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ロボット研究を通して心・意識の構造を解明する話。
「ロボットに心・意識はあるのか?」という素朴な質問を研究者に投げると「心・意識ってなんですか? どういうロボットができたら心・意識を持つことになるんですか?」と投げ返される。
著者は、ユクスキュルの環世界から話を始める。私たちは主観的世界に生きている。客観的世界である環境には、感覚器で感じ、運動器で作用することで関わることができる。感覚器で感じる知覚世界と運動器で作用する作用世界から環世界はなる。主体の認知は環世界のなかにある。心は主体の認知の世界だ。他人に心があるかどうかは分かりようがない。認知は自分の中で閉じているのである。私たちには赤外線は見えないし、雲を手てつかむことはできない。これが人間の世界だ。私たち赤ん坊として何も分からないところから出発し、自分自身で認知を作り上げていくことができる。
この「認知的な閉じ」からロボットを使った実験の話が続く。視覚、聴覚、触覚を備えたロボットにより物体概念を得る話を読んでスッキリした。
人間と同じような分類をロボットにさせることができた。ロボットが見た世界を記号論的に扱うことで可能となった。「ロボットは自らの経験をもとに概念を獲得することは可能となった」と言う。
文から単語を得るためには形態素解析が必要になる。ロボットに文の形態素解析をさせるとどうなるのか。スペースを全てとった英文をもとに、単語の区切を推測させるのである。語彙をロボットに獲得させる基礎はできた。機械学習のためには、二重文節構造の話を理解することが必要になる。このあたりでやめておくことにしよう。
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非常に大きな思索の広がりを感じて,読んでる最中興奮しっぱなしの一冊でした.
裏表紙に「工学と哲学を架橋する」と書いてありますが,
「過去の哲学を叩き潰す」というぐらいの勢いを最終章では感じました.大変好ましいです.
本書の趣旨は「記号創発システム」としての世界の捉え方を広く伝えることにあるようです.
おそらく初見ではすんなりと把握しづらい(何せ新しいモノの捉え方なのですから)世界観でしょうが,
章立てもよく考えられていて,門外漢でも最終章まで問題なくついていけました.
いや,「ついていく」とういよりは,自分の頭の中の「マッピング」が再構築されていく,新しい次元方向への広がりが見えてくる,
と言った方が近いかもしれません.
「学問」「研究」の醍醐味でしょう.
前半~中盤の章では,具体的事例としてロボットの知能(心?)を作っていく中で,徐々にその複雑さや抽象度を上げていきます.
基本的に数理モデル(模式図で表現していますが)なので,
対象はロボットにかぎらず,「あれにも似てる」「これにも使えそうだ」と色々類推が捗ります.
終盤の章では,上記のような類推が,「構成論的アプローチ」として詳しく解説され,
そのアプローチを適用すべき対象としての「記号創発システム」について語られます.
自分で読んで,自分が関わっている世界を踏まえて,自分の中で意味付けをする,
という本書で述べられている趣旨をメタに体験出来る良書でした.
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なんてことはない、自然言語処理と機械学習の本だった。
辞書なし、教師なしで分かち書きを学習させるあたりは面白かったけど、それ以外はあまり知見と言えるほどの事は書いてなかったし、それすらこの分野に明るい人には当たり前かも。同じ方法で言語判定のライブラリを書いてる人がいたな、確か。
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読んでて思ったけど、そのうち自分より空気の読めるロボットがでてくるんだろうなと思った。母親と話していてもつうかあで会話できないし(お互い伝えたいことが通じなくて言い争いになることが多々)。
それにしても、単語の区切りが分からない英語の文章(不思議の国のアリスの原文)から教師なし学習を何度かやってみた結果、ほとんど元の単語の区切りに一致したというのはさすがにすごすぎないか(『ベイズ階層言語モデルによる教師なし形態素解析』)。自分でもできる自身がないのだけど。自分ならherselfをherとselfに分けてしまいかねない。
それと、著者の紹介欄を見て『ビブリオバトル』の人だと知った。そういえば、ロボットの研究室に所属してるとか書いてあったっけ。
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「概念を獲得し、言語を運用できるようになり、実世界を認識し移動し、人と会話できるようになるロボット」を創ることを記号創発ロボティクスと呼び、人間の赤ちゃんとの対比でその学習を方法を探り、その重要な考え方として二重分析構造や記号論を論じ、ロボット、そして人間の心に迫る好著です。よくある人工知能の本のように数式などは無く読みやすいのですが、内容が深遠でもあり私にはやや難しい印象でした。
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人工知能の研究がこんなにエキサイティングなことになっているとは思わなかった。概念形成、言語の習得、共感、こういったことを実現するためのアルゴリズムの実例の数々に驚嘆。と同時に、ここで提示されたアルゴリズムの要素はいろいろと応用ができそうで、刺激的な一冊だった。
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時代が「科学」の次のステージへ移りつつある事が分かる本。
ロボットが「心」を持ったのは、「共感」を利用したからだった...。
従来からあるルールを教え込む = 「正解」をインプットしていくのではなく、対峙した人間から教えられ学んでいく。
この手法こそが、ロボットの思考力を人間以上に高める可能性を秘めたものなのだろう。
私の考える問題点は、「誰から学ぶのか?」という事。
それを、経験を積んでいない初期に決断をしないといけないのだ。(これは、何もロボットに限った事ではないが。)
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ロボットが知能を持つとはどういうことかについて書かれている本。
「自ら言葉を学ぶ知能」の節で紹介されている“ベイズ教師なし形態素解析”では、そんなことが出来るのかと驚かされた。
後半、記号創発システムとしてまとめられているが、知能をシステムとして捕らえるあたりが、非常に工学的だなと思う。
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人間のモデルとしてのロボットをつくることで人間に迫ってゆく記号創発ロボティクスの入門的な本です。
はたしてロボットに「心」や「意識」を持たせることができるのか……と問うとき、この「心」や「意識」はなにを意味するのでしょうか。筆者らは、心や意識を含めた人間の知能というものを数理モデルやアルゴリズム(頭が痛い……)によって再現しようとしています。その成果は、「ロボットは心を持たない」「心は人間固有のものだ」と考えている人びとへの強力な反問となります。
人間は「犬」という概念と「猫」という概念をどのようして知りうるのか。人間はまったく言葉を知らない状態からどのようにして言葉を覚えうるのか。人間はどのようにして言外の意味を理解しうるのか。よく考えてみればこんなに不思議なことはありません。
モデルとしてのロボットをつくることで人間の謎について仮説を提出するというアプローチ(構成論的アプローチ)がどのような仮説を提出してくれるのでしょうか。とくに後半の抽象的な議論は難しいと思いますが、人間の知能に関心のある人ならば楽しみながら読める本だと思います。
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190202 中央図書館
読んでいて、はっと目がさめるようなところもある。やや情緒的な表現が目につくところもあるが。
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大学の情報理工学部って、どんな勉強をしているのか知りたくて購入。「ロボット」というと、まだまだ機械がただ便利に動いているだけのイメージだが、これからは「人間と共存する」ロボット、「心を持つ」ロボットが求められる時代がくるのだろう。難しいところは飛ばし飛ばしではあるが、概要に触れることができただけでも収穫があったといえる。