紙の本
エネルギーの未来は?
2016/02/09 12:06
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投稿者:木漏れ日 - この投稿者のレビュー一覧を見る
木材、石炭、石油というエネルギー源の変遷の歴史とその意味を語ってくれている。
昔、石炭がエネルギー源になる前、木材がエネルギー源として使用されており、木材が取りつくされて、文明地域の森林は壊滅状態になっていた。
特に、ヨーロッパが酷く、中でもイギリスが酷かった。
だから、イギリスには森がない。
産業革命で石炭がエネルギー源にならなかったら、とんでもない環境破壊が起こっていただろう。
日本も幕末、人口が爆発的に増えて、里山が禿山になって危なかった。
今の世界の人口は、莫大なエネルギー効率と量を有する石油が発見されたからだし、また今も支えているというのが良くわかった。
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産業革命前のエネルギーとして使われた木材消費を中心に、未来へのエネルギーの在り方に言及した本。
多くの人にとっては、人が使うエネルギーの歴史は目から鱗になったのではないでしょうか。
これから日本のエネルギーをどう調達するか、その方法についての答えの一つが、本書の内容ではないでしょうか。
お勧めです。
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再生可能エネルギーは環境への負担が大きいなどの内容で、賛否が両極端に分かれるだろうなと思いながら読んだけど、ネットで書評を調べてみると好意的なものが多くて意外。自分も著者の主張には説得力を感じたし、P.181~P.182で触れられているように、石炭・石油・天然ガスがエネルギーの中心になって行くのだろう。
あえて苦言を言うなら、もっとグラフや表が欲しかったかな。データを文章だけで説明されると、差の大きさが頭に入ってきにくいので、視覚化してくれると助かった。
読みやすさについては、話口調ではないけど話しているような文章で、個人的には非常に読みやすかった。なんか形式ばった文章より、こういう話しているように書く、って言う方が、読み手にとっても助かると思うんだけどなあ。
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再生可能エネルギーは、18世紀の産業革命以前においては100%依存してきた。そしてその生産性の低さが人口、経済を制約し、森林伐採を中心とした自然環境破壊で国土は崩壊寸前だったと言う事実を我々は理解する必要がある。
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現在,盛んに言われている電力・エネルギー問題を考えるにあたり,知っておくべき情報が満載でした.一読の価値があります.再生可能エネルギーを導入する事に対する,歴史的な位置づけを踏まえた批判.石炭・天然ガス火力発電についての燃料費,設備費を踏まえた発電特性,シェールガスについての説明も丁寧にされており非常に興味深かったです.
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この本は凄い本でした。私もなんとなく再生可能エネルギーを使うのは自然に良いことだと思っていました。でもそれは逆で、再生エネルギーを使っていたからこそ自然破壊になっていたのですね。
四大文明が栄えた後に砂漠になっている場所が多いことも理解できます。日本の歴史も同様のようです、天皇が遷都を繰り返したのも、江戸時代の後期には多くの山が禿山になっていたことも私なりに理解できました。
文明史が語るエネルギーの未来、という副題がついていますが、この数千年の間にどんなエネルギーを使ってきたのか、そしてどのような経緯で、石油・石炭を使うようになったのかが理解できました。私に「目から鱗」の情報を多く与えてくれた記憶に残る本でした。
以下は気になったポイントです。
・砂漠化、国土荒廃による文明崩壊の危機、人口崩壊の危機を救ったのが、産業革命による石炭をはじめとした化石燃料の本格利用であった。17-18世紀の西欧、古代中世の中国、江戸期の日本も同様であった歴史的事実が忘れられている(p8)
・屋根や工場跡地、埋立地以外の場所で、メガソーラー発電所として1箇所で大規模大量に利用すれば、薪炭と同様に生態系に与える環境負荷は非常に大きい(p21)
・太陽の磁気活動周期による地球寒冷化説を主張していて、2000年以降に実際の全地球的な観測データでは、温暖化の進展が停止していることは確認されている(p23)
