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現実世界には,様々な“粒子状”の物体があります.例えば,岩や砂などの地盤材料,小麦粉や塩などの食品,医薬品,石炭や鉱石などの固体資源…,このように,挙げ始めたらキリがありません.また,気体なども分子の集合とすれば粒状体と捉えることができます(分子については分子動力学という別分野が存在しますが,基本的な考え方は共通しています).そのような粒状体の運動をコンピュータでシミュレートする手法の代表として,“個別要素法”というものがあります.簡単に言うと,粒子一つ一つを個別に考え,相異なる粒子間の相互作用(反発力,摩擦力,クーロン力など)をモデル化することで多数の粒子から成る系の時間発展を追跡する手法です.個別要素法は,研究レベルではもちろん,実際のものづくりにも広く活用されており,現在の工学的な数値解析手法の一つとして極めて重要な手法です.
本書は,個別要素法の中でも,地盤材料のような比較的粗い(クーロン力や分子間力が無視できるスケールの)粒子をターゲットとしたものについて,極めて網羅的かつ厳密に説明しています.対象が地盤材料であるため,相互作用モデルとしては反発力や摩擦力など機械的な接触力しか登場しませんが,これらは個別要素法における基本的なアイデアですので,個別要素法の初学者はもちろん,地盤材料以外の個別要素法について学びたい方も,この本から始めることをお勧めできます.
(ラーニング・アドバイザー/構造エネルギー工学 OMURA)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/book/1611082