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図書・図書館史の授業用。言語の起源、そのものではなく、西洋におけるその議論史。
「言語の起源については割りと近年まで錯綜した空論になってた」と授業中にやってるんだけど、本当かいなと思って手にとった本。割りと本当だった。
以下、授業用メモ。
II章 p.76 ルター以前にも聖書ドイツ語翻訳は存在
・日常用いられるドイツ語とはかけ離れたもの
⇔・ルター・・・民衆にも読めるドイツ語翻訳
⇒・近代ドイツ語確立に寄与
・「言語の起源」の持つ権威
・「最古の」「すぐれた」民族であることを主張する根拠に話す言語と起源の言語の類似が持ちだされる
(ある時点までは言語の起源=「起源の言語」)
・国民言語と国家統合
・1635・・・アカデミー・フランセーズ
・国語の純化を目的とする国家機関
・1637・・・デカルトの方法序説はフランス語で書かれ、出版される
・このフランスほど統合が進んだ国家では「起源の言語」との類似は重視されなくなる
III章 「神」を離れて言語を考えられるようになる
・「言語以前」を考えられるようになる
・「始まり」が考えられるようになるということでもある
あとがき、帯にもあるとおり、言語の起源は社会/国家とは何かという問いと結びつき、かつその問いは現実的な利害と絡まざるをえないものであって、議論もその利害や都合にからめられがちであるように読める。言語の優劣の話とか典型。そういう話を授業に盛り込むか。
・パリ言語学会の規約・・・起源論を禁じている
⇔・起源論はパリ人類学会が扱う
・費やされる労は多いが空論ばかりになる