・石炭は、ワットの蒸気機関と組み合わせることにより、石炭をエネルギー源として蒸気機関を駆動し、その蒸気機関を利用して石炭を掘るというスパイラル的拡大生産が可能になった(p28)
・現在は相反する3つのエネルギー革命が進行中、1)再生可能エネルギー導入、2)シェールオイルガスの増産、3)石油から石炭への再以降(p44)
・メソポタミア文明では、紀元前5000-3000年の間に、素焼きレンガ製造の燃料として、周囲の森林は大規模伐採されて枯渇、雨季に雨水が保水されずに大洪水が多発した、モアイ像で有名なイースター島も同様(p45)
・19世紀までの木材消費(森林破壊)の要因の9割は、薪炭消費であった(p53)
・18世紀以降に薪炭・牛馬から、石炭・化石燃料への移行がなければ、今頃はまちがいなく欧州中心部は広大な荒地・砂漠になって文明崩壊、人口崩壊となっていたはず、日本が遷都を繰り返してすさまじい木炭を消費した(p60、61)
・森林伐採により、農地近くの里山の肥料=落ち葉が枯渇し、やむなく人間の排泄物を江戸前期から大量に使い始める。このため大量の回虫などの寄生虫が人々を蝕み、栄養失調と体格矮小化が進んだ(p63)
・松茸は、荒地にしか生えない赤松林の中に生える。近年、松茸の収穫量が激減しているのが自然破壊と間違って認識されている(p65)
・風車がオランダ名物となったのは、真っ平らな低地という水車が使えない地理条件だったから(p82)
・EU全体の大送電線網に寄りかかり、不安定な風力発電・太陽光発電を導入しても、バ��クアップコストを他の国に頼ることができる(p93)
・一昨年まで日本最大だった堺太陽光発電所は、敷地20万平方キロで、1万キロワットの出力だが、稼働率が12%なので、実質的な出力は0.12万キロワット。川崎天然ガス火力発電所は、2300倍の出力がある(p101)
・シェールガス資源量の1位は中国で、以下、アルゼンチン、アルジェリアで、革命発祥の地である米国とカナダは4,5位にすぎない(p142)
・シェールオイルは数年前のほぼゼロから、2013末現在、日量350万バレルと日本の石油需要レベルまで急増している(p144)
・サウジアラビアの財政は原油価格が100ドル程度ないと耐えられないと、政府自らが宣言している(p180)
・中心部から緑をほとんど消滅させた熊谷・岐阜県の多治見では、40度近くになる(p210)
・アメリカは石炭火力を天然ガス火力に代替してきたので、2012年のCO2排出量が約3%も減少して過去20年間で最低となった(p226)
2014年9月15日作成
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40年間エネルギーに関わってきた著者が、職業上の遺言、と言うだけあって多角的でバランス感覚に優れる良書だと思う。オススメです。
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膨大なコストアップと大規模生態系の負担・破壊という問題をあまりに軽視している脱原発スローガン。代替エネルギーとして目されている再生可能エネルギーは、そもそも効率が著しく悪いため、高度な経済と大人口を支えることができない。大規模に利用すれば必然的に大面積の土地を犠牲にしなければならず生態系への負担は極めて大きい。人口四分の一の江戸時代でさえ、薪炭を使うため木を切り尽くし都市周辺の里山と砂浜海岸付近は壊滅的環境被害を受けている。言うまでもなく原発建設に費やしたコストは戻ってこない。現在の原発の運転を停止してもほとんどコストは削減できないのである。今後少なくとも数十年使用可能な原発を停止し、何であれ、他のエネルギー源に代替すれば必ずコストは大きく上昇し電気料金に大きく反映される。加えて原発並みのエネルギーを引き出そうとすれば重大なリスクを発生させることは間違いない事実。再生可能エネルギーへの復古。よくよく考えるべし。
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この2世紀で世界人口は10倍、世界平均寿命は2倍になりましたが、これはエネルギー革命の恩恵だと知らされます。つまり、エネルギーを大量に消費しながら種を繁栄させるのは人類の業ということですね。そんな中、もてはやされる再生エネルギー(太陽光・風力等)の致命的なまでのエネルギー効率の悪さを明らかにします。バラ色の救世主は存在せず、冷静に将来を見据え、経済合理性に基づいて対処すべき事を説いています。筆者自身も、一部感情的に筆を走らせた箇所もありますが、多くの知見があり、示唆に富んでいると思います。
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エネルギー問題の核心をわかりやすく説明しており、大変素晴らしいと思います。
