が疲弊し、次の退院を難しくしてしまうのである。家族ヘの支援と、一人でも住める快適な場所があれば、多くは退院できたであろうことは想像に難くない。また、精神科病院に勤務する常勤医師は、外来診療に加え、平均30~50人の入院患者を受け持つ。他科の医師が入院患者16人に一人に対し、精神科の医師は入院患者48人に1人となっている。定数は3分の1。検査、手術などあまり必要としない精神医療は医療保険点数は低く、これに連動するように精神科医の必要人数が低く抑えられてきているのだ。40人も診ておれば、退院に向けての知恵を絞る余裕もなく、無理だろうと思える退院には挑戦しなくなる。加えて統合失調症の場合、他科受診が極めて厳しい。統合失調症患者への偏見はいろんな意味で大きな課題となっている。
確かに統合失調症の人は時として激しい攻撃性を見せるが、これはやられそうだから身を守ったという場合がほとんどであり、妄想はあるが、もともとのパーソナリティーに攻撃性があったわけでは決してない。統合失調症の人のそばにいると、ふと心が安らぐことがあると著者は言う。他者には些かも悪意をもたない姿と思われる。この世にいらない人なんて一人もいない。どうすれば一緒に共生できるのか。諸外国に比べ圧倒的に日本が欠けている視点である。統合失調症患者との向き合い方を真剣に考えさせられた。