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大体において前漢の武帝在位の時代やそれを遡るにしてもそう昔でもない時代の歴史叙述である。従って、司馬遷が歴史的視座をもって当時を相対化していた、その知見は当時の人々には目を瞠るに十分であったろう。とはいえ、そんな司馬遷を世人が歓呼をもって尊んだではなしに、むしろ恐れさえなして、傍観していたであろうことは想像に難くない。孔子もまた社会的に傍観されるのみで、韋編三絶の楽しみを一人続けるしかなかったし、才傑というものは社会のメインストリームとはならず、細々と生きるものだ。ただ、後進の熱い眼差しは意識しているはずで、才傑達の著作は時空を超えている。この列伝もまたその類である。