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中国の経済の行く末は、私が勤務している会社業績にも大きく影響する事もあり興味があります。現時点(2014.6)では残念ながら悲観論を述べる人が多いですが、この本の著者である黄文雄氏もその一人です。
中国は確かにこの20年間で驚異的な経済成長を遂げましたが、経済格差を生み出したこと、共産党の中心に関わる人のみに利益をもたらしている事が問題になっているようです。
この本の特徴は、図表が一枚もなくすべて文章だけで解説されている点ですが、基になるデータがあるはずなので、それらを示す工夫もして欲しかったと思います。
以下は気になったポイントです。
・日本人は史実を大事にするが、中国人はむしろ創作を好む。正史である三国志よりも、大河小説の三国志演義が好まれる(p30)
・毛沢東にとっては、日本は仇敵どころか国民党との戦いを有利にし、漁夫の利を得させてくれた恩人であった。社会党佐々木委員長が毛沢東に会見したときのこと(p34)
・戦後の日本侵略史で欠けけているのは、18世紀松の白蓮教の乱から文革に至るまで、中国大陸で延々と続いた飢饉と戦乱の歴史、そのつど1000万人以上が、餓死・戦死・病死した歴史である(p36)
・義勇軍と称する100万の大軍を朝鮮戦争に投入したのは、国共内戦で100万を超えた国民党軍の投降兵を最前線に送り込んで、アメリカ主体の連合国軍に始末してもらう目的もあった(p40)
・日本が南京政府を支持したとき、アメリカ支持の重慶政府、ソ連支持の延安政府の三国志状態になっていた(p42)
・現在は国民国家の時代と違って戦争を起こすのは難しい、富裕層の8割を占めるのは軍人、戦争が起きれば中国経済、共産党政権も消える(p53)
・中国のいう三権は、司法・立法・行政ではなく、党・政・軍である(p81)
・大航海時代には約6000万人の黒人奴隷が売られたが、19世紀になると奴隷貿易が禁止となり不足となった。そこで登場したのが黄人奴隷(苦力貿易)で、推定600-800万人と言われる(p85)
・文明衰亡の理由の一つは、地下資源の枯渇によってもたらされる砂漠化である(p106)
・河北省は湖沼が多く「千湖の省」と言われるが、人民共和国当初に1400あった湖沼は今は800へ減少、揚子江流域では、1066あったものが80年代には300まで減っている(p110)
・伝染病の感染はほとんどは中国からというのは、医学・疫病史の専門家以外はあまり語られない(p125)宋、元が滅びたのはペストが原因とする説も強い、人口の3分の2が死亡した(p127)スペイン風邪も発生源は中国(p130)
・日本が現われたところには二つの奇跡がある、1)財政・通貨健全化と経済成長、2)日本軍があらわれたところは疫病が消える(p128)
・長江文明から生まれた自然を説く老荘思想、それと対立するのが黄河文明から生まれた「人為」を語る孔孟の儒教思想であり、自然にはほとんど目を向けない(p134)
・中国は古来「孫呉の兵法」「兵��七書」があってもそれは兵略で、人類有史以来の戦争の勝敗を決めるのは、速力・火力がほとんど(p151)
・1990年からの5年間で6000万ヘクタールの耕地が消滅した、経済特区・開発区に指定された地域の80%が耕地だったので(p159)
・国を離れた党高級幹部の家族は118万人以上で、6000億米ドル、つまり中国に入った外資の殆ど同額の金が持ち逃げされた(p213)
・2013.8にゴールドマンサックスが発表したレポートでは、中国の不良債権は300兆円近くになると警告、これはリーマンショック時の不良債権に相当(p235)
・中国の富裕層の多くは、党・軍幹部や政府高官の「権貴階級」といわれる人々で、人口の0.4%が70%の国富を持っている(p251)
・中国の失業率統計は、失業手当を申請した都市部住民のみが対象で、その他の出稼ぎ農民は対象外、失業はなく、あるのは「待業」である(p281)
・中国人口の実数は、政府内部の各機構でさえ異なる、2009年までの人口で、民生部:13.6、公安部:14.5、社会科学院:15.2億人である(p339)
2014年6月29日作成