紙の本
しみじみ良い物語でした。
2020/07/08 21:34
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の祝い事に欠かせない、万歳芸人というナリワイがあって、そのひとりが主人公というのに惹かれて読む。太平洋戦争後の混乱期に、その万歳芸人善造は、芸人として一旗あげるつもりで上京。浅草での数年間、戦後の混乱をものともしない笑いと泣きとを描いた長編といったテイスト。
戦後の東京でももう万歳芸は知られていなかった事実にちょっと驚く。その詳しい話は登場しないが、柔らかな笑いで、ほっと暖かさを呼ぶ芸らしく、この主人公のキャラクターがまさにそう。彼のセリフにはいちいち癒されました。
紙の本
最高にさわやかな読了感
2016/12/16 01:02
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
いい本に出会うと登場人物にぴったりの役者を思い浮かべて、投影しながら読むのだが「善造」だけは誰もしっくりこない。時代遅れのお笑い馬鹿、超善人で唯一無二の人。戦後荒んだ世の中にこんな善人がいたらいいように扱われて、ボロ雑巾のように捨てられてしまうのが常かもしれない。最初は武雄もカモとして見ていたわけだし。でもそういう闇とか腹黒さとかを全部凌駕してしまう善造に心を掴まれた。まっすぐな言葉に幾度となく泣いた。武雄も立派になったし。もう安心。すかーんと晴れた空のような読了感をもたらす、浅草の忘れ難い時代の物語。
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某ベストセラーより「笑い」の本質を捉えている
2016/09/11 08:41
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投稿者:さんぽジスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
一昨年から今年にかけて一番多くの作品を読んだ作家。その中でも特に好きな作品が本作である。「茗荷谷の猫」に所収の「庄助さん」を彷彿とさせる人物及び時代設定だが、その庄助さんが戦地での経験に絶望したまま生還したかのようなキャラクターの光秀の存在感が印象的である。なぜかお笑いトリオ「ジャングルポケット」の斎藤を思い浮かべながら読んでいた。ドラマ化することがあれば是非実現してほしい。戦後の食糧難に乗じてあこぎな商売をする農家の男に「あなたのしていることには笑いがなかとです!」と糾弾する主人公の笑いに対する真摯な姿勢に心を打たれた。
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善造さんの、子供(武雄)のすべてを受け入れ、慈しむ姿勢に心打たれた。
あんな風に大人がすべての子供を愛して育てていけたら素晴らしいなあ。
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冴えない万歳芸人の善造、大人びた口をきく戦災孤児の武雄、単純明快なひねくれ者復員兵の光秀、風変わりな踊り子ふう子。一緒に暮らし始める4人と、ミリオン座や周りの人たちのやりとりが、戦後の大変な暮らしのなかではあるものの、暖かくて読んでいて幸せ。善造の真っ直ぐな想いは武雄や光秀の心を解かしていく。これはドラマにしたらすごく良さそうだけどなあ、ストリップは流石に無理かなあ。。前は単行本で読んでて、文庫は初めてだったけど、この解説はいただけない。
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「茗荷谷の猫」の、木内昇さん。
この方「のぼる」じゃなくて「のぼり」さんなんですね。今回初めて知りました。
最初はなんだかダラダラした感じで、「あーあ、戦前戦中戦後もの好きだけど、これはハズしたかなあ…」と思ってましたが、だんだんとおもしろくなってきました。
戦後の人は、こんな感じだったんだろうか。
終戦直後に生きてた人たちは、文字通り戦争を生き抜いた人、だったんだもんなあ。
私の両方の祖父母もそうだ。
その後どうやって生きてきたのか、祖父母に聞かなかったのが悔やまれる。
善造が言った、「死にたい」って言い方がおかしいってのは確かにと思った。
そんな、人間生きてりゃ絶対に叶うことを、なに望んでんだって。
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【戦後の浅草を生き抜いた愛すべき人たちの物語】浅草の劇場に拾われた万歳芸人、戦災孤児、復員兵の三人と風変わりな踊り子が共同生活を始める。戦後を生き抜く人々を描く傑作長編
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2015/9/9
おもしろかったなぁ
久しぶりに厚みのある本を読んだなぁという印象。
いや、他のもちゃんと厚みはあるんよ。
でも戦後すぐの戦争孤児とか出てくるのめったに読まないから。
彼らはこの後どうして過ごしたんだろうな。
善造さんがすごく素敵。
底抜けに優しいのに強い信念はあるけどなんだか間抜けでどんくさくて憎めない。
武雄は善造さんに出会えてよかった。
善造さんの写真がどんな風に撮れてて、武雄はどんな風に成長して、善造さんとどんな風に再会したか、そんな話をもっと聞きたい。
追記:もし実写にするなら善造さんは間違いなく華丸さんで
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すごくよかったけれど、勝手に、昭和のお笑いの気軽な話かなと思い込んでいたら、戦争や戦後の話をすごく悲しく重く感じた。もちろん、そういう意図あってのお涙ちょうだいとかではまったくなくて、文章はユーモアがあって笑えるし、さくさく読めるし、基本明るくラストも希望があってさわやかなのだけれど。それでも、まだ空襲で家族全員亡くして孤児になって、食べるものも住むところもかまってくれる大人もいなくて、飢えと寒さに苦しんでいる子ども、なんて状況を考えるとなんとも悲しくて。今の時代じゃ考えられない。激戦地で戦争を体験した復員兵の体や心の傷も深い。なんというか、軽々しく戦後だの復興だの言えないな、と思う感じ。はしょったテレビ番組とか見てると、戦争終わったら高度経済成長がきて、みたいに思えるけど。戦争終わってすぐ復興して豊かになったわけじゃまったくなくて、戦後もずっと悲惨な苦労の多い生活を送ってた人がものすごくたくさんいたわけで。白いごはんと卵を食べるのが夢、とか。しかも、だれもが心に傷を負っているというか。それが遠い昔じゃなくて、わたしの親世代くらいの話なんだな、と。なんだか戦争の恐ろしさをやたら強くしみじみと感じてしまった。作品には、それがメインで書かれてるわけじゃまったくないんだけど。
浅草のお笑い芸人や映画や写真の話がいろいろ出てきて、それぞれモデルとかいるんだろうか。参考文献もたくさん巻末に出ていて、相当調べて書いたんだろうな。
あまり時代物は読まないんだけどやっぱり木内昇さんは読んでいこうと思った。
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終戦直後の浅草。年齢も性別も性格もバラバラな4人が小さな劇場に集まり、一緒のアパートで同居生活を始める。
読みながら、どう言う方向に話が進むのか不安でした。序盤はむしろもどかしいほどです。登場人物はそれぞれ個性的ではありますが、特に魅力的と言うわけでもなく。そうした個性がバラバラなまま終盤近くまで淡々と話が進むばかりです。しかし、さすが木内さん、気持ち良く終わりました。
とは言っても、最後に一気に盛り上げたり、大きなどんでん返しを仕掛けたりする訳ではありません。スーッと終わる感じなのですが妙に印象に残ります。消して強く表現するわけではないのですが、四人の行く末が感じられる余韻のある最終盤でした。
良いですね。
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読み応えのある内容でした。
著者の作品は数冊読みましたが、今までと雰囲気も違い、
戦後の悲惨さや混沌とした日常を知ることができました。
映画 or ドラマ化してほしいです。
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たっぷり笑ってたっぷり泣いた!
表題の通り、人を泣かせることは簡単なのに笑わせることがこんなにも難しいなんて!
戦後の浅草小劇場「ミリオン座」に、頓珍漢な万歳芸人、小生意気な戦災孤児、浅はかで口の悪い復員兵、自称財閥令嬢の踊り子…とバラエティに富んだ面々が集まった。
嘘で周りを固め得体が知れない奴らだけれど、みんな劇場を盛り上げて食べていくのに必死だ。
みんな戦死したのに何故自分だけ生き残ったのか…生きてる方が辛い…と時に落ち込むこともあるけれど、行くべき道を見つけたみんな!
どうか笑って生き抜いていってほしい!
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いい本に出会うと登場人物にぴったりの役者を思い浮かべて、投影しながら読むのだが「善造」だけは誰もしっくりこない。時代遅れのお笑い馬鹿、超善人で唯一無二の人。戦後荒んだ世の中にこんな善人がいたらいいように扱われて、ボロ雑巾のように捨てられてしまうのが常かもしれない。最初は武雄もカモとして見ていたわけだし。でもそういう闇とか腹黒さとかを全部凌駕してしまう善造に心を掴まれた。まっすぐな言葉に幾度となく泣いた。武雄も立派になったし。もう安心。すかーんと晴れた空のような読了感をもたらす、浅草の忘れ難い時代の物語。
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生かされているという
謙虚さを
現代人が失念していることを
思い出させるような
言葉が物語の中で
さらりと、自然に
交わされています。
稀代の現代作家木内昇
にしか書けない
生活感満載の人情物語の
世界の住人に
気づけば自分もなっていて
登場人物たちと最後は
また逢う日まで
とさよならするのでした。
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戦後の上野、浅草で繰り広げられる芸人、映画屋たちの物語。最後の最後まで、大きな盛り上がりは感じられなかったのですが、人々の個性に引きずられるようにして読み進め、終わりが近づくにつれて一気読みでした。最後のオチまでよかった!
伝統的な角付け万歳から逃げ出してスターを夢見る善造。(その名の通り、どこまでも善人)映画が撮れなくなって演芸小屋を始めたが、際どいエロを売り物にしなくてはやっていけない杉浦保。反発しながらも踊り続ける踊り子たち。自分を山手の良家の子女と名乗るが、切羽詰まると東北弁丸出しになるふう子。激戦地から生還し、映画仲間の杉浦に誘われて小屋に来た鹿内光秀。戦災孤児の武雄は、善造に付いていき、小屋で雑用しながら暮らす。
善造は言う。「今は家族じゃない人たちと、毎日一緒にご飯食べてます。そっちの方がずっとタノシウ ゴザイマスよ。」彼の鉄板ネタを、事あるごとに繰り返す。
彼らが織りなすのはリアルな戦後の小屋での暮らしと、芸人の生き様。大きな盛り上がりや事件はないが、庶民の暮らしはそんなものであろう。それでも最後まで読ませてしまう。もともと世界観を作るのは巧妙な作家さんであるが、今回も引き込まれた。