紙の本
食えない高校生たちのチクチク刺す毎日。
2018/11/18 17:10
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
小松茂子と御手洗三重子は三月三日生まれの一卵性の双子。
お父さんが交通事故で亡くなると、お母さんは糸が切れたように
劣化が激しくなり、ある日、言ってはいけないことを口走って
家族離散となった。
三重子は祖父母の養子となり、母と姉を寄せつけないまま
高校進学を果たす。
茂子は、そんな三重子をほっておくことができず、
ストーカーのように調べ上げ、とうとう同じ高校への入学を果たす。
お姉ちゃんだから、三重子を守らなくちゃいけない。
父の死がきっかけで双子の姉妹に強烈なコンプレックスが
芽生えたのだった。
三重子はギャルメイクをして、徹底して姉という存在を
避けてきたのだが、ある日、茂子を自室に呼びだす。
「ぶっちゃけ、総理大臣を暗殺しようと思っているんだけど」
突拍子のない話についていくのがやっと。
誰がつるんでいるのか聞くと、ムセンとボンボンとオッサンだという。
これで茂子がその仲間に入ると、めでたく部活が成立する。
もちろん頭数合わせだけでなく、先生や生徒に一目置かれる
雰囲気を持っているというのも重要な要素だ。
その高圧的な雰囲気からつけられた呼び名がお局。
かくして妙なクラブが発足した。
全部で七編の連作短編集である。
近所の怪しげなコンビニを襲ったり、生徒会長選挙をジャックしたり、
運動会で不穏な活動をしたり。
裏の目的は総理大臣暗殺だから、いろいろなスキルを身につけて、
学校生活の中で実践の場を求めているのだ。
少々無理のある部分もなきにしもあらずだけれど、そこは物語。
すじの粗さには少々目をつぶり、さてさて次はどうなるのと
読み進めればいいと思う。
最後はちょっと飛躍しすぎだが、登場人物たち一人一人の
アイデンティティを掘り下げていくあたりは、この作家さんらしいと
感じたところ。
妙な孤独感と疎外感がこだわりのポイントなのかもしれない。
青春小説と言えなくもない作品である。
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途中までは、ありがちな学園ものかとか野ブタをプロデュースみたいな話になって読み進むのが遅くなったけれども、後半から一気に読みました。帯に書かれていた通り青春を戦った読後感のとても良い作品でした。でも伊坂幸太郎のアヒルと鴨のコインロッカーに似ているかな。
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総理大臣暗殺クラブを立ち上げた高校生 お局、三重子、ムセン、オッサン、ボンボン。
突拍子もない設定でどういう終わりになるのかと思ったけど、物語を通して書かれていたのは人間の成長。(総理大臣暗殺メインの話ではない)
三重子、ムセンの徹底っぷりはほとんど共感できなかった。
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荒唐無稽でバカらしく、「ないわー」って思いながらも読み進め、気づいたら納得しながら読んでるけど、やっぱりまた「ないやんw」って思うんだけど気づいたらまた納得して読んでる。
設定に奇抜も何もない、ちゃんと伝えたいものがあるからいいんだ。
初めて読んだ「私を知らないで」とは全くテイストが違うのだけど、彼女の吸引力というか求心力は力強くて、そのもの凄さは変わらない。
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冒頭───
入学式が終わって体育館を出ると、部活動の勧誘が待ち構えていた。それぞれのコスチュームに身を包み、キャッチセールス顔負けの無駄に爽やかな声で新入生に呼びかける。
体育館から校門まで桜並木が続いている。入学式に合わせたかのように見事に満開になっているのだが、桃色の花弁が散る中でカラフルなコスプレもどきをした人たちが騒いでいるのは、あまりにも見苦しい。桜への冒涜に等しい。
新入生の双子の姉小松茂子は、妹三重子を盲目の恋から立ち直すために高校内に政治部を創設する。
メンバーは、いつでも沈着冷静な茂子。
恋に恋してしまった妹の三重子。
電波オタクのムセンこと田崎もも。
大富豪の息子、ボンボンこと成村明人。
中年のような風貌のオッサンこと柏木保。
この五人が『政治部』という隠れ蓑の中で、訳あって“総理大臣暗殺”という目的を掲げ、それぞれの役割をこなしていく。
途中から、ガイコツこと清水弥生もそのメンバーに加わる。
この個性的で、自分の目的のためには手段を選ばぬ自己中心的な生徒たちが、用意周到な計画を練り、総理大臣暗殺に向かって着々と突き進む。
一見、荒唐無稽な設定なのだが、これがなかなかに面白い。
と言っても、実際の暗殺には当然のごとく、多くの障壁が立ちはだかるのだが。
自分の利益でしか結びついていなかった部員たちだが、最後の事件を機に、六人の間に不思議な心情が芽生え始める。
それまで経験しなかったことに遭遇し、一人一人が確実に子供から大人への一歩を歩みだしたことの証。
このときの六人は眩しく輝いてさえ見える。
あれだけ幼く、独りよがりの考えしか持たなかった六人が、自分の本音を吐露することで人間としての連帯感が生まれる。
冷酷なまでに無機的で感情を表さなかった茂子さえもが、ここにきて突然、血の通った人間になる。
その転換部分が見事だ。
そして、予想だにしなかった最後の三重子の行動。
この作品は何やら不思議な小説だ。
SFでもミステリーでもない。
読み終わってみれば、爽やかな青春小説にさえ思える。
白河三兎という作家の懐の深さを知る作品だ。
ちょっと変わった面白い小説を読みたい人にはお薦めの作品です。
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図書館で借りた本なのに麦茶かけてしまい新しい本を買って持っていく。麦茶色の1冊が手元に残ったなあ。
内容はまあまあ。北上氏おすすめやったから、もう少し暗殺本気寄りというか、そっちメインの話しを期待したけど、まあ現実的な人情もの。
うーむなんとも。
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個性的なキャラクターたちの心の内には複雑な心情が秘められており、総理大臣暗殺という目的の過程で芽生える不思議な絆…
設定はあれだが青春を感じる一冊でした。
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一卵性双生児の姉・茂子は父の死をきっかけとする家庭崩壊で大切な妹・三重子に嫌われてしまう。
父方の祖父母の元へ身を寄せる三重子に接触するため同じ高校に進学。ギャルになった三重子は教師の川上に恋をして、政治部を作り総理大臣暗殺を目指して活動をはじめる。
茂子は妹の暴走を抑えるために入部し活動に巻き込まれていく。
珍妙な始まりなのだが、中身は青春学園ミステリ調。
暗殺クラブの活動を描いた連作短編で、万引きしたギャルにイタズラするコンビニ店員の悪行を暴いたり、生徒会長選挙に奔走したり、スリの手ほどきを受けたり。
ミステリにしては伏線もトリックもないに等しいし、学園モノにしては展開がトロすぎる。
登場人物が魅力的じゃないのが致命的で、会話が多い割にテンポがよくないし地の文が説明的だったり無駄な喩え話が多くてダレる。
文体に作品の雰囲気が合ってないのだろうか。
フォントもなんか読み悪く感じるのも全体の印象を悪化させている気がする。
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白河三兎は、例によって青春ミステリ。
政治部に入って、“総理大臣暗殺”を企てる妹の為に青春する姉の話。
村上春樹が非現実的で孤高な感じを醸すとすれば、白河三兎は実に愛着の湧くクールを描く。
キャラクターのユーモア・ニヒル具合が、個人的な趣味に良く合う。
ストーリーも、少しヒネクレた学園もので面白い。
筆者他作品に比べて、少し文学のテイストがある。壊れていない本谷有希子というか、エンタメ系藤野千夜というか。
今回の方針なのか、作風変えてきたのかは今のところ不明。
4-
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「ぶっちゃけ、総理大臣を暗殺しようと思っているんだけど」
『世間は子供や老人に『なのに』を付けて持て囃したがる。成人に『なのに』を付ける時は大抵悪い意味だ。』
『少なくとも私には命の重さがわからない。私は父の死に間近で触れたけれど、『こんな簡単に死んじゃうんだ。なんか軽いな』としか感じられなかった。』
「俺が悪かったよ。体重計に乗るから。だからボタンを留めろ」
「私をがっかりさせないで。声高に平等を訴えたものだから、柏木くんは男女の身体的特徴の差異など気にしない懐の深い人なんだな、と感服したばかりだった」
「どんだけ自分の体に自信があるか知らねーけど、男でも女でも自分から脱ぎたがる奴なんて、自惚れ屋のド変態なんだからな。このナルシストがっ!」
「正確には『ナルシシスト』です。言葉を知らないのなら、口を閉じていなさい。黙っていれば、少しは利口に見えるわ」
「この世界は金がなければスタートラインに立つことすらできない。そのことを知らないのなら、おまえは恵まれているんだよ。親と神に感謝しな」
「私が預金している銀行のATMは音声であれこれ指示してくれる親切なATMです。ATMは嘘をつきませんし、言葉遣いも丁寧です。柏木くんは見習うべきところがあるのでは?」
『大人が『色々あって』を言い訳に使う時は、大抵『何もない』時だ。』
「領土問題のことはさっぱりだけど、日本は無視していればいいんじゃないか」
「勝手に占拠されても黙っているんですか? 横暴な振る舞いを見て見ぬふりしていたら、相手は付け上がるだけですよ」
「でもな、他国に横暴なことをする国は、自国にはもっと横暴なことをするもんだ。いつかは国民が怒りだして内側から崩壊する。だから日本は自滅するのを待っていればいい」
「先生は隣の国で行われている反日教育を知らないんですか? 国民の怒りの矛先を日本へ向けさせるための思想教育です。領土問題もその一環です。反日教育が存続する限り自滅することは有り得ません」
「お隣さんでは、学校に通えないために読み書きができない子供がごまんといる。そういう子たちにとって反日教育なんて夢のまた夢だ。純粋に自国の政府を憎む。国防にばっか金を注ぎ込んで、教育と福祉を疎かにしたツケはいつの日か払うことになる。すでに自滅に向かっているんだよ」
『一見、「誰が得するんだよ」と言いたくなるものでも、誰かはこっそり得をしているもので、哀れなことに「誰得?」と騒ぐ人たちは蚊帳の外なのだ。』
『時に、想像力の欠けた人間が勇敢に見えることがある。チーターは勇者なのか、愚者なのか判断つかない。』
『自分の心に浸透し易い物語を作り上げていることなど考えもしない。滑稽だ。でも私にも覚えがある。愛する人を失った時、人はその欠落を癒すために物語を描く。』
「私は頭脳明晰でもあるし、スポーツ万能で、乳首の色と形も申し分ない。欠点のない私がいちいち自分の力をひけらかす必要はないんです」
『でも不平不満を言ってもなんにもならない。自分が手にしている��のが一つでもあるうちは、それに感謝していたい。神様を恨むのは、死ぬ間際でいい」
『人の気持ちはその人そのものだ。他人にはわからない。相手のことが理解できた、というのは思い込みだ。思い上がりだ。相手を理解したいと自分が思っているから、そう感じたいのだ。』
「先ずは自分の弱さを認めること。そうすれば景色が違って見える」
『人に優しさを感じさせないよう配慮して、周囲にも当人にも気付かれずにそっと優しくできる三重子が眩しかった。』
「そう。不可能じゃないよ ー 知らないことを知るのは、自分を変えることへ繋がる」
「世の中を変える初めの一歩は、自分を変えることからってこと?」
「そうよ」
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新入生の三重子が立ち上げた謎の部活〈総理大臣暗殺クラブ〉。
メンバーは一風変わった者ばかり。
総理大臣暗殺というバカげた目標のために青春の日々を楽しく、
そして必死に費やす若者たちの真実は! ?
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タイトルが少々不安だったが…
ラノベ書いても白河三兎らしさたっぷり、この本の直前に読んだ「鉄のしぶきがはねる」がちょっと変わった素材で直球勝負なスポ根青春小説だったの対して、こっちはちょっと変わった素材で間合いを外す変化球な青春小説。主要登場人物からして「妙なの揃えてきたなぁ」って素材なら、部活の目的も「そんな理由で総理大臣を殺ってまうの?」な味の付け方。
物語後半、顧問の先生云々のあたりから不穏な空気が流れだし、オーラスで「今まで読んできたん、なんなん?」な、見事な序・破・急。で、「あぁ、なるほど間違いなく白河作品やわ、これ」って頷かされて、不穏なまま物語が終わる。
気持ちがゾワゾワ落ち着かないままの終わり方は、俺の好みではないけど、ケツの座りが悪い余韻を楽しむのもエンタメの一手法。やっぱ上手いわ白河三兎。
で、タイトルなんだけど、やっぱ不安やわ。これでエエのん?(笑
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感情がマヒするほど心が傷んでいるとき、ものすごく理詰めになる。きっと自尊心が高ければ高いほど。理詰めでがんじがらめになってる状態がほぐれるその瞬間をこんなに鮮やかに提示されるなんて。
共感できない題材だからこそむしろ共感出来てしまう。
傷ついてるなんて絶対に認めたくないって何とか背筋を伸ばそうとしてるときに、説教たらしくなく、するりと心に入り込んでくれるような本。
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図書館で借りたもの。
新入生の三重子が立ち上げた謎の部活〈総理大臣暗殺クラブ〉。メンバーは一風変わった者ばかり。総理大臣暗殺というバカげた目標のために、青春の日々を楽しく、そして必死に費やす若者たちの真実は! ?
すっごく面白くて一気読み!!
タイトルから「シリアスな話?」って思ったけど、違った!(明るくもないけど)
テンポが良くて読みやすいし、頭脳戦が読んでてすごく楽しかった!
茂子の身体能力は蘭ねーちゃんを当てはめるとしっくりきます(笑)
映像化したら面白そうだなぁ。
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白川三兎らしくない作品。
芯のあるヒロインも、衝撃的な大どんでん返しもない。
白川三兎の良さは登場人物の内面を描くことにあると思うが、政治部のメンバーの背景がはっきりと見えてくるのは物語の最後なので、それまではキャラクターをはっきりとつかむことができない。
高校生が超短期間で暗殺の技術を習得するという中途半端な非現実性も受け入れ難かった。
『ケシゴムは嘘を消せない』のように透明人間が出てくるような圧倒的なファンタジーであれば逆に受け入れやすいのだが。
それと、これは著者の作品を読みすぎていることによる弊害なのだが、いつどんでん返しが来るかを警戒してしまって、素直に事実を呑み込めないことが何度もあった。
ムセンというキャラクターが主人公を上回る頭脳明晰な生徒なのだが、彼女が弱みのようなものを見せるたびに、「これは罠なのでは?」と不必要に勘ぐってしまう。
そんなのいちゃもんに過ぎないと思うかもしれないが、今作は全体的に状況説明やネタ晴らしの説明が下手な気がする。
そのせいもあり、文章からキャラクター像に違和感を覚えることが多かった。
オッサンとボンボンの友情が芽生えるエピソードもなく、三重子の内面もあまり見えてこなかった。
ガイコツは途中参加ということもあり、生徒会選挙以降は存在感が薄かった。
物語の中心に据えている「総理大臣暗殺」というのもいまいち現実味がなくて、個々のエピソードとのつながりが弱く、取っ散らかった印象。
構成力も光る作家のはずだったが、それも見えず、まとまりのない作品だった。