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司馬遼太郎といえば、日本の歴史小説の第一人者。
しかし中国の歴史についても、正しい視点で捉えていると、著者は言う。
“しかし、戦国時代以降は、儒教に縛られて、豊かだった中国の思想が、逆三角形のようにすぼんでいってしまうと、司馬さんは考えていた”と、宮城谷昌光は書いている。
その、「逆三角形のようにすぼんだ」という言い回しが、目に見えるようでうまい言いかただと褒める。
江戸時代、幕府が学問と認めていたのは儒教であるが、それはあくまで教養ということでしかなく、生活に入り込んでくることはなかった。
儒教を「バカな体制」と切り捨てる司馬さんを、それは正しいと著者はいうのだ。
そもそも先に書いた『戦国時代』とは、中国の戦国時代で、紀元前の人が言ったとかやったとかの眉唾物の話に縛られるのは、バカらしい以外の何物でもない。
今、目の前にある現実を見ないで、古典を覚えることに汲々とする。
そりゃあ、思想もすぼむわ。
日本が言う「天下」は、あくまでも日本国内のこと。
中国が言う「天下」は、文字通り世界全体のこと。
中国の皇帝は権力を持つ存在。
日本の天皇は最初から、権力ではなく権威。
ふむふむ、わかりやすい比較です。
ありがとう司馬さん。
中華民国が大陸にあったのはごく短い時間だけど、その頃を書いた小説をいくつか紹介。
小説は「何を」書くかではなく、「どう」書くのかが大事という著者は、大陸にあった中華民国で生きる庶民の生活を、いま目にしているように生き生きと描写する汪曾祺(ワンゾンチー)のことを、今の中国で一番好きな作家だと答えるのだそうだ。躊躇なく。
読んでみたいなあ。