紙の本
ガニメデ支配
2015/09/30 01:35
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投稿者:はぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
P・K・ディックとレイ・ネルソンの共作ということですが、ディックらしさは十分感じることが出来ました。
レイ・ネルソンという人は、映画「ゼイリブ」の原作となった「朝の八時」の作者だそうです。知らなかった。
紙の本
分かりにくい話
2014/08/02 10:59
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
ガニメデ人との星間戦争に敗れた地球。
世界のほぼ全域はガニメデ人に占領されていた。
ただ一箇所、アメリカのテネシー州を除いて・・・。
そこには、カリスマ的な指導者パーシィXに率いられた「解放戦線」が頑強に抵抗を続け、ガニメデ軍も手を焼いていた。
そのパーシィXを取材するため、有名なテレビ司会者であり、パーシィXと元同級生であるジョーン・氷芦(ひあし)が彼の許を訪れる。
ちょうどその頃、テネシー州の農場経営者兼ホテル経営者、そして山師的要素200%のガス・スウェンズガードが、星間戦争の際、開発されながらも、なぜか封印された兵器群を発見する。
それらは相手に幻覚を見せる兵器群であったが、何かがおかしい。
とりわけ、その中の一つは原理的にテストすらできない、と資料に記載されていた・・・。
レイ・ネルスンの作品は読んだ事がないが、「ディック」という名前に思わず喰いついてしまった。
「幻覚兵器」にからんで、何が現実で、何が虚構か、そもそも現実と虚構とは何か、という話が出てくるあたりディックらしい、という感じがする。
ただし、「幻覚兵器」が、どのようにして人間(とガニメデ人)の脳に作用するのか、なぜそんな効果が現れるのか、というのが分かりにくい。
(仕組みは気にせず、「そのような効果があるもの」と思い込めば、気にならないかもしれないが・・・)
とりわけ、クライマックスで「最終幻覚兵器」がなぜ、ガニメデ人に致命的な打撃を与えたのか、というのが分からなかった。
巻末の解説によると、元々、もっと長い作品だったものが、出版社の都合(ページ数の都合)で一部削除された、という。
その影響だろうか。
また、ガニメデ人と、それに協力的な人間(「ウィクス」と呼ばれる人々)、解放戦線の関係は人種問題のメタファーであるように感じた。
パーシィXは黒人、という設定であるし、解放戦線のメンバーは、ほぼ黒人のみ(黒人以外の有色人種もわずかに加わっている)という事になっているのは、人種問題を暗示させたいのだろう、という気がする。
ガス・スウェンズガードに至っては、自らそうと喋るセリフこそないが、その言動を見ると、「人種差別主義者」である事が明白。
(それに「テネシー州」の「農場経営者」・・・)
ガニメデ人は、白人を意味しているのだろう。
ご丁寧にガニメデ人には身辺の世話する「公奴(クリーチ)」と呼ばれる人間の奴隷がつけられている。
そして、ウィクスは占領された側の支配層。
ただ、これらに関しては「差別」の問題までは踏み込まず、対立関係の暗示、という程度にとどまっている。
ところで、本作のクライマックス以降は、正直、話が分かりにくい。
何故、そういう結果になったのか、途中まではついていけるが、最終的に煙に巻かれてしまう。
これは、合作の悪い点が出てしまったのか、出版社の都合による削除の影響だろうか。
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ずいぶん前のディック未訳リストかなにかで、ディック本人が気晴らしのジョーク小説だと言い放ったうえに、レイ・ネルソン(「朝の八時」!)との共著だったことから、おそらく未訳のまま残るであろうと予言された…ような記憶があるけど、夢だったかもしれん。とはいえ、本人お墨付きのぶっ飛んだパルプSFは、まったく予想外の大団円も、終わってみれば納得の力技に大満足。思わぬ箇所で「ゴジラ」も特別出演。怒涛の大風呂敷に気持ちよく包まれたいディック好きなら必読の書。あとがきのネルソン小話も楽しい。
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共著ではあるけれど、まだ翻訳されていなかったディックの長編があったんですね。
読み始めると果たして期待を裏切らず、はちゃめちゃでサイケデリックでガジェット満載なディックの世界は健在でした。ディックの最高傑作の頂きには至らないけれど、じゅうぶん納得できる作品です。
地球を支配している芋虫みたいなガニメデの異星人が、戦闘機のプラモデルにハマったり、英国国教会に改宗したり、地球の精神医学に魅せられたりしているのは何だかかわいい。
あと、ヒロインのジョーンは日系人という設定だけど、氷芦(ひあし)っていう姓は珍しいですね。そんな名前あるかな、とためしに検索してみると、けっこうたくさんヒットしたので驚きました。
(THE GANYMEDE TAKEOVER by Philip K. Dick & Ray Nelson 1967)
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ディック節炸裂だが
なんだがスッキリしない作品。テレパシーとか幻想を生む兵器とか。おもしろくない。
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1967年にこれが書かれていたというのがオドロキ。80年代に書かれたニューロマンサーのモリイの感覚情報をケイスが知覚するというアイデアを既に先取りしていたとは!