しかし、再生可能エネルギーについては作為的に、読者を再生エネルギー反対に導くような論述がなされていて、疑問を感じました。
例えば、大規模な太陽光発電施設を作る場合、元々の土地の生態系を破壊し、パネルの熱による上昇気流の発生が問題。このように書かれています。しかしながらこれらの問題は、現在、ほぼ存在し得ず、筆者が作為的に説明していると思われます。
こういった事を理解したうえでこの本を読むのであれば、エネルギー問題の見方を増やせるのではないかと思います。
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「エネルギー問題は奥深くて、一筋縄ではいかない。各エネルギー源は、全てそれぞれ独自の大きな欠点・問題を抱えており、魔法の杖、救世主のスーパースターはどこにも存在しない。それは、現代社会の人口が巨大すぎ、経済規模が巨大すぎ、必要エネルギーの量が巨大すぎて、言わば「猫の手も借りなければ、やりすごすことができない」からだ。
窮地に陥ったときに、最後にスーパーヒーローが現れて、見事に危機一髪ですくわれるというのは、ハリウッド映画や「水戸黄門」などのお約束のテレビドラマだが、現実の世界は甘くない。
ヒーロー待望や技術ファンタジーに依存すると、結局は、悲劇に見舞われることになる可能性が高い。「地獄の道は善意で敷き詰められている」、「ユートピアに見える地獄への入り口」というのが、人類史の極めて重要な教訓の一つだろう」
と、筆者は安易な再生可能エネルギー代替神話を、むしろ環境を破壊するものとして退ける。ただ3.11以降、原子力が大きく復権する可能性は低く、短期的にはLNGの比率を増やしながら、落としどころとなるベストミックスを探るというのが、ざっと結論になるだろうか。
IPCCが政治化しており、コンピューター・シミュレーションに依った予測が必ずしも正確ではない、という主張については、確かに可能性としてはあるのだろう。ただ筆者も述べるとおり、CO2の温室効果が実験室レベルでは定説であるから、環境負荷を減らす方向で動かないといけないことに変わりはない。
緑化と省エネ。エネルギーの使い手である私たちは、一過性の感情的な判断を避けるために情報を集め、まずは身の回りの地道な努力を続ける必要がある。
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データに基づき、エネルギー問題の全体像がわかる。特に再生エネルギーの限界や世の中の誤解が丁寧に説明されている。再読したい。
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読了。2014年発行の本。2016年4刷とあった。売れているのかな?
勉強になる。原子力全廃は合理的でないとの主張と思う。2018年の状況について、著者に聞いてみたい気がする。
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再生可能エネルギーは、CO2を出さないが生態系を破壊し、化石燃料エネルギーは、CO2をたくさん出すが生態系を直接的に破壊しない。原子力は、CO2を出さず生態系を破壊しませんが、完璧な技術ではないので、3.11のようなことが起こる。エネルギーについて、ではどうすると良いのか。たとえば、アメリカでは最近、シェールガスという天然ガスが発掘され、新しいエネルギーになっている。これは、昨今のコンピューターと情報技術を使ったハイテク技術によって採掘可能となったガスです。同様に、シェールオイルというものもあり、どちらも地中の頁岩(シェール)に閉じ込められた化石燃料ですが、世界的な埋蔵量はかなりのものだそうです。250年以上持つ、と言われている。著者は、天然ガスの発電技術もできあがっているし、目下、いちばん有望なエネルギー源としています。それに、石炭火力や水力をふくめた再生エネルギー、できれば少しの原子力をまじえたバランスでやっていくことが、日本では適しているのではないか、と難しくてこんがらかったエネルギー世界での、一つの優良な選択肢を提示します。北欧を見習おう、だとか、原発の無いドイツを見習おうだとか、いろいろ、僕も本書を読む前から知っている論調にたいしても、本書では、人口規模や国土の地形の違いから否定したり、逆に火力に頼ってしまってCO2を増やしていたり近隣諸国のお世話になっていたりすることから、ナンセンスさをわからせてくれています。つまり、日本は日本で、かなり頭を使っているので、どこかの国が日本より抜けていてうまいことをやっているってことはないんです。日本は日本の状況で考えうる限りの最善策をやっているようです。