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最近とある切っ掛けで頻繁にやり取りをしている、博識の方からご紹介を受けて読んだ。
生きていく以上はお金のことは生涯付きまとうし、お金とは①交換手段の機能/②価値の尺度機能/③価値の貯蔵機能の3つ、頭ではわかっていても、殺人や時には戦争の理由にもなり得るそれ以上の「何か」があるだろうな、そう誰もが感じるのがお金。
「では読了してその『何か』はわかったの?」と問われたら、それはNo。
何故なら本書に書かれているように、お金とは神仏が人間を量る際の手段であり、人生を絶好の修行の場としてくれるものだからだ。
「禅」という切り口から本書を捉えると、
経済学の入門的知識を基に仏教の基本思想を説いた書
となるし、
逆に「マネー」という切り口からだと、
仏教の基本精神からお金との付き合い方などを説いた経済学の入門書
といった趣になる。
経済学部の出身で金融機関に関わる仕事をしており、最近、仏教の奥深さに魅了されている私にとっては、現代社会の何か言葉に出来ない違和感、無機質さ、常軌を逸したと言えるほどの我執等々が、本当にうまく説明されていると感じた。
私の好きな三島由紀夫が自決する直前に、産経に以下の文章を寄稿したらしい。少し長いがそのまま引用する。
「このまま行ったら『日本』はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう。それでもいいと思っている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなっているのである」
本書と通ずる部分を感じるし、彼はわかっていたのだ。
でも本書に書かれているように、
「ノルマや忙しさに駆り立てられて、銀行員自身も100人いたら99人が借金や金利の本質をわかっていない、いや考える暇さえないのが現実」
なのだろうし、誰もが良心に照らすと「何かがおかしい」と感じながらも、アングロサクソン型を中心とするこの資本主義という制度は当面の間、続いていくような気がする。ある尊敬する先生が「このままいくと一億総白痴だ」と仰っていたが、強ち外れでもないような気がする。
ただ、社会主義は自由な競争が無いために効率性や革新性を欠き、最後は結局自滅した。
では著者が頻繁に例として取り上げ、私も強く共感した二宮尊徳がしたようなお金との接し方や、古き良き農村の営みのような働き方が現代で敷衍するかといったら、もう遅いし難しい気がする。
日本は一時期「戦後で最も成功した社会主義国家」などと呼ばれたらしいが、やはり昔の官僚は優秀だったのだ。
まだまだ未熟な私では答えが見つからないので、既述した先生の以下の言葉を以って、レビューを終わりたいと思う。
「個人も共同体も、病の根本原因は人それぞれが持つ『自我執着心』である。この病を癒すには、一人一人が『生きる目的』を認識してそれに向かって努力精進するのみ。
その生きる目的とは、『自分などどうでもよい。人のため、世のためにこの自己の生のエネルギーを使い���くそう』ということであると確信している」