共著のレイ・ネルスンは、映画『ゼイリブ』(ジョン・カーペンター監督)の原作となった小説『朝の八時』を書いた人物というのも興味深い。
イケてる二人のサイケデリック・ジェットコースター的作品。
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期待度が高かった割にはがっかり。
異星人地球征服後の反乱軍の抵抗を描く。
反攻は成功して異星人は撤退するのだが、その武器がなんとも形容しがたい。
幻視兵器で五感を混乱させるのだが描写がマンガチック。
ゴジラやキングコングまで出てくる。
最後は異星人の占領司令官の一人が地球の精神分析学にかぶれたおかげで共有意識を持つ異星人は全滅。
なんだか後期ウルトラセブンの没原稿を読んでいるようでした。(読んだこと無いけど)
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今から50年位前の作品の訳なので、仕方ないかもしれないけど、なんだかお子ちゃまのアニメレベル以下・・・
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訳が分からな過ぎてしんどい。一応ストーリーの整合性はあるのだが、俯瞰で見るとなんでそうなってるのか意味がわからない。「バーナード嬢」の神林の言う通りというか…未訳のままだったのにはそれなりの理由があるんだな。
(あらすじ)ワーム型のガニメデ人が地球を支配していて、黒人のパーシィXが率いる反乱軍がテネシー山中で活動している。その近くの大地主ガス・スヴェンズガードはガニメデ軍に取り入って地球での実権を得ようとしており、ガニメデ軍の支援を受けてパーシィX軍と戦っている。
パーシィの元恋人のジョーン氷芦は最初ガニメデからのスパイとしてパーシィの元に来るが、その後仲間になる。また、精神学者のポール・リヴァーズも仲間になり、パーシィは彼の開発した幻覚発生器を手に入れた。
一方ガニメデ側にいる精神学者のガルバーニは人間を洗脳して精神を破壊する技術を開発。氷芦はガニメデ側に捕まり、その実験台にされる。しかしその結果、精神崩壊というより何か悟った感じに。その後パーシィたちが氷芦を奪還。またガルバーニは氷芦の実験によって、死が最大の救済だと悟り、それを論文にして出版社に送った後、自殺。
一方パーシィは幻覚兵器でスヴェンズガード軍に打撃を与えるが、副作用で自軍の兵士たちの大多数が離反してしまう。
ガニメデ人の地球総督メキスは、もともとガニメデでの権力闘争に負け、左遷のような形で地球に来たのだが、地球の文化に徐々に愛着を持つようになる。またガルバーニの理論にのめり込む。
一方ガニメデで地球政策の総指揮をとるコリ元帥は、反乱の長期化を受けて、大気圏外に太陽光を遮るミサイルを撃って地球の気候を変え、現生生物を死滅させてから無傷で地球を手に入れるという作戦を考案、実行に移そうとしていた。
パーシィは幻覚兵器を再び作動させてガニメデ人の共意識を攻撃し、壊滅させる。しかし同時に人類の意識も一時一体化してしまうが、氷芦だけがその影響を受けていなかった。リヴァーズは幻覚の中で氷芦の精神に入り込み、氷芦を操って幻覚兵器のスイッチを切ることに成功。なお、パーシィとリヴァーズは、幻覚兵器をめぐって無意識に格闘しており、パーシィはそれにより死亡。
平和になった世界で、スヴェンズガードは地球征服の野望に向けて、ひとまずNY(だったかな?)のテレビ局に出演を打診し、世界に向けて演説を行った。しかし頭の中で彼を嘲るパーシィの声が聞こえ、またその声に操られて変なことを喋ってしまう。その演説は大失敗だったものの、リヴァーズやその同僚の精神学者たちは、彼を政治的に利用することを密かに企んでいた。
