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メディアワークス文庫というと、比較的ライトなノベルを出してるイメージがあったので、死生観をテーマにした本作はとても異質に感じられました。そのギャップが気になって手に取ってみたのですが、読後の印象としてはぶっちゃけ微妙なところが…
まず、小説内小説の形を取っていることの意義といいますか、それで読み手にどのように楽しんでもらおうと思ってるのか、が私には理解できませんでした。第一章にあたる「鳩居鵲巣(きゅうきょじゃくそう)」で明日香の大変さや悲痛な気持ちに入れ込んでしまったので、むしろその形式を取っているために、仮に作中における現実をモチーフにしていたとしても、フィクションであることが分かったときの興醒め感がハンパなく、とてもガッカリしました。
そして、それに続く「尊厳死法のナラティブ」という架空の評論文。これがとても退屈。難解な言葉が多くて、読み手のことを考えていない社説を読んでいるような気分になりました。
自分に読み手としての読解力が足りないのかもしれませんが、他の章での比喩表現や情景描写なども、いったい何を表現しようとしているのかが今ひとつ掴みきれませんでした。自分が好みの小説に必ずある没入感や、じっくり読みたいけど先のページをめくりたくもなる苦しいジレンマに思い悩むことが全くなく、作者に置いてけぼりにされたような感覚だけが残りました。
回りくどい小説内小説や評論、インタビューなどといった形式じゃなくて、ストレートに普通の小説として描いてくれたら印象はずいぶん違ってたと思います。