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書評と読書に関するエッセイ集。
ボリュームとしては新聞・雑誌に掲載された書評が大半を占め、文庫の解説と書き下ろしが少々。
著者の書評を意識して読んだことは多分ないと思うのだが、冒頭の読書論を読む限りは信頼出来ると感じる。理由は『楽しむために読む』と宣言しているから。
書評で取り上げられている作家は数多いが、その中でも頻繁に登場するのが池澤夏樹と辻原登。特に池澤夏樹は、登場回数としては一番多いのではないだろうか。
池澤夏樹はあまり読んだことがないので、機会があれば手を伸ばしてみたい。
印象的だったのは小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』について。『この作家の物語は見かけよりもずっと死の近くで進行しているのかもしれない』という〆の文章は的確な指摘では?
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Ⅰ章の読書論はおもしろかったが、Ⅱ章からの書評は本のセレクトに偏りがあるせいであまりわくわくしなかった。三浦しをんの『三四郎はそれから門を出た』の書評はおもしろかったなあ……などと、他の女(?)の良さを想起してしまうのはなんだかな。
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著者の筆致の誠実さに惹かれる。悪く言えば「丸谷才一一派」の筆ではある。丸谷やその周辺に居る人々(池澤夏樹や辻原登あたり)を褒めちぎる。そのべったり感にあまり良い印象は抱かない。だが、それでも読書を愛する氏の良心はイヤミなところがなく、未読の小川洋子などを読んでみたくさせられた。むろん藤沢周平や大岡昇平、安岡章太郎も必読だろう。こうして読書の幅を広げてくれただけでも本書は大したものだと思う。新年早々思わぬ掘り出し物、といった感があった。この著者は読書のみならず、人生を知っている……生きる意味を知悉した人物だ