(感想続き)オチが!全くわからん!演説を世界中の人々がバカにしたというくだり、もしやガニメデ人による征服の認識がなくなっている(記憶が消えているor全部幻覚だった?)のかなと思ったが、そういう伏線もなかったし…でも失言はそんなに大した内容ではなかったような…わからん。精神学者たちが彼を利用しようとしているのもよくわからん。そもそも途中のストーリーも全体的に意味不明だったし、不条理ものならそれはそれで良いのだが、不条理ものなのかどうかもいまいちわからないし、不条理も��でも、世界観とか全体の雰囲気が良いと心に残るのだが、この作品はそれもない…
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芋虫型エイリアンが星間戦争で地球に圧勝。白人は隷属を選んだが、黒人はカリスマ指導者パーシィX中心に団結して抵抗。「白人教とは?偽善さ」(卑怯とも言える)。舞台のテネシーは実際にも黒人権利運動発祥の地…
※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。
ディックの処女作『偶然世界』(1955)の時点ではアメリカは隔絶して富裕最強な国であった。
1962年の出世作『高い城の男』(’63ヒューゴー賞受賞)(PKDはこの作品の構想を7年間暖めつづけていたと授賞式で述べた)の出版前年、“ガガーリンの宇宙飛行”などがあったが、ケネディ大統領は“有人飛行月探査”をぶち上げたりして最強の誇りをたもとうとした(まだベトナムに本格介入しない頃)。
キング牧師が始めた黒人の人権運動(テネシー州で黒人専用席のあるバスに乗らない運動、市役所に行って何もしないで座っていて警告されても動かず逮捕される“シットイン”運動)への怯えが作中に反映されている。(南アフリカ《シャープヴィルの暴動》などがありアフリカ諸国が独立していって地球的に白人支配は揺さぶられつつあった)
この作品の1967年“ジョンソンの戦争”と呼ばれ戦意盛んであったベトナム戦争も消耗戦に突入が見えてきて帰還兵の社会復帰問題も深刻化しつつあった。
ベトナム戦争は、黒人も徴兵されたこと、白人富裕層はなにかと便法で徴兵をのがれたこと(“ノブリス・オブリージェ”の放棄)すなわち“卑怯者が得をする”横行で白人の精神的優位失墜・黒人の台頭をもたらした。PKD以外のSF作品にももちろん一般文学にも人種差別のテーマは頻出する…。
’60年代後半は、世界を救うのは(少なくとも改変するのは)抑圧された非白人民族の怒りか?と思われた時期(『マルコムX』の映画で白人女が「何が出来るでしょうか」と問いかけ、マルコムが「何もない」と答えるシーンがあった)。2040年頃の想定だが、ガニメデ人に“地球人類の誇り”をかけて立ち向かったのも黒人だった。
P52「服従地球人=ワームキサー」と振り仮名がある。worm-kiss-er,略してウィクスWIKS(強烈な蔑称だな)。
パーシィXとは、もちろんマルコムX(喪われた父姓を象徴して“X”と名乗った)がモデルだろう。ウィクスであるジョーン氷芦(インデイアンの血が混じった日系)は、幼馴染のパーシィXを捕獲する餌となることを自ら志願し、民族音楽収集を名目に未占領地のテネシーの山間部に乗り込みインタビューを申し込むがパーシィXがあまりに魅力的なのに気づき動揺した。パーシィXには読心力があり彼女がすでに寝返りかけていることを察知した。もちろん征服者も読心力がありウィクスのスパイを送り込み寝返る危険は察知していたろうが、抵抗運動は圧倒的な実力差に絶望的なのだろう。P73「何者にも服従しない男との肉体交渉がこんないいいものだったとは」
いい感じなのだが、中盤以降ジョーンはプリズナーとなってある種の精神的拷問で自発意思を失ってしまう。パーシィXの抵抗運動は不発、絶望的状況に陥ってしまう。
本書の支配種族=ガニメデ芋虫は、���の回りの世話一切を奴隷(人類)にさせ、話す以外の行為は長く跳び出す舌でボタンを押すだけるというえげつなさ(フランス映画『最強の二人』のサブ主人公は首から下が動かない完全介護状態だが超大資産家、ちょうどあんな感じ)。気持ち悪すぎて“可愛い”と思えるぐらいだが、他の読者の方はどうなんだろう?
題名はベタ過ぎ、『最後から二番目の秘密兵器』ではどうだろう?P162「威力がありすぎて困る兵器なんてあるはずがないからな」(それはどうかな。原子爆弾が使われなかった世界は今では想像も出来ないが、おそらくより住みよい世界だろう)。抵抗組織の黒人指導者パッシーXは人類の滅亡を目前にして已む無くそいつをブッ放した。ために事象の因果関係さえわけがわからなくなってしまった。その描写は後年のドラッグ小説と類似する。しかし最後の秘密兵器=究極の真実は仏陀の悟りに似た《死は克服された》(←“人生は無意味”と達観することによって)の伝染病の如き伝播。ガニメデ人は《精神統合》という定期的なテレパシー大会により認識を共有し内紛を回避していたのだが、テネシー配属新着の長老メキスが地球人の文化に毒されたことにより全文明の壊滅を招いた。
結末でカタルシスを味わうには魅力的なキャラが必然的運命で死ぬというのでないと。ガニメデ人は滅亡してもそれほど衝撃がない(『高い城…』の田神、ジュリアナ、暗殺を目論んで返り討ちにあうジョー・チンナデラなど殺したり殺されたりするキャラクター、そして日本人総体が魅力的なのに対比して)。せめて思う存分に悪行を積み重ねていたらともかく、「ヒトの毛皮を好む」悪趣味ぐらい(太平洋戦争で日本兵の頭蓋骨がマスコットとして持ち帰られたのを想起させる)。むしろ統治に協力し黒人抵抗組織討伐を手伝う白人に嫌悪がつのる。結末近く、ガニメデ人の装備一式を手中にして世界の指導者になれると有頂天のスヴェンソンの全世界テレビ演説がローマ法王さえ途中でチャンネルを変えたほど不評なのは占領中に何をしたか知れ渡っていたからだろう。
ガニメデ人が精神的爆弾で滅ぼされるのは、『高い城…』で日本を(ドイツ第三帝国が)一斉原水爆攻撃で滅ぼす『タンポポ計画』に相当する。解説によるとエースブックスの悪癖で「ページ数制限により内容を強制カット」されて、いっそ地球の全生命を滅亡させようとするエイリアン、に抵抗する人類が幻想を兵器として使用して因果関係さえおかしくなるほど盛り上がり大晩餐のデザートとなるべき結末であったが、アッサリとハッピーで捻りのないものとなってしまったという。
とってつけたようなハッピーエンドで侵略者は自家中毒し奴隷化されていた地球人類に未来が開けると一応は受け止められる。しかし。
ガニメデ人の経済支配(侵略は経済支配に始まったとして)に替わって支配しようとするスヴェンスガードの演説が失敗に終わるという結末は民主主義に希望をかけた?でも大衆感情はそれほど信頼できるだろうか?
現代SFでは侵略テーマは“あまりにも異質で対話が成り立たない”エイリアンと戦うことが多い。恒星間飛行をするぐらいの文明なら対話が成り立てば殺しあうはずはない、こちらがシロアリのように駆除すべきものと見えなければ(一例TMディッシュ『人類皆殺し』)。
ガニメデ人がどのようにして地球支配にいたったか詳細は不明だが、おそらく最初は合法的に星間貿易をしたいとでも持ちかけてきたのだろう。1853年米国東インド洋艦隊長官ペリーが日本の鎖国を解くことを求め最新鋭の蒸気船砲艦で来航し「江戸湾は遠浅で江戸城は大砲の射程に届かない」などと軍事力優位を背景に植民地化の意欲満々で、実際にもそれ以降、通商よりも金銀比率の日本・欧米の違い、(それが是正されてからは銀・銅の交換比率の違い)で日本の富を収奪したように。(阿片戦争の結果を知っていた日本は、“阿片の禁輸”だけを重点にして“治外法権”=外国人が殺人強奪などを働いても領事は無罪・経済で済ます、恐ろしさに気づかなかった。明治19年=1886年イギリス船ノルマントン号が紀伊半島沖で沈没して船長以下乗組員はボートで脱出し日本人乗客を見殺しにしたが英国領事は全員無罪、世論の沸騰を受けて船長だけは禁固三ヶ月となったが賠償金等の支払いはなかった。人種差別アジア人蔑視の故だろうか。このことで条約改正の気運は盛り上がった。)
現在、パレスチナ・ガザ地区PLOハマス支配地域で激しい戦闘が行われている。といってもハマスのぶっ放すミサイルはほとんどがアンチミサイルシステムで撃退され被害はガザ住民の数百分の一だが撃つことを許せないとイスラエル侵入トンネルを掘りつつあったとイスラエルは掃討に犠牲を覚悟で地上戦を開始した。そのように、完璧な防御システムにまもられ条約によって駐留するガニメデ人に対して先に攻撃があったのだろう、その反撃が国連軍壊滅につながったのだろう。新統治者メキスは寝返ったことで逮捕したジョーンを尋問し殴りかかられたが怪我はなかった。彼女を罰しなかったのは征服者の余裕。
戦傷で四肢不自由となった者にも社会で役割を与えねばなるまい(精神を病み麻薬に汚染された者は措くとして)、アメリカの威信のために戦った英雄である…。その姿がガニメデ人を思わせないこともない。
寝たきりでも、極端に言って目を動かすだけでも、金融業は出来る。アメリカはいま、それが最大の産業となっている。フランス映画『最強の二人』では頚椎損傷で首から下が不自由でもちょっと倫理的障害を乗り越えてくれるパートナーがいれば、結末では結婚して子も得たとされる。
ガニメデ人のように資本主義は《知恵》とそれを活かす《資本》があれば不自由なく暮らせる、どころか多くの使用人にかしずかれて益々有意義なライフ=投資回収ができるのだ。
現に『最富裕者85人が世界の富の半分を所有している』『(マイクロソフト創業者)ビル・ゲイツがアメリカの富の半分を所有している(かりに彼がMS株を売却しようとすれば暴落して世界経済を揺るがすだろうが)』と告発されている。
資本主義は“努力より工夫”という。先端技術の“そんなこと出来るんだろうか”、合法すれすれの“倫理的にやってはいけない”のじゃないかなというようなことを提唱し流行らせた者が巨大な利益を手にする。たとえばAPPLEが電子計算機をPERSONAL COMPUTERとして家庭に普及させたように。CD=コンパクトディスクに音楽だけでなくデジタルデータとアプリケーションの媒体としたように。音楽をレコードなど物質媒体からダウンロード主体に変えたように。スマートフォン開発で携帯電話をPC並にしたように(例が限られて申し訳ない)。
資本を維持するためにだけでもイノベーションによる“市場の活性化”は不可欠である(アベノミクスの「第三の矢」にあたるがうまくいくかはわからない)資本主義はせいぜい二百数十年の歴史しかなく、“植民地収奪”がなくて維持できるかはわからない。ただし現在は文化・思想哲学を乗り越えイスラム圏までも新たな市場として注目しているようだ。
資本主義に対抗した価値観を提示しようとした試みがアンディ・ウォーホルを旗手とするカウンターカルチャーであり(PKディックはSF分野のカリスマ)、プロテスタンティズムが源流である資本主義に対して自由規範のカトリックがパンク、自傷行為などあらゆる放逸を許すのが人間性の解放なのだろう。
グローバル資本主義はいずれ行き詰まる。無限の成長はないから。
ガニメデ人は《資本主義》を象徴するのではないだろうか。その大滅亡のように、資本主義の終焉も穏やかであればよいが。
ほかの方も“プラモデル趣味”について述べておられるが、手指の退化したガニメデ人にとって細かい細工の歴史的造形がどれほど魅力であったことか。肉体的に退化してもオリンピックのアスリート達の妙技・豪腕に酔いしれるように。時流の沿って日本の文化の代表とさえ目される海洋堂の原型師のように。実用に堪えるというだけではない模型にアナログ感覚は必要だとは思うが。むかし小学生の娘に「バルタン星人て偉いねぇ。手がハサミなのに宇宙船を作ったんだねえ」と言うと「生まれたときからハサミならなんとかなるんじゃないの」と賢いことを言ったが(親馬鹿)、キーボードを操作できれば3Dプリンターで何でも作れる産業社会かもしれない、あるいはいっそプロジェクトを考案するだけでロボットがなんでもするのかも。地球人と交渉し戦闘するような高度の“人間的行為”は自身がしなくては(自傷を避けるために安全装置は当然あるだろう)ならないだろうが。
以下は余談。「四肢さえも退化した」(ERバローズ『火星のチェス人間』にも同趣向が見られる)首だけ脳だけの姿は嫌悪をもよおすが、(話がふくらむのはSFの常道と御勘弁いただきたい)。“蝶は愛でるが、芋虫は見るのも嫌だ”は女の子のふつうだろうか。デズモンド・モリス『裸のサル』によると人類の女子は本能的に蛇を嫌うという。その嫌悪は遺伝子に組み込まれているものらしく、ペットでフクロウを飼っている人は「鳥は蛇の形をしたものはオブジェでもいやがる」と話している。モリスは野生の人類が斃死する天敵は哺乳類の猛獣より毒蛇だろうと推定するが、思春期前、フロイト的に“ペニスへのコンプレックス”が発現する前から蛇を嫌うのは?芋虫は蛇に形が近い。旧約聖書では“イブを誘惑した”ことで“地を這う”罰を受けたとされるが、遊牧民に嫌悪されつつ黄道十二星座のひとつとされるのは(十二支の一角でもある)“人類の原初的記憶”に刻み込まれたユング的シンボルなのであろうか。(ACクラークの最高傑作の声もある『幼年期の終わり』では、20世紀に到来して人類の究極進化をもたらすエイリアンは伝説の��魔の姿をしていた。人類は予見的記憶で地球の終焉に立ち合うエイリアンを幻視していたのだ←ネタばれはお詫びする)
卵子を持つ性は、ライフサイクルのなかで妊娠出産という不利を押し付けられる。
それを押し付ける受精させる性に防衛本能的に嫌悪を覚えるのは当然のことだが。
“恋”=性欲というフィクション=狂気が、ほとんどあらゆる文芸作品にある…(小学校の教科書には『相聞歌』『恋愛小説』を載せるべきだ。恋愛をしたものには「ああ小説とそっくりの気持ちだ」とわかる。さきに『恋愛と戦争においてはどんな無茶もゆるされる』狂気を知っておくべきだ)
『侵略』は「唸り語」であり、(恋のような激情であり)、価値判断を伴っているが、あらゆる人生に価値があるように、歴史上に純粋な悪人ましてや善人はいない(居たとしたら血で汚されない宗教の開祖となった仏陀だけだろう)文明の衝突が何ももたらさないはずはない。
ガニメデ人は「次回はもっとうまくやろう」と思うぐらいだから恒星間飛行も視野に入れているのだろう。
公奴となって芋虫に仕える人生も無意味とはいえない。地球人には及びもつかないハイテクに触れ、宇宙を見られたのだから。1603年に日本の男性成人でただ一人ローマを見た支倉常長のように。ACクラーク『幼年期の終わり』で人類の誕生の目的と地球の破壊を見とどけた主人公